やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

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幽霊だけど恋してる―35話

2013-07-24 07:37:37 | 小説
「ありがとう」

「悪かったね。しばらく人と話していないから少し意地悪したね」

「ううん。明日もまた話をしに来るから」

「気にしなくていい。あなたはあなたのするべきことをして、早く天界に上がりなさい」

「うん。ごめんね」

「さぁお行き。病院はほれ川向こうに見える。白っぽい5階建ての建物じゃ」

「はい。さようなら」

露子は歩き出した。

人を見ても話ができない。

じっと同じ場所から動くことができない。

その苦しみと辛さを、数十年耐えてきたおばあさん。

露子には経験したことがないことだが、その恐怖は何となく感じる。

一歩間違えれば、露子も同じ境遇になり得るのだ。

病院に向かう道筋で、透を待った。

透は今自分の家を探している。

おばあさんが教えてくれた家とは、少し違う場所に向かっていくのを見ていた。

方角が違うことを教えてあげたかったが、もしかしておばあさんから聞いた男子と、透は別人かもしれない。

だから透が思い出して見つけてくることを願っていた。

そこそこ車が通る道だが、案外思っていた以上に人通りはない。

どちらかと言えば、地域住民でなければ通過するだけの町だ。

その町の川向こうには、もうひとまわり大きな街がある。

その病院に彼は入院していたという。

露子は何となく待ちきれないイジイジとした気持ちになる。

このまま一人で探してこようか。

そんな思いが頭をよぎり始めたころ、透は遠くから戻ってきた。



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