75万人が失業。派遣法改正=派遣労働者保護というが、究極の派遣切り法案。

2009-10-31 | 政治
どうなる労働者派遣法改正 規制強に「雇用不安定化」の懸念高まる
産経ニュース2009.10.31 19:23
 「派遣切り」や東京・日比谷の「年越し派遣村」…。昨年以降、社会問題化した労働者派遣制度に鳩山政権がメスを入れようとしている。製造現場の派遣禁止などが柱だが、失業率は戦後最悪の水準にあり、雇用環境は依然厳しい。「弱者救済」を目指した派遣見直しだが、企業に大きな負担を強いることになり、雇用を不安定化させる懸念は消えない。鳩山由紀夫首相は難しい政策判断を迫られている。(飯塚隆志、山田智章)
 10月27日午後、東京・霞が関の厚生労働省で行われた労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の労働力需給制度部会。席上、全国中小企業団体中央会の市川隆治専務理事が、資料に目をやりながら声を荒らげた。
 「これでは75万人が失業する。派遣労働者の保護というが、究極の派遣切り法案ではないか」
 議題は「労働者派遣制度のあり方」だった。民主、社民、国民新の3党が合意した労働者派遣法改正に関する審議で、事務方が配布した資料には、法改正で75万人もの派遣労働が禁止対象となることが読み取れた。派遣に頼る中小企業には、その穴埋めで人材を確保できるほどの余裕はない。市川氏の発言は、そんな危機感を代弁するものだった。
 鳩山政権が目指す労働者派遣法改正は、製造現場への派遣や日雇い派遣などを原則的に禁じるものだ。派遣会社に登録して仕事することも原則禁止となる。
 昨年以降の不況で製造業中心に「派遣切り」などが相次いだことを受けたもので、長期安定的な雇用の実現が狙いだ。製造業派遣の解禁など小泉政権が行った規制緩和を「弱者切り捨て」と断じる鳩山政権の目玉施策だが、行き場を失った派遣労働者が正社員になれる保証はどこにもない。
「製造現場の派遣労働者は半分以下に激減した」
 ある派遣業界関係者はこう指摘する。平成19年6月現在の派遣労働者数は184万人。その4分の1強の47万人は製造業派遣だったが、最近、急激に減ってきたという。理由は明白だ。鳩山政権の規制強化を先取りした動きである。
 三菱自動車は、1400人いた製造現場の派遣労働者ら非正規社員を3月末までにゼロにした。工場の稼働率が上がり始めた今は、関係会社からの応援や、派遣会社を通さず期間限定で直接雇用する期間従業員の採用などで対応し始めた。ただ、直接雇用による労務コストの増加は大変な負担だ。このため「多くのメーカーが海外生産比率を高める方向で検討している」(製造業幹部)という。村田製作所は、15%の海外生産比率を25年3月期までに30%に高める方針だ。円高に備えた経営戦略の一環だが、「派遣規制強化のリスク回避も後押しした」(広報部)という。
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 工場の海外移転は雇用の不安定化を加速させる。さらに登録型派遣の原則禁止も影響が大きい。主婦らが派遣会社と契約し、家庭の事情に合わせてアルバイト感覚で働くことができなくなる。それでも鳩山政権は派遣制度を抜本的に見直せるのか。
 「3党合意を踏まえて通常国会への法案提出を目指す」。首相は10月29日の衆院本会議で、こう答弁した。
 ただ、民主党内も一枚岩でなく、「あれもこれも規制するだけでは混乱を生む」との慎重論は根強い。ある中堅議員は「規制強化で企業の人件費を圧迫すると、正社員の賃金引き下げを起こすかもしれない」と語る。特に労働組合の支援を受ける議員は、正社員の雇用問題に敏感に反応する。
 熱心なのは社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相だ。「3党合意の抜本改正案から少なくとも後退しないように、進むことはあっても後退しないように」とクギを刺す。
 労政審は年内に答申を出すが、これを受けた議論次第で政府・与党内に大きな論争が起こる可能性は十分にある。

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