やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

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幽霊だけど恋してる―12話

2013-07-01 12:26:50 | 小説
5mぐらいの距離に近づくと、彼はこちらをみた。

澄んだような綺麗な目。

長いまつげが、美男子であること強調している。

細いラインが透明度も重なって、妙に弱弱しさを感じさせる。

「こんにちは」

彼の方から声をかけてきた。

「こんにちは。幽霊されて長いのですか?」

「そうだね。。。10年ぐらいだろうか」

「失礼だけど、どうして亡くなったの?」

「僕はね。病気だよ。元々身体が弱かったから。君は?」

「私は事故」

「そうなんだ。で、どうしてここに?」

「お迎えに会えなくて・・・」

「そうなんんだ。僕は迎えを拒否したんだ」

「どうしてですか?」

「僕はこの学校とこの街が好きだった。だから離れたくないと思ったんだ」

「この街が好き・・・あまり意識したことが無い。私・・・」

「フフフ。そうだね。こんなことを改めて言うと恥ずかしいかな」

そういうと、軽く髪をかき上げる。

半透明な手が、透けるぐらい繊細な髪の毛を風に泳がす。

「あの・・・なぜ半透明なんですか?」

「僕は一度浄化しかかったんだ。だから・・・。それに風になりたいんだよね。この街を流れる」

「風・・・」

凄くロマンチストな人だ。

私は彼に惹かれていた。

「ずっとここに?」

「そうだよ。普段は生きてた頃の家にって言いたいけど、僕が死んで家族は引っ越した。だからここには墓しかないんだ。住んでいるのは墓の中」

「墓の中。住んでた家もないの?普通は生きてた頃の場所に居るって聞いたけど」

「あぁそーいう選択肢もあるけどね。僕の場合は家族のいない家には戻りたくない」

寂しそうな目をする。

夕暮れと共に、彼の姿も赤みを帯びてくる。

その色の代わりが、余計に寂しく感じさせた。

「毎日ここに来るんですか?」

「そうだね。ほとんど毎日。することないしね」

「私も来ていいですか?」

「好きなように。君の思うようにすればいいんだ」

優しく微笑んでくれる。

私はこの人に会いに来る。

そう決めた。
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