やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

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幽霊だけど恋してる―33話

2013-07-22 07:34:24 | 小説
露子がしばらく進むと、橋の袂に一人の老婆がいた。

躊躇なく歩み寄り、老婆に尋ねた。

「すみません。地縛霊さんですか?」

「そうですが何か?」

「もう長いのですか?}

「そうじゃね~。もう何年になるか・・・・ここに橋ができた当初かね~」

橋の欄干に書かれている完成日を見ると、昭和36年。

透が亡くなる・・・いや生霊になる前の話だ。

「すみません。お聞きしたいのですが、この辺りに身体の弱い高校生の男子がいて、それで人工的に生かされていて・・・・」

焦っていたのか、内容が上手く話せない。

老婆も聞いているのか聞いていないのか・・・よくわからない表情で遠くを見ている。

「・・で、その人がどこに入院していたかを探しているんです」

「知らんね~」

「でも、今昭和48年なんですよ。つまりその人は38年ごろにね・・・・」

「私が亡くなったのは、この場所でね。ひどい洪水でね~もう少し上にいたんです。流されてこの橋の真下で頭をぶつけたことと・・・溺死だったそうですわ。そのままひっかかっていたらしく、しばらくは姉妹やらが花を手向けてくれました。あれから数十年。兄弟も亡くなってしまって、みんなあの世に行ってしもうた。私だけがずっとここに留まり続けている」

「あばあさんも大変だったのですね。でも今はおばあさんの話よりも、その男の子のことを聞きたいんです。思い出してもらえませんか」

「覚えとらん」

話を続けられないことに怒りを感じたのか、そっけない返事だ。

でも何かを思い出している顔をしている。

なんとか宥めなければ。
コメント
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