ガス室や銃殺による死刑執行の可能性が浮上 米国 2022/5/12

2022-05-12 | 死刑/重刑(国際)

「ナチスの手法」「憲法違反」 アメリカでガス室や銃殺死刑の可能性 死刑囚側や地元は反発
  東京新聞 2022年5月12日
 【ニューヨーク=杉藤貴浩】米国でガス室や銃殺による死刑が執行される可能性が相次いで浮上し、波紋が広がっている。いずれも標準的な方法の薬物注射での執行が困難なケースで、死刑囚側はそれぞれ「ナチスの手法と変わらない」「憲法違反だ」などと訴え、一部では執行反対デモも起きている。
 西部アリゾナ州の最高裁は3日、8歳の少女を殺害した罪で1987年に死刑判決を受けたフランク・アトウッド死刑囚(66)の執行日を6月8日と定め、同死刑囚は薬殺かガス室を選ばされることになった。米メディアによると、同州は2014年に薬殺で死刑囚が2時間苦しんで死亡した影響で執行を止めていたが、死刑支持派の多い共和党主導で再開方針となった。
 アトウッド死刑囚の代理人は声明で「薬殺時の拘束は背中に障害のある同死刑囚に多大な苦痛をもたらす」と指摘する半面、ガス室についても、ガスの主成分がナチスドイツのユダヤ人大量虐殺で使われた「チクロンB」だとして、「どちらもひどく暴力的だ」と訴えた。同死刑囚の母はナチスの迫害を逃れた生存者だという。地元のユダヤ系団体はガス室の使用に「侮辱だ」と強く反発している。
 一方、南部サウスカロライナ州では、1999年にコンビニ店員を殺害した黒人のリチャード・ムーア死刑囚(57)が先月、電気椅子か銃殺隊による死刑執行を選択させられ、銃殺を選んだ。薬殺用の薬剤は、製薬会社が訴訟リスクなどを恐れて出荷を控えており、同州は昨年、銃殺を執行の選択肢に加えていた。
 死刑囚側は「電気椅子は銃殺よりも苦痛が長引く」としつつ、いずれの選択も「残酷で苦痛を伴う刑罰を禁じた憲法に違反する」と執行停止を要求。地元人権団体は銃殺を「サウスカロライナが中国や北朝鮮、イランなどと同じになってしまう」と批判し、全米黒人地位向上協会(NAACP)も反対デモを実施した。
 非営利団体「死刑情報センター」によると、米国でガス室による執行は1999年、銃殺刑は2010年が最後。米国では連邦と州それぞれが司法制度を持ち、全州の半数超の26州が死刑を廃止するか執行を停止している。連邦ではバイデン政権が執行停止に転換した。廃止州は民主党が優勢な東北部、存置州は共和党が強い南部に多く、政治的争点にもなっている。

 ◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です
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