日中韓首脳会談 2年半ぶり開催 2018/5/9  【正論】対朝宥和が生む「堕落」を避けよ 櫻田淳

2018-05-09 | 国際/中国/アジア

「完全非核化」で連携へ 日中韓首脳会談 2年半ぶり開催  
 北朝鮮政治中国・台湾朝鮮半島 2018/5/9 9:00
日中韓首脳 「朝鮮半島の非核化」で連携強化
 安倍晋三首相、中国の李克強(リー・クォーチャン)首相、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が9日午前、都内の迎賓館で会談した。「朝鮮半島の完全な非核化」に向けた3カ国の連携を強化する。日中韓自由貿易協定(FTA)の早期妥結を目指す方針も確認する。
 3カ国首脳会談は韓国のソウルで開催した2015年11月以来。3カ国が持ち回りで08年から開き、今回が7回目となる。日本で開催するのは東日本大震災直後の11年5月以来、7年ぶりだ。
 安倍首相は冒頭、北朝鮮問題に関し、朝鮮半島の完全な非核化をうたった4月末の南北首脳会談の「板門店宣言」を評価。中朝首脳会談にも触れ中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の働きかけにも敬意を評した。そのうえで「北朝鮮の全ての大量破壊兵器とあらゆる弾道ミサイル計画の完全、検証可能かつ不可逆的な方法での廃棄に向け取り組みを進めていくべきだ」と語った。
 安倍首相は「今後、北朝鮮が具体的な行動を取るよう日中韓が国際社会とも連携し強く求めていかなければならない」と強調。日本人拉致問題の早期解決に向けた連携も呼びかけた。3カ国は会談後、朝鮮半島の完全な非核化を支持する共同文書を発表する方針だ。
 経済では日中韓FTAのほか、東南アジア諸国連合(ASEAN)なども参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の早期妥結に向けた協力を確認する。世界の国内総生産(GDP)の2割を占める日中韓3カ国を中心とした自由貿易を推進し、アジア地域の経済成長につなげる。
 大気汚染の解決や世界レベルでの気候変動への対応など環境分野の協力についても議論する。防災分野では台風や地震、津波などの災害リスクを低減するための経験や技術の共有を推進する。
 日中韓3カ国では今年の平昌冬季を皮切りに20年の東京夏季、22年の北京冬季と連続して五輪・パラリンピックが開催される。五輪を契機とした人的交流や文化交流の活発化も推進する。交換留学など大学間交流の拡大策についても議論する。
 3カ国の首脳会談は08~12年は毎年開催していたが、日中・日韓関係の冷え込みの影響などで12年以降は3年に1回のペースになった。今回は3カ国の首脳会談を定期的に開催し協力を強めることを改めて確認する。
 中国首相と韓国大統領の来日は、ともに7年ぶり。李首相、文大統領ともに首相や大統領に就任してから初めての来日になる。安倍首相は同日昼には、首相官邸で文大統領と個別に会談する。拉致問題の早期解決に向けた連携を確認する見通しだ。同日午後には迎賓館で李首相とも会談する。

 ◎上記事は[日本経済新聞]からの転載・引用です
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2018.5.4 11:40更新
【正論】対朝宥和が生む「堕落」を避けよ 東洋学園大学教授・櫻田淳
 文在寅韓国大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が板門店で披露した抱擁の風景は、半世紀前の流行歌「世界は二人のために」の一節を筆者に思い起こさせた。
 南北首脳会談に際して発表された「板門店宣言」が政治文書としては中身の薄い代物であった以上、会談それ自体の主眼が「南北融和」に置かれるのは、自然な成り行きであったと評すべきか。
 ≪北は半金の残りを何時払うのか≫
 ドナルド・J・トランプ大統領麾下(きか)の米国政府に限らず、日中露各国政府からは、板門店会談に総じて「称賛」「歓迎」というポジティブ評価が示されている。とはいえ、こうした各国政府のポジティブ評価は、額面通り受け止めるべきではない。こうした評価の裏にある各国政府の意図や思惑こそが、見誤ってはならないものであろう。
 トランプ大統領、あるいはマイク・ポンペオ国務長官やジェームズ・マティス国防長官のような彼の幕僚たちからは、板門店会談を前座とする米朝首脳会談の行方に対して、「楽観的な展望」が示されている。こうした対朝「持ち上げ」言辞は、「半金を出す気があるのは分かった。残りは何時、払うのか」と督促するニュアンスを帯びていると思われる。
 商取引の世界では、「残り」を払わなければディールそれ自体が破談と相成る。無論、「納期」も明確に設定されている。商取引の世界では、「半金」という発想が用いられるのは、信用度の低い顧客を相手にする場合である。
 ≪思惑に乗った直接対話は危うい≫
 トランプ大統領は、安倍晋三首相との日米首脳会談の席でも再三、「全ての大量破壊兵器と弾道ミサイル計画を北朝鮮が放棄する必要性」に言及している。来る米朝首脳会談は、最初から何らかの「妥協」を模索するというよりも、米国が「完全、検証可能かつ不可逆的な方法で、北朝鮮の核・ミサイル開発を放棄させる」という自らの意向を突き付ける場になるのではなかろうか。
 これに関連して、日本にとって細心の注意が要請されるのは、金正恩氏が文在寅氏に対して語ったとされる「何時でも日本と対話する用意がある」という発言への対応である。
 『朝日新聞』(電子版、4月30日配信)記事は、「韓国大統領府の説明では、文氏は南北会談で金氏に、『安倍首相も北朝鮮と対話する意思があり、特に過去の歴史を清算して、日朝国交正常化を望んでいる』と伝えた」と報じている。この記事は、文在寅氏が金正恩氏に対して日本政府の立場を曲解して伝えたであろう事情を示唆している。
 日本政府の立場では、日朝国交正常化に際しての第一の前提は、「核・ミサイル・拉致の包括解決」であっても「過去の歴史の清算」ではない。「南北融和」に寄せる文在寅氏の思惑に乗せられる体裁で、日本が「対朝直接対話」に踏み込むのは、甚だ危ういとみるべきであろう。
 とはいえ、今後の情勢次第で日本が「対朝直接対話」に入った場合には、踏まえられるべき2つの原則がある。
 第1に、日本の「対朝直接対話」に際しては、それが米国を含む「西方世界」諸国の協調や結束に波風を立てるようなものであってはならない。
 たとえ、日本が歴史や地勢上の位置、あるいは邦人拉致案件を通じて北朝鮮との「特殊な因縁」を抱えていたとしても、その対朝政策展開は、主に「西方世界」諸国との協調の上で行ってきたのである。この姿勢を徹底させることが大事である。
 ≪包括解決へ日本の信条を貫け≫
 第2に、日本政府の基本方針は、日朝国交正常化が「核・ミサイル・拉致の包括解決」を前提とするというものであるけれども、日本の「対朝直接対話」に際しては、その「包括解決」方針は絶対に揺るがせてはならない。
 たとえ金正恩体制下の北朝鮮政府が邦人拉致案件を先行させて落着させるという「餌」を撒いてきたとしても、それが「全ての大量破壊兵器と弾道ミサイル計画の放棄」と切り離されたものである限りは、それに安直に食い付こうとするのは戒められるべきである。これもまた日本が北朝鮮との「特殊な因縁」を、過剰に考慮すべきではないということを意味する。
 故に、9日に開催される日中韓首脳会談に際して、李克強中国首相や文在寅氏から対朝「宥和」機運への「同調」を求められた場合でも、それに抗(あらが)うことが日本の対応としては大事である。中韓両国を前にした日本の対朝姿勢には、自由や民主主義を旨とする「最も西洋的な非西洋国」としての日本の信条や価値意識が反映されるからである。
 当座の「平和ムード」に乗せられて、北朝鮮のような「専制・強権」志向国家の「異質性」に眼を背け、無分別な「宥和」姿勢に走ることにこそ、自由世界における「堕落」が表れる。「文在寅の韓国」は、その「堕落」の相を既に暴露した。日本は、どうなのか。(東洋学園大学教授・櫻田淳 さくらだ じゅん)

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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【正論】五輪の裏で進む米韓同盟の腐食 2018.2.28 東洋学園大学教授・櫻田淳 
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