屋上の上ではまるで薄い雲のように、抜けるような青空を半透明な身体で受けながら、透が立っていた。
私の存在を確認したかのように、後姿のまま手を振る。
わかってくれている。
それがすごく嬉しい。
このまま彼に抱きつきたい心境だったが、お互いに形のない存在。
たぶん触れることができない。
いや・・・待てよ?!
露子は理科準備室の中で、勇作が狐の頭を撫でているのを思い出した。
もしかして幽霊同士なら触れられる?
試に抱きついてみようか。
自分の大胆な発想に多少の興奮を覚えながら、露子は突進した。
透の背中が間近に感じるところで、両手を広げた。
その両手を閉じる。
その手は公差し、自分を抱きしめている。
勢いで露子は、旧校舎の上から10歩ほど先に出ていた。
つまり空中にいる。
下に落ちれば数十メートル。
だが悲しいことに幽霊だ。
そのまま空中に漂いながら、恥ずかしい姿勢を真後ろから透に見られている。
真っ赤に赤面している自分を感じる。
そのままの姿勢で硬直。
後ろを振り返るタイミングがない。
その緊張を透が解いてくれた。
「露ちゃん。校舎から飛び出しているから、こちらにおいで。一緒に街を眺めよう」
まったく気づいていないふり。
露子はうつむき加減に、透の位置まで戻る。
「あの街のあの鉄塔だけど、あの下の辺りに僕は住んでいたんだ。その記憶だけはしっかりと残っていてね。あの鉄塔を見るために、いつも僕はここにいる気がする」
「素敵な思い出だったんだ」
「それはもう記憶に残っていない。でもそうだと思う。きっと」
全く先程のことに触れず、透は気持ちよい春風を浴びながら、漂っている。
私の存在を確認したかのように、後姿のまま手を振る。
わかってくれている。
それがすごく嬉しい。
このまま彼に抱きつきたい心境だったが、お互いに形のない存在。
たぶん触れることができない。
いや・・・待てよ?!
露子は理科準備室の中で、勇作が狐の頭を撫でているのを思い出した。
もしかして幽霊同士なら触れられる?
試に抱きついてみようか。
自分の大胆な発想に多少の興奮を覚えながら、露子は突進した。
透の背中が間近に感じるところで、両手を広げた。
その両手を閉じる。
その手は公差し、自分を抱きしめている。
勢いで露子は、旧校舎の上から10歩ほど先に出ていた。
つまり空中にいる。
下に落ちれば数十メートル。
だが悲しいことに幽霊だ。
そのまま空中に漂いながら、恥ずかしい姿勢を真後ろから透に見られている。
真っ赤に赤面している自分を感じる。
そのままの姿勢で硬直。
後ろを振り返るタイミングがない。
その緊張を透が解いてくれた。
「露ちゃん。校舎から飛び出しているから、こちらにおいで。一緒に街を眺めよう」
まったく気づいていないふり。
露子はうつむき加減に、透の位置まで戻る。
「あの街のあの鉄塔だけど、あの下の辺りに僕は住んでいたんだ。その記憶だけはしっかりと残っていてね。あの鉄塔を見るために、いつも僕はここにいる気がする」
「素敵な思い出だったんだ」
「それはもう記憶に残っていない。でもそうだと思う。きっと」
全く先程のことに触れず、透は気持ちよい春風を浴びながら、漂っている。