間もなく始まる九州場所に元横綱北の湖の「昭和の頭脳」を想う 2021/11/11

2021-11-12 | 相撲・野球・・・など

ベテラン記者コラム 九州場所に元横綱北の湖の「昭和の頭脳」を想う
 サンケイスポーツ 11/11(木) 15:53配信
 大相撲九州場所(14日初日、福岡国際センター)が間もなく始まる。昨年11月の本場所は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で会場が東京・両国国技館に変更され、福岡市内での開催は2年ぶりとなる。那珂川と博多川に挟まれた九州屈指の歓楽街「中洲」を抱える街はこの時季、山の幸、海の幸の料理が豊潤に並ぶ。刺激された舌の感覚は長く記憶に刻み込まれ、思い出すだけで楽しい。
 だが、平成27年の九州場所では衝撃が走った。日本相撲協会の北の湖前理事長(元横綱)が同場所13日目の11月20日、直腸がんによる多臓器不全のため福岡市内の病院で急逝した。体調不良を訴え、同日朝に救急車で搬送され、その日の夕方に容体が急変した。直前まで館内を歩く姿をみていただけに、訃報に声を失った。
 昭和49年名古屋場所後に21歳2カ月で横綱へ昇進。この記録はいまでも破られていない最年少記録で、ライバルの横綱輪島と「輪湖時代」を築き、「憎らしいほど強い」とも表現された。かつて、横綱朝青龍が「悪役」のイメージで語られていたが、北の湖理事長は「わたしの方がよほど憎たらしいといわれていた」と笑わせてくれた姿を思い出す。24度の優勝(歴代5位)を誇り、その実績、功績に「一代年寄」も与えられた。
 当時の横綱審議委員会の委員長だった守屋秀繁氏(80)=千葉大名誉教授=から聞いた、北の湖理事長の言葉が忘れられない。ある会合で、現役時代の話になったという。立ち合いでの注文相撲(はたき込み)の勝利はないのでは、と問われた同理事長は「3番ある。相手が立ち合いであまりに低いから仕方なかった。わたしは現役時代に取った相撲は全部覚えている」と即答。その記憶力に驚いたそうだ。敗れた相手に苦手意識を抱かぬよう、瞬時の判断力、対応力を磨く鍛錬を怠らなかった。
 現在の力士はスマートフォンのアプリを使って、自身の取組を何場所もさかのぼってみることができる。映像をDVDに集める力士もいる。戦術を練る目的はこれで果たせるだろう。稽古の番数が少なくても、量より質、集中力でカバーするという考え方も理解できるが、繰り返し、繰り返しひたすら骨をきしませ、体に覚え込ませた職人的な記憶が身につくとは思えない。
 生涯成績951勝350敗の取組を諳(そら)んずる〝昭和の頭脳〟は、比類のない性能を誇っていた。(奥村展也)

 最終更新:サンケイスポーツ

 ◎上記事は[産経スポーツ]からの転載・引用です


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