地方発、多様な声を守る 名古屋の出版社・風媒社 市芸術奨励賞を受賞
中日新聞 夕刊 2021年3月26日
半世紀以上にわたり、名古屋を中心に地域の言論・文化を発信してきた出版社「風媒社」(名古屋市中区)が、二〇二〇年度の市芸術奨励賞に選ばれた。文芸分野で出版社が受賞するのは初めて。地方から全国に向けて原発や環境などの社会問題を真っ先に問い、地域に生きる人たちに光を当ててきた。編集の軸や、東京一極集中の出版業界で地方から本を出す意義について聞いた。 (世古紘子)
風媒社は一九六三年、愛知県刈谷市出身の編集者・稲垣喜代志さん=二〇一七年に八十四歳で死去=が創業した。稲垣さんは法政大卒業後、日本読書新聞の編集などを経て帰郷。遺稿集『その時より、野とともにあり』(同社)には当時の決意がつづられている。
<人知れず見事に生きている人びとの生きざまを(中略)とどめたい><在野の研究者の試行や業績を世に送り出したい><歪められた現実や差別を直視し、果敢に戦いを挑む>。社名は、そんな願いを本を通して手渡したいと決まった。
山口章社長(71)は受賞の背景を「五十七年間続けてきたこと、そして稲垣の存在が大きい」と考える。稲垣さんと二十年以上過ごした劉永昇編集長(58)も「自分たちが訴えないといけないこと、面白いと思うことを突き詰めるのが風媒社の本の作り方。そこが評価されたことは、ありがたい」と喜びを口にする。
稲垣さんが示した軸は、編集と営業の社員6人が引き継いでいる。2週間に1度は企画を出し合い、年間4、50冊を発行。創業の年に出したポリオ(小児まひ)患者の歌集『はるかなる陽ざし』を皮切りに、総数は2千冊以上になる。
「もともと、稲垣さんの幅広い個人的関心から企画がでてきた」(劉編集長)との言葉通り、出版分野は多岐にわたる。草創期は『現代ソ連論』など思想系の翻訳書が目立ったが、1970年代以降は子育てや陶芸・洋画へ。名古屋ー金沢間に桜を植えたバス車掌を追った『さくら道』(87年刊)以降は、地域に生きる人の暮らしや歴史に目を向け、記録した。
以下略=来栖
◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
.........
〈来栖の独白 2021.04.02 Fri〉
上記事は3月26日金曜日の中日新聞夕刊に載ったもの。その日の前後、私は実家へ帰省しており、本日留守中の新聞をまとめ読みして、この良い記事に気づいた。風媒社には、これまでも好印象を抱いてきたので、書き写させて戴いた(後半は略)。