「ありがとう」
「悪かったね。しばらく人と話していないから少し意地悪したね」
「ううん。明日もまた話をしに来るから」
「気にしなくていい。あなたはあなたのするべきことをして、早く天界に上がりなさい」
「うん。ごめんね」
「さぁお行き。病院はほれ川向こうに見える。白っぽい5階建ての建物じゃ」
「はい。さようなら」
露子は歩き出した。
人を見ても話ができない。
じっと同じ場所から動くことができない。
その苦しみと辛さを、数十年耐えてきたおばあさん。
露子には経験したことがないことだが、その恐怖は何となく感じる。
一歩間違えれば、露子も同じ境遇になり得るのだ。
病院に向かう道筋で、透を待った。
透は今自分の家を探している。
おばあさんが教えてくれた家とは、少し違う場所に向かっていくのを見ていた。
方角が違うことを教えてあげたかったが、もしかしておばあさんから聞いた男子と、透は別人かもしれない。
だから透が思い出して見つけてくることを願っていた。
そこそこ車が通る道だが、案外思っていた以上に人通りはない。
どちらかと言えば、地域住民でなければ通過するだけの町だ。
その町の川向こうには、もうひとまわり大きな街がある。
その病院に彼は入院していたという。
露子は何となく待ちきれないイジイジとした気持ちになる。
このまま一人で探してこようか。
そんな思いが頭をよぎり始めたころ、透は遠くから戻ってきた。
「悪かったね。しばらく人と話していないから少し意地悪したね」
「ううん。明日もまた話をしに来るから」
「気にしなくていい。あなたはあなたのするべきことをして、早く天界に上がりなさい」
「うん。ごめんね」
「さぁお行き。病院はほれ川向こうに見える。白っぽい5階建ての建物じゃ」
「はい。さようなら」
露子は歩き出した。
人を見ても話ができない。
じっと同じ場所から動くことができない。
その苦しみと辛さを、数十年耐えてきたおばあさん。
露子には経験したことがないことだが、その恐怖は何となく感じる。
一歩間違えれば、露子も同じ境遇になり得るのだ。
病院に向かう道筋で、透を待った。
透は今自分の家を探している。
おばあさんが教えてくれた家とは、少し違う場所に向かっていくのを見ていた。
方角が違うことを教えてあげたかったが、もしかしておばあさんから聞いた男子と、透は別人かもしれない。
だから透が思い出して見つけてくることを願っていた。
そこそこ車が通る道だが、案外思っていた以上に人通りはない。
どちらかと言えば、地域住民でなければ通過するだけの町だ。
その町の川向こうには、もうひとまわり大きな街がある。
その病院に彼は入院していたという。
露子は何となく待ちきれないイジイジとした気持ちになる。
このまま一人で探してこようか。
そんな思いが頭をよぎり始めたころ、透は遠くから戻ってきた。