露子が気が付いたのは、式神だった。
何かの神殿で祀られていたものが、この地で朽ち果てようとしていた。
それをたまたま露子が持っていたテンちゃんという人形と共に、遊ばせようとしたのだ。
その式神は、人の姿を借りて露子の前に現れた。
それ以来あの場所で遊ぶ、唯一の友人となっていた。
露子はそれを思い出して、懐かしく感じる。
式神は神の領域。
つまり死後の世界には入れないのだろう。
式神も露子を愛していた。
自分を粗末にした人間を呪いこそはしないが、悲しく感じていた。
そこに現れたのが露子だ。
露子の命を守ることはできないが、露子の側でずっと露子を見ていた。
九尾狐が呼び寄せたずんばばばぁも、式神をよく知っている。
式神もまた、ずんばばばぁと九尾狐に呼ばれていたのだ。
『露子を助けてやってくれ』
妖怪ではない式神が入れるのは、生の世界のギリギリ。
そこから何ができるのか。。。
その答えは、露子を元気にすることだった。
式神の力を得て、露子は元気を取り戻していた。
青白く光る燐をもっと強く燃やしている。
遠くに見える霧を見つめながら、露子はある考えを浮かべた。
もしかしたら。。。
生の力を借りれば出来るのかもしれない。
何かの神殿で祀られていたものが、この地で朽ち果てようとしていた。
それをたまたま露子が持っていたテンちゃんという人形と共に、遊ばせようとしたのだ。
その式神は、人の姿を借りて露子の前に現れた。
それ以来あの場所で遊ぶ、唯一の友人となっていた。
露子はそれを思い出して、懐かしく感じる。
式神は神の領域。
つまり死後の世界には入れないのだろう。
式神も露子を愛していた。
自分を粗末にした人間を呪いこそはしないが、悲しく感じていた。
そこに現れたのが露子だ。
露子の命を守ることはできないが、露子の側でずっと露子を見ていた。
九尾狐が呼び寄せたずんばばばぁも、式神をよく知っている。
式神もまた、ずんばばばぁと九尾狐に呼ばれていたのだ。
『露子を助けてやってくれ』
妖怪ではない式神が入れるのは、生の世界のギリギリ。
そこから何ができるのか。。。
その答えは、露子を元気にすることだった。
式神の力を得て、露子は元気を取り戻していた。
青白く光る燐をもっと強く燃やしている。
遠くに見える霧を見つめながら、露子はある考えを浮かべた。
もしかしたら。。。
生の力を借りれば出来るのかもしれない。
それは記憶にあるものだった。
「私の大切なテンちゃんだ!!」
露子は慌てて拾った。
それは間違いない露子のもの。
可愛がっていた人形だ。
右側の頬に、小さな傷が出来ている。
髪の毛が解きすぎて少し抜け落ちている。
それでも大事にしていた。
そう。。。。
この人形でずんばばばぁのいた広場で遊んでいた。
そうだあそこで・・・私この子とは別のことも遊んでいた。
でもあの子は生きていた。
動いていたわ。
いつも私と話をして。。。。誰だろう?
露子は昔の記憶を探っていた。
思い出せない。。。
その時に、川にどぼんっという音が響く。
何?
露子が振り向くと、川の向こうから誰かが手を振っている。
三途の川のこちら側は死の世界。
つまり向こうは生の世界のギリギリだ。
よーく目を凝らして見る。
若い?
嫌でも。。。。着物を着ている?
女性???
男性?
露子は何度も何度も目を凝らした。
なんとなく思い当たる。
あれは・・・あの空き地で一緒に遊んだ子?
そうだ!!
「私の大切なテンちゃんだ!!」
露子は慌てて拾った。
それは間違いない露子のもの。
可愛がっていた人形だ。
右側の頬に、小さな傷が出来ている。
髪の毛が解きすぎて少し抜け落ちている。
それでも大事にしていた。
そう。。。。
この人形でずんばばばぁのいた広場で遊んでいた。
そうだあそこで・・・私この子とは別のことも遊んでいた。
でもあの子は生きていた。
動いていたわ。
いつも私と話をして。。。。誰だろう?
露子は昔の記憶を探っていた。
思い出せない。。。
その時に、川にどぼんっという音が響く。
何?
露子が振り向くと、川の向こうから誰かが手を振っている。
三途の川のこちら側は死の世界。
つまり向こうは生の世界のギリギリだ。
よーく目を凝らして見る。
若い?
嫌でも。。。。着物を着ている?
女性???
男性?
露子は何度も何度も目を凝らした。
なんとなく思い当たる。
あれは・・・あの空き地で一緒に遊んだ子?
そうだ!!
時間は刻々過ぎていく。
もうあまり時間は無い。
門の中に入れば、幽霊としての力が使えない。
門の外では、あの霧のために顔を見ることができない。
他に方法は無いだろうか。
富士山よりも高いと言われると、今から閻魔大王をよじ登っても、到底時間内には無理だ。
だとしたら。。。。
もうどう足掻いても、無理だと結論づく。
露子は呆然としながら立ち尽くした。
自然と涙が溢れてくる。
今の気持ちが不思議と言葉になって零れ落ちる。
「ごめんね。。。みんな。。。ごめんね。。。。」
何度も何度も震えた声で呟いた。
覚悟なんて決められない。
自分が消滅することも、皆に会えなくなることも。
それでも、逃れようもない事実として目の前に迫っていた。
逃げる場所さえない。
完全に窮地に立たされている。
恐ろしくて怖くて、ガタガタと震えた。
もう完全に露子は、戦う気力さえ失っていた。
三途の川は、とても綺麗だとは言えない。
現世から死者への弔いと言うことで、いろいろなものが流れてくる。
それぞれに名前がか書かれてあり、死者はそれを受け取ることができる。
だが受け取りを拒否したものや、もう輪廻したものなどはそのまま漂流物として存在する。
ただし年に2回だけ、それらは綺麗に消えてなくなる。
餓鬼などの下等と呼ばれる者たちに、分け与えられるのだ。
だが今はまだその時期ではなかった。
落胆した露子の目線を落としていた先に、光るものが一つだけあった。
まばゆい光でそれは己の存在を誇示していた。
露子の停止した頭に、少し回転が戻る。
『なんだろう』
露子はそれをじっと眺めた。
もうあまり時間は無い。
門の中に入れば、幽霊としての力が使えない。
門の外では、あの霧のために顔を見ることができない。
他に方法は無いだろうか。
富士山よりも高いと言われると、今から閻魔大王をよじ登っても、到底時間内には無理だ。
だとしたら。。。。
もうどう足掻いても、無理だと結論づく。
露子は呆然としながら立ち尽くした。
自然と涙が溢れてくる。
今の気持ちが不思議と言葉になって零れ落ちる。
「ごめんね。。。みんな。。。ごめんね。。。。」
何度も何度も震えた声で呟いた。
覚悟なんて決められない。
自分が消滅することも、皆に会えなくなることも。
それでも、逃れようもない事実として目の前に迫っていた。
逃げる場所さえない。
完全に窮地に立たされている。
恐ろしくて怖くて、ガタガタと震えた。
もう完全に露子は、戦う気力さえ失っていた。
三途の川は、とても綺麗だとは言えない。
現世から死者への弔いと言うことで、いろいろなものが流れてくる。
それぞれに名前がか書かれてあり、死者はそれを受け取ることができる。
だが受け取りを拒否したものや、もう輪廻したものなどはそのまま漂流物として存在する。
ただし年に2回だけ、それらは綺麗に消えてなくなる。
餓鬼などの下等と呼ばれる者たちに、分け与えられるのだ。
だが今はまだその時期ではなかった。
落胆した露子の目線を落としていた先に、光るものが一つだけあった。
まばゆい光でそれは己の存在を誇示していた。
露子の停止した頭に、少し回転が戻る。
『なんだろう』
露子はそれをじっと眺めた。
このくらいだろう。。。。
大体の目安で、露子は振り返った。
だがそこには白い霧のようなものがかかっており、閻魔大王の顔は見えない。
あの白い霧のようなものが光を反射して、閻魔大王の顔を見えなくしていた。
それが外から見ると、今度は完全な目隠しの役目を果たしている。
そうか・・・やっぱり簡単には見えない仕組みだ。
だとしたらあの霧のようなものをどうにかすればいい。
風を送れば消えるかもしれない。
考えてみると、この地では風を感じていない。
現世の地で幽霊になった時に、透の髪の毛は風で揺れているように見えた。
透は生霊だったわけだから、風を感じることができたのだろう。
だが越らの世界では、何一つ揺れてはいない。
あの霧のようなものも、まったく動いていない。
風を起こせるものを探そう。
露子は地面に降りて周りを見回した。
三途の川とでもいうような場所がある。
そこには現世から死者を弔うために流されたものが、幾つも漂っていた。
その一つを手にしてみた。
小さな風が起こせそうなその木の皮。
額縁か何かの裏板だろう。
現世では触ることが出来なかったが、三途の川のこちら側では触れることもできる。
しっかりと握ってみた。
手に感触が伝わる。
大きく振った。
風・・・・が吹いたのだろうか。
露子には感じることができない。
なぜ?
起きていないか。。。
今度は物に向けて振ってみる。
しかし・・・何も揺れない。
やはり風は起きていない。
ダメだ。
露子は落胆した。
閻魔大王の顔を見た物は誰一人いないと言う。
露子如きが、見ようなんて甘いんだ。
どうしよう。
大体の目安で、露子は振り返った。
だがそこには白い霧のようなものがかかっており、閻魔大王の顔は見えない。
あの白い霧のようなものが光を反射して、閻魔大王の顔を見えなくしていた。
それが外から見ると、今度は完全な目隠しの役目を果たしている。
そうか・・・やっぱり簡単には見えない仕組みだ。
だとしたらあの霧のようなものをどうにかすればいい。
風を送れば消えるかもしれない。
考えてみると、この地では風を感じていない。
現世の地で幽霊になった時に、透の髪の毛は風で揺れているように見えた。
透は生霊だったわけだから、風を感じることができたのだろう。
だが越らの世界では、何一つ揺れてはいない。
あの霧のようなものも、まったく動いていない。
風を起こせるものを探そう。
露子は地面に降りて周りを見回した。
三途の川とでもいうような場所がある。
そこには現世から死者を弔うために流されたものが、幾つも漂っていた。
その一つを手にしてみた。
小さな風が起こせそうなその木の皮。
額縁か何かの裏板だろう。
現世では触ることが出来なかったが、三途の川のこちら側では触れることもできる。
しっかりと握ってみた。
手に感触が伝わる。
大きく振った。
風・・・・が吹いたのだろうか。
露子には感じることができない。
なぜ?
起きていないか。。。
今度は物に向けて振ってみる。
しかし・・・何も揺れない。
やはり風は起きていない。
ダメだ。
露子は落胆した。
閻魔大王の顔を見た物は誰一人いないと言う。
露子如きが、見ようなんて甘いんだ。
どうしよう。
とにかくこの霊界の入り口が見えるギリギリまでで、高い場所を探す。
いや高い場所がなければ、空に飛べる場所を探す。
この門を潜れば、もしかしたら飛べるかもしれない。
その期待を込めて、露子は門の外に出た。
鬼たちはいるが、露子に気もかけない。
こんなに早く閻魔大王の指示が浸透するのか・・・と驚きもした。
もし閻魔大王の命令が、門の外まで及んでいなくても、露子には考えがあった。
露子は九尾狐とこの場所に来た時に、門の外までは飛んでいた。
つまり外に出て上に飛べば、あっという間に閻魔大王の顔の高さまで行ける。
出た瞬間に一気に飛び上がれば、鬼たちも追っては来れないだろう。
門から2歩、露子は強く飛び上がった。
見る見るうちに上昇していく。
そして身体の向きを門の中に向けた。
どんどん上昇していく中で、一気に露子は落胆する。
見えない。。。。
期待していたようにはいかなかった。
門の外からは、幾ら飛び上がっても中が見えないのだ。
それは・・・露子の高さに合わせて門の高さも変わる。
露子よりも数メートル高い位置に、常に塀がある。
もっとスピードを!!
そう思って力を込めたが、それでも追い付かない。
ダメだ。
これもダメか。。。。
ならばもっと離れよう。
もしかした塀は露子を見ているのではないか。
だとしたら露子を意識しない場所からなら、塀を超えられる。
今度は横に飛んだ。
門から離れていく。
どんどん・・・どんどん。
いや高い場所がなければ、空に飛べる場所を探す。
この門を潜れば、もしかしたら飛べるかもしれない。
その期待を込めて、露子は門の外に出た。
鬼たちはいるが、露子に気もかけない。
こんなに早く閻魔大王の指示が浸透するのか・・・と驚きもした。
もし閻魔大王の命令が、門の外まで及んでいなくても、露子には考えがあった。
露子は九尾狐とこの場所に来た時に、門の外までは飛んでいた。
つまり外に出て上に飛べば、あっという間に閻魔大王の顔の高さまで行ける。
出た瞬間に一気に飛び上がれば、鬼たちも追っては来れないだろう。
門から2歩、露子は強く飛び上がった。
見る見るうちに上昇していく。
そして身体の向きを門の中に向けた。
どんどん上昇していく中で、一気に露子は落胆する。
見えない。。。。
期待していたようにはいかなかった。
門の外からは、幾ら飛び上がっても中が見えないのだ。
それは・・・露子の高さに合わせて門の高さも変わる。
露子よりも数メートル高い位置に、常に塀がある。
もっとスピードを!!
そう思って力を込めたが、それでも追い付かない。
ダメだ。
これもダメか。。。。
ならばもっと離れよう。
もしかした塀は露子を見ているのではないか。
だとしたら露子を意識しない場所からなら、塀を超えられる。
今度は横に飛んだ。
門から離れていく。
どんどん・・・どんどん。