大きな地震が起こる直前に発生する前兆現象で、日本語では「前兆すべり」と言う。
東海地震の想定震源域では、海側のフィリピン海プレートが陸側のユーラシアプレートの下に沈み込んでいる。 海側のプレートに引きずり込まれるように、年間数センチメートル沈降している陸側のプレートが一気に跳ね上がることで地震が発生するが、プレスリップはその直前にプレートが加速度的に隆起する現象である。 現在の観測によると、1970年以降、掛川に対して御前崎は、確実に沈降している。 これは、フィリピンプレートが着実に御前崎を乗せているユーラシアプレートを引きずり込んでいる現れである。 この沈降がやがて止まり、限界が来ると一挙に反発し地震となる。 東海地震ではプレスリップの検出が直前予知の柱に設定されており、ひずみ計の有意な変化の程度によって、「東海地震観測情報」、「東海地震注意情報」、「東海地震予知情報」が出されることになっている。 東海地震予知情報は警戒宣言とほぼ同時的に出される情報であり、発表基準は「東海地域におけるひずみ計3箇所以上で優位な変化がプレスリップによるものと認められた場合等」となっています。 プレスリップであると判断する基準は、以下の3つです。
① 地殻変動の一定期間の変化量がプレート境界に置いた低角度断層で説明可能なこと。
② 異なる観測点の変化が同期しており、時系列の関数系が同一とみなせること。
③ 時間的変化に加速度的傾向が認められること。
中央防災会議によれば、東海地震が午前5時に発生すると直前予知(警戒宣言の発令)ができない場合は、約7,900~9,200人の死者が出ると想定されていますが、直前予知が成功した場合の死者は約1/4になるとされています。
その他、プレスリップ以外には、地震の前に流れる「地電流」による電波の異常、発光現象、地震雲などが前兆になる可能性があると言われています。