やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

↓投票ボタン押してね

blogram投票ボタン

君に会いに

2014-08-31 11:36:06 | 小説
今年の夏に、会いに行くよ。

そう約束していた。

君の住む町は、人口も年々減少している。

寂れた古い町だ。

でも君は学生時代の4年間を都会で過ごしただけで、後ろ髪を引かれることも無く帰って行った。

あれから半年。

君はどんな生活をしてるのだろう。

学校の先生になったのは知っている。

でも、理想の先生になれたのだろうか。

それとも、かなり苦労しているのだろうか。

メールではいつもと変わらない君。

俺達は付き合ったわけでもない。

ただ友達以上の関係で、恋愛までは当て嵌まらなかった。

だが離れてわかったのは、君がいなければ寂しいと言うことだ。

それでも半年を待った。

今、田んぼのあぜ道を歩いている。

君の通う学校は、今でも古い木造校舎。

山の麓に見える大きな時計が目印の学校。

君は、今でもちょっと小首をかしげる癖で、俺を迎えてくれるだろうか。

痩せて・・・やつれていなければいいのだが。。。。

青い空に浮かぶ入道雲が空の高さを強調させ、学校の影を大きく写す。

汗ですべる鞄の取っ手を持つ手にも、力が入る。

あの建物に君がいる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイコンタクト

2014-08-30 22:01:27 | 小説
いつも同じ時間に同じ場所ですれ違う女性。

言葉を交わすことも挨拶することもないのだけど、お互いにすれ違うまでの数メートル。

必ずと言っていいほど、お互いに目を見る。

少しほほ笑みながら。

なんとなくそれだけで挨拶をしている気分。

気分が優れなくても、嫌なことがあっても、その数秒間だけはなぜが笑顔になれる。

お互いにそれが心地よいのだと思う。

すれ違うだけで、ほっとする。

お互いに今日も元気だと。

その女性が今日もいてくれることを。。。

時折風に乗って漂う香水も、それが彼女の香りだとわかるようになった。

風になびくストレートの長い髪も、首に下げているネックレスも、もう脳裏に刻まれている。

スキという感情とは違うかもしれない。

ただの憧れかもしれない。

それでも透明な空気の中に光をさしたような彼女の姿に、特別な感情があるのは事実だ。

今日も。

すれ違いざまに、彼女の目を見る。

お互いにじっと。。。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

別れに・・・

2014-08-29 07:45:17 | 小説
あの頃いつも、君を抱きしめていた。

毎日君の部屋に通ってたっけ。

玄関を開けると、二匹の猫のお迎え。

8畳一間のフローリングの部屋で、君はいつも布団の上にいた。

ぼさぼさの髪に、ぞくっとするほど切れあがった目。

元モデルだったから、スタイルとルックスはかなりいい。

煙草を吹かせながら、俺の方をじっと見てる。

黙ってカバンを置き、彼女の横に座った。

煙草を揉み消し、俺の胸に寄りかかってくる。

「お帰り」

「ただいま。俺が料理しようか?」

「だめ。台所は私の聖地。男には入らせない」

そう言って、台所に向かう。

じっと眺めながら、思い出したことがあった。

「結婚しよう」

いつだったかそんな約束をした。

君を守ろうと思っていた。

君はかなり知名度のある家の出身で、夢の為に家族を捨てて一人で生きている。

そんな不器用な君とは、こんな場所でしか出会えなかった。

でも・・・出会えたことは運命だと思った。

だから。

一人の時に悲しそうな顔で怯えている君を、安心させたかった。

なのに・・・・。

そんな君は今。

最後の荷物をトランクに詰め込んだ。

僕の前から消えて行く。

俺にはさよならの一言も言わないで、少し日焼け跡を残す床だけに別れを告げて。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

親父

2014-08-28 22:38:34 | 小説
小さな袋を渡された。

なんだろうと開いてみる。

中には1万円札が1枚あった。

何?

不思議そうな顔で、隣で運転している親父を見る。

「持って行け」

ぶっきらぼうに言う。

返そうとしたが、親父の年季の入った顔を見ると、「いいよ」と言う言葉が出なかった。

もう俺は社会人だ。

2年目だぞ。

住むところも自分の給与で払ってる。

そう言いたかった。

でも親としては、何もなしに返せないと思ったのだろう。

母親がいれば、たぶん食材を送ってきたり、畑で採れた野菜とかも送ってきただろう。

でもうちは片親だ。

そんな器用なことが出来る親父でもない。

小さな工場で働いて、休日は釣りか畑仕事して過ごしている。

そんな親父がくれた1万円。

でも。。。

俺にとって、ただの1万円ではない。

100万にも1億にも匹敵するぐらいの価値がある。

ジャンバーのジッパーがついたポケットの奥に仕舞った。

俺の胸にあるポケット。

なんだか熱い想いが。。。

胸の位置にある気がする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

友情と恋

2014-08-27 07:40:36 | 小説
「俺。あいつと昨日一緒にいたんだ。結構長く色々なこと話した」

そう仲間に言われた。

「そうなんだ・・・」

そっけなく答える。

実は今までずっと・・・・俺は彼女と2人でちょくちょく会ってた。

彼女は俺が好意を寄せていることを知っていると思う。

でも前から、奴のことを質問されることが多かった。

もしかして・・・という気持ちはあったけど、奴は滅多に現れないし、彼女の俺に対する態度もまんざらではなかった。

それでも会話を繋ぐために、奴の話題もしていた。

奴のことが好きなのかな?という疑問はあったけど、、、。

でも俺が彼女を好きだと言う感情は、簡単には諦めきれない。

ちょっとした隙に、大逆転なんて期待して。

それなのに・・・俺の知らない彼女のこと、奴は沢山知っている。

俺にはまったく話をしてくれなかった情報・・・・。

俺じゃダメだったんだ。

一気に奈落に落ちた気がする。

でも友情って切ない。

きっぱりと身を引いて、応援するしかないと決める。

でも・・・・当分はやっぱり。

やっぱりあの子の前には姿を出せない。

もう。。。

夏休みと共に、育もうとした愛も消えた。

そう、夏と共に。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする