【Q&A】マイナ保険証 事実上の義務化目指す政府 なぜ健康保険証を廃止?カード取得は任意なのに…

2023-06-02 | 文化 思索 社会

【Q&A】マイナ保険証 事実上の義務化目指す政府 なぜ健康保険証を廃止?カード取得は任意なのに…(2023年6月2日配信『東京新聞』)

 2023/06/02 08:44

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 今持っている健康保険証が2024年秋に廃止され、マイナンバーカードとひも付けた「マイナ保険証」に全面的に切り替わるー。こんな内容が盛り込まれた法律案が2日、参院本会議で可決、成立する見通しです。政府はなぜ健康保険証を廃止するのか、患者や医療機関にはどんな影響があるのか…。マイナ保険証をめぐる課題や問題点をまとめました。(デジタル編集部)※6月2日更新

【目次】▼医療DXの基盤に ▼資格確認書とは? ▼「義務化は違法」と提訴

◆医療DXの基盤に

Q 政府はなぜ健康保険証からマイナ保険証への切り替えを急ぐのですか。

A 政府はマイナ保険証を、世界に遅れを取っているとされる医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を進展させる基盤に据えようとしているからです。

Q 医療DXとは?政府は具体的にどんな取り組みを目指しているのですか。

A 現在、マイナ保険証の利用者は、医療機関・薬局での診療情報や薬剤情報、40歳以上のメタボリックシンドロームに着目した健診結果の情報、医療機関などに支払った医療費の情報などを専用サイト「マイナポータル」で確認でき、医療機関や薬局も患者の同意があれば閲覧できます。政府が「オンライン資格確認」と呼ぶシステムです。政府はこれらの情報に加え、医療機関のカルテ情報や自治体の予防接種、介護認定情報などをデジタル化して利用者や医療機関などが互いに閲覧、共有できる全国的なプラットフォームをつくろうとしています。

Q マイナ保険証を利用すると、どんなメリットがあるのですか。

A 政府は、患者が医療関係者と診療情報や薬剤情報を共有することで、正確でより良い医療を受けられ、投薬の重複を避けることができる、などと説明しています。また、患者には、窓口での支払いが高額になる場合に、自己負担額を所得に応じた限度額にするために医療機関に提出する「限度額適用認定証」がなくても限度額を超える支払いが免除される、転職後も健康保険証としてずっと使うことができる(医療保険者等への加入の届け出は引き続き必要)という利点を挙げています。

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◆資格確認書とは


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マイナンバーカード(一部画像処理)

Q マイナ保険証は今、どれぐらいの人たちが取得していますか。

A デジタル庁の政策データダッシュボード(ベータ版)によると、マイナンバーカードの交付枚数は約8996万件。マイナ保険証の利用登録は6195万件で、登録率は69%です。(5月21日現在)

Q マイナ保険証を取得しないまま現行の健康保険証が24年秋に廃止されたら、保険診療を受けられなくなるのですか。

A 発行済みの保険証は1年間(先に有効期限が来る場合は有効期限まで)有効とみなす経過措置が取られます。
 さらに、マイナンバーカードを持たなかったり、持っていても保険証とひも付けていない人、または紛失したりした人が保険診療を受けられるように、健保組合などの保険者が申請に基づき、保険証の代わりとなる「資格確認書」を無料で発行します。

Q 資格確認書とは?

A 氏名、生年月日、被保険者等記号番号、保険者情報などが記載され、書面、または電子データで提供されます。

Q マイナ保険証と資格確認書では、患者が窓口で負担する受診料が変わるのですか。

A 資格確認書を利用した場合は、現行の保険証を利用した場合と同様、マイナ保険証を利用した場合よりも、政府は受診料を高く設定する方針です。

Q 資格確認書に有効期限はありますか。

A 最長1年間で、期限が切れたら更新できますが、国民健康保険証のように自動更新はできない見通しです。

Q マイナ保険証と資格確認書、現行の健康保険証の三つが混在すると混乱しませんか。健康保険証を残す選択肢はないのですか。

A 政府はあくまでも現行の保険証を廃止する方針です。一方、マイナ保険証を持っていない人でも保険料を支払っている以上、保険診療を受ける権利があるため、三つが混在することになりました。政府は「資格確認書では、医療機関による患者の本人確認が不十分となり、事務負担も増える」としてマイナ保険証への切り替えを呼びかけています。

Q マイナンバーカードの取得は任意なのに、一連の政策は事実上、取得を強いるものではないですか。

A 政府は今でも「任意」の立場を変えていませんが、マイナ保険証の利便性を高めるほど、取得していない人の不利益は増します。国民皆保険を掲げる以上、一連の政策はマイナ保険証を事実上義務化するものだと言えるでしょう。

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◆「義務化は違法」と提訴


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歯科に設置されたカードリーダー=さいたま市中央区で

Q 医療機関にはどんなメリットがあるのですか。

A 政府は、患者の資格情報を病院システムに入力する手間が軽減され、誤記リスクが減少すること、災害時は、特別措置として、マイナンバーカードによる本人確認ができなくても、薬剤情報・特定健診等情報の閲覧ができることなどを利点として挙げています。

Q 医療機関の受け入れ態勢は進んでいるのですか。

A 医療機関には4月から、オンライン資格確認のためのカードリーダー(読み込み機)の導入が原則として義務づけられています。厚生労働省によると、5月21日現在、全国で9割以上の施設が申し込みを済ませていますが、実際に運用を始めているのはその7割です。

Q オンライン資格確認の義務化には医療機関側に反発も根強いと聞きます。

A 全国保険医団体連合会が昨年秋に実施した調査では、導入した医療機関の約4割でオンライン資格確認のシステムで不具合やトラブルが発生していることが分かりました。2月には、東京保険医協会の医師ら約270人がオンライン資格確認の義務化は「費用がかさみ、医療サービスの低下につながる」として撤回を求めた訴訟を起こしています。

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 ◎上記事は[障害福祉&政治・社会・平和問題ニュースサイト]からの転載・引用です

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