「そうだ。よかったら少し歩いてみない?」
「どこを?」
「この街を」
珍しく透から誘ってくれた。
しかも街の中を歩こうって。
「うん」
満面の笑みを浮かべて露子は答えた。
そのまま地上に降り、校門から外に出る。
死んだとはいえ、生きている時の感覚は忘れたわけではないので、壁を突きって歩くとか宙を舞うなんてことはそうそうしない。
普通に道を歩き、交差点では車が来ないかを見てしまう。
そうそう会話は無いが、二人で街を堂々と歩くなんて露子のは生きているときも夢でしかなかった。
付き合っていた先輩とも、ほとんど一緒になんてない。
公園やお店で待ち合わせて、ちょっとだけ会話をして帰る程度だ。
誰にも咎められずに、日差しの眩しいこの道を歩く。
それだけで新鮮で楽しい。
この時間が永遠であればいいと思う。
優一とは絶対にこんなことはできない。
優一の横を歩いていても、彼には私の存在は見えないからだ。
私は幽霊で、彼は生きている人間。
絶対にありえない・・・・。
考えたくもないのに考えてしまう。
その瞬間に目じりが緩む。
溢れかえているものを、それ以上に溜めないように、空を見上げて歩く。
横にいる透はその姿をどう見ているだろうか。
幽霊であっても、人を愛する感情は消えない。
ただ世界が違うことで諦めてしまうだけだ。
好きと言う気持ちを、いつの間にか身体と共に消し去る。
いや、魂の奥に溜めこむ。
そして生きている大好きな人が、幸せになれと祈る。
そうして、灰になった身体と共に気持ちも消えていく。
そのまま天界に登り、思い出すこともなくなる。
そうなのだろう。
想像でしかないが、露子にはそう思えた。
「どこを?」
「この街を」
珍しく透から誘ってくれた。
しかも街の中を歩こうって。
「うん」
満面の笑みを浮かべて露子は答えた。
そのまま地上に降り、校門から外に出る。
死んだとはいえ、生きている時の感覚は忘れたわけではないので、壁を突きって歩くとか宙を舞うなんてことはそうそうしない。
普通に道を歩き、交差点では車が来ないかを見てしまう。
そうそう会話は無いが、二人で街を堂々と歩くなんて露子のは生きているときも夢でしかなかった。
付き合っていた先輩とも、ほとんど一緒になんてない。
公園やお店で待ち合わせて、ちょっとだけ会話をして帰る程度だ。
誰にも咎められずに、日差しの眩しいこの道を歩く。
それだけで新鮮で楽しい。
この時間が永遠であればいいと思う。
優一とは絶対にこんなことはできない。
優一の横を歩いていても、彼には私の存在は見えないからだ。
私は幽霊で、彼は生きている人間。
絶対にありえない・・・・。
考えたくもないのに考えてしまう。
その瞬間に目じりが緩む。
溢れかえているものを、それ以上に溜めないように、空を見上げて歩く。
横にいる透はその姿をどう見ているだろうか。
幽霊であっても、人を愛する感情は消えない。
ただ世界が違うことで諦めてしまうだけだ。
好きと言う気持ちを、いつの間にか身体と共に消し去る。
いや、魂の奥に溜めこむ。
そして生きている大好きな人が、幸せになれと祈る。
そうして、灰になった身体と共に気持ちも消えていく。
そのまま天界に登り、思い出すこともなくなる。
そうなのだろう。
想像でしかないが、露子にはそう思えた。