なぜか透といると、優しくなれる。
心も穏やかになれる。
透でいいのではないか・・・・そういう気持ちが大きくなるが、どこかで絞り切れないなにかがある。
これが未練なのだろうか。
生きているときに果たせなかった思いが、あの世へ行けない理由かもしれない。
・・・そんなわけないか~祖父が迎えに来ないだけだ。
ふと過った思いを打ち消して、明るくなった気持ちの電球が直ぐに消える。
でもやっぱり、まだ告白できない。
透が好きだけど、彼には謎が多すぎる。
そして優一の好きだったという言葉が、記憶から消せない。
もう一度。
もう一度あの言葉が聞けたら、決心がつくかもしれない。
透が横にいるにも構わず、頭の中は雑念でいっぱいだ。
「透のこともっと教えて。覚えている限りのこと」
頭の中を切り替える意味も含めて、透に話しかけた。
透は黙って考え込んでいる。
しばらくの沈黙の後に、ポツリポツリと話し始める。
「僕は、この街のあの鉄塔が見える付近で育ってた。あの鉄塔はかなり古くからあるんだ」
先日も同じことを言っていた。
露子も同じ方向を見る。
何か大きな鳥が、鉄塔の側を通り過ぎて行った。
「僕がいたころは、あのもう少し先まで海があって、よく海で遊んでいた記憶がある。兄弟なのか・・・・一緒にいつも子供がいた」
「男の子?」
「うん」
「楽しかったんだ」
「はしゃいでいる顔が浮かぶからね。でも僕は病弱だったから、楽しい思い出はそのぐらいなんだ。後は病室の記憶と教室だね」
「家の思い出は?」
「それは・・・無いな~」
心も穏やかになれる。
透でいいのではないか・・・・そういう気持ちが大きくなるが、どこかで絞り切れないなにかがある。
これが未練なのだろうか。
生きているときに果たせなかった思いが、あの世へ行けない理由かもしれない。
・・・そんなわけないか~祖父が迎えに来ないだけだ。
ふと過った思いを打ち消して、明るくなった気持ちの電球が直ぐに消える。
でもやっぱり、まだ告白できない。
透が好きだけど、彼には謎が多すぎる。
そして優一の好きだったという言葉が、記憶から消せない。
もう一度。
もう一度あの言葉が聞けたら、決心がつくかもしれない。
透が横にいるにも構わず、頭の中は雑念でいっぱいだ。
「透のこともっと教えて。覚えている限りのこと」
頭の中を切り替える意味も含めて、透に話しかけた。
透は黙って考え込んでいる。
しばらくの沈黙の後に、ポツリポツリと話し始める。
「僕は、この街のあの鉄塔が見える付近で育ってた。あの鉄塔はかなり古くからあるんだ」
先日も同じことを言っていた。
露子も同じ方向を見る。
何か大きな鳥が、鉄塔の側を通り過ぎて行った。
「僕がいたころは、あのもう少し先まで海があって、よく海で遊んでいた記憶がある。兄弟なのか・・・・一緒にいつも子供がいた」
「男の子?」
「うん」
「楽しかったんだ」
「はしゃいでいる顔が浮かぶからね。でも僕は病弱だったから、楽しい思い出はそのぐらいなんだ。後は病室の記憶と教室だね」
「家の思い出は?」
「それは・・・無いな~」