やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

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幽霊だけど恋してる―282話

2014-03-31 07:36:30 | 小説
露子が気が付いたのは、式神だった。

何かの神殿で祀られていたものが、この地で朽ち果てようとしていた。

それをたまたま露子が持っていたテンちゃんという人形と共に、遊ばせようとしたのだ。

その式神は、人の姿を借りて露子の前に現れた。

それ以来あの場所で遊ぶ、唯一の友人となっていた。

露子はそれを思い出して、懐かしく感じる。

式神は神の領域。

つまり死後の世界には入れないのだろう。

式神も露子を愛していた。

自分を粗末にした人間を呪いこそはしないが、悲しく感じていた。

そこに現れたのが露子だ。

露子の命を守ることはできないが、露子の側でずっと露子を見ていた。

九尾狐が呼び寄せたずんばばばぁも、式神をよく知っている。

式神もまた、ずんばばばぁと九尾狐に呼ばれていたのだ。

『露子を助けてやってくれ』

妖怪ではない式神が入れるのは、生の世界のギリギリ。

そこから何ができるのか。。。

その答えは、露子を元気にすることだった。

式神の力を得て、露子は元気を取り戻していた。

青白く光る燐をもっと強く燃やしている。

遠くに見える霧を見つめながら、露子はある考えを浮かべた。

もしかしたら。。。

生の力を借りれば出来るのかもしれない。



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幽霊だけど恋してる―281話

2014-03-30 21:00:08 | 小説
それは記憶にあるものだった。

「私の大切なテンちゃんだ!!」

露子は慌てて拾った。

それは間違いない露子のもの。

可愛がっていた人形だ。

右側の頬に、小さな傷が出来ている。

髪の毛が解きすぎて少し抜け落ちている。

それでも大事にしていた。

そう。。。。

この人形でずんばばばぁのいた広場で遊んでいた。

そうだあそこで・・・私この子とは別のことも遊んでいた。

でもあの子は生きていた。

動いていたわ。

いつも私と話をして。。。。誰だろう?

露子は昔の記憶を探っていた。

思い出せない。。。

その時に、川にどぼんっという音が響く。

何?

露子が振り向くと、川の向こうから誰かが手を振っている。

三途の川のこちら側は死の世界。

つまり向こうは生の世界のギリギリだ。

よーく目を凝らして見る。

若い?

嫌でも。。。。着物を着ている?

女性???

男性?

露子は何度も何度も目を凝らした。

なんとなく思い当たる。

あれは・・・あの空き地で一緒に遊んだ子?

そうだ!!




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幽霊だけど恋してる―280話

2014-03-29 07:43:22 | 小説
時間は刻々過ぎていく。

もうあまり時間は無い。

門の中に入れば、幽霊としての力が使えない。

門の外では、あの霧のために顔を見ることができない。

他に方法は無いだろうか。

富士山よりも高いと言われると、今から閻魔大王をよじ登っても、到底時間内には無理だ。

だとしたら。。。。

もうどう足掻いても、無理だと結論づく。

露子は呆然としながら立ち尽くした。

自然と涙が溢れてくる。

今の気持ちが不思議と言葉になって零れ落ちる。

「ごめんね。。。みんな。。。ごめんね。。。。」

何度も何度も震えた声で呟いた。

覚悟なんて決められない。

自分が消滅することも、皆に会えなくなることも。

それでも、逃れようもない事実として目の前に迫っていた。

逃げる場所さえない。

完全に窮地に立たされている。

恐ろしくて怖くて、ガタガタと震えた。

もう完全に露子は、戦う気力さえ失っていた。


三途の川は、とても綺麗だとは言えない。

現世から死者への弔いと言うことで、いろいろなものが流れてくる。

それぞれに名前がか書かれてあり、死者はそれを受け取ることができる。

だが受け取りを拒否したものや、もう輪廻したものなどはそのまま漂流物として存在する。

ただし年に2回だけ、それらは綺麗に消えてなくなる。

餓鬼などの下等と呼ばれる者たちに、分け与えられるのだ。

だが今はまだその時期ではなかった。

落胆した露子の目線を落としていた先に、光るものが一つだけあった。

まばゆい光でそれは己の存在を誇示していた。

露子の停止した頭に、少し回転が戻る。

『なんだろう』

露子はそれをじっと眺めた。






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幽霊だけど恋してる―279話

2014-03-28 07:33:37 | 小説
このくらいだろう。。。。

大体の目安で、露子は振り返った。

だがそこには白い霧のようなものがかかっており、閻魔大王の顔は見えない。

あの白い霧のようなものが光を反射して、閻魔大王の顔を見えなくしていた。

それが外から見ると、今度は完全な目隠しの役目を果たしている。

そうか・・・やっぱり簡単には見えない仕組みだ。

だとしたらあの霧のようなものをどうにかすればいい。

風を送れば消えるかもしれない。

考えてみると、この地では風を感じていない。

現世の地で幽霊になった時に、透の髪の毛は風で揺れているように見えた。

透は生霊だったわけだから、風を感じることができたのだろう。

だが越らの世界では、何一つ揺れてはいない。

あの霧のようなものも、まったく動いていない。

風を起こせるものを探そう。

露子は地面に降りて周りを見回した。

三途の川とでもいうような場所がある。

そこには現世から死者を弔うために流されたものが、幾つも漂っていた。

その一つを手にしてみた。

小さな風が起こせそうなその木の皮。

額縁か何かの裏板だろう。

現世では触ることが出来なかったが、三途の川のこちら側では触れることもできる。

しっかりと握ってみた。

手に感触が伝わる。

大きく振った。

風・・・・が吹いたのだろうか。

露子には感じることができない。

なぜ?

起きていないか。。。

今度は物に向けて振ってみる。

しかし・・・何も揺れない。

やはり風は起きていない。

ダメだ。

露子は落胆した。

閻魔大王の顔を見た物は誰一人いないと言う。

露子如きが、見ようなんて甘いんだ。

どうしよう。

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幽霊だけど恋してる―278話

2014-03-27 07:43:55 | 小説
とにかくこの霊界の入り口が見えるギリギリまでで、高い場所を探す。

いや高い場所がなければ、空に飛べる場所を探す。

この門を潜れば、もしかしたら飛べるかもしれない。

その期待を込めて、露子は門の外に出た。

鬼たちはいるが、露子に気もかけない。

こんなに早く閻魔大王の指示が浸透するのか・・・と驚きもした。

もし閻魔大王の命令が、門の外まで及んでいなくても、露子には考えがあった。

露子は九尾狐とこの場所に来た時に、門の外までは飛んでいた。

つまり外に出て上に飛べば、あっという間に閻魔大王の顔の高さまで行ける。

出た瞬間に一気に飛び上がれば、鬼たちも追っては来れないだろう。

門から2歩、露子は強く飛び上がった。

見る見るうちに上昇していく。

そして身体の向きを門の中に向けた。

どんどん上昇していく中で、一気に露子は落胆する。

見えない。。。。

期待していたようにはいかなかった。

門の外からは、幾ら飛び上がっても中が見えないのだ。

それは・・・露子の高さに合わせて門の高さも変わる。

露子よりも数メートル高い位置に、常に塀がある。

もっとスピードを!!

そう思って力を込めたが、それでも追い付かない。

ダメだ。

これもダメか。。。。

ならばもっと離れよう。

もしかした塀は露子を見ているのではないか。

だとしたら露子を意識しない場所からなら、塀を超えられる。

今度は横に飛んだ。

門から離れていく。

どんどん・・・どんどん。





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