やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

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幽霊だけど恋してる―312話

2014-04-30 07:37:55 | 小説
露子は優一の前から消えようとした。

足元から消え始めたところで、優一が呼び止める。

「ちょっとまって!最後にもう少しだけ」

「なに?」

露子は元に戻る。

「閻魔大王だけど、本当に露子を消すって言ったの?」

「本当にって。。。たぶん」

露子にとってもあやふやだった。

本当に消すと言われたわけではないと思う。

でも露子は自分の消滅の代わりに、皆を助けるように懇願した。

だがみんなを助けたのは、確かに露子が閻魔大王との掛けに勝ったことによる。

「でも・・・それは閻魔大王に聞いてみないとね。どちらにしても可能性はある」

「ならまず聞いてきてよ。本当に消えるのかどうか」

「どーして?」

「別れの仕方も違うでしょ。消滅するのと霊界に行くのでは」

「そりゃまぁ・・・」

露子は悩んだ。

今更自分が消滅しない可能性があるなんて、考えてもいない。

どうしたらいいのか。。。

「とりあえず聞いてみる。でも本当にこれが最後かもしれないから」

「だけどまだ24時間あるんだろ?」

「ううん。もう16時間」

あの時閻魔大王は、2日と言った。

でもそれは消滅するまでに2日とは言っていない。

聞きに行ってみよう。

とりあえず。。。



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幽霊だけど恋してる―311話

2014-04-29 22:55:13 | 小説
「なんで?!どーしてなんだ!!」

優一は詰め寄るようにしてきた。

「落ちついて。ねぇ落ちついてよ」

「ごめん。。。でもどーしてなんだ?」

「閻魔大王と約束したの」

「なんで?私を消滅させてくださいってか?」

「・・・まぁそういうこと」

「なんで?!」

「皆を助けるためよ」

「何で皆を助けるのに、おまえが消滅しなきゃならないんだ」

「私に出来ることは、それだけだったの」

「人のことなんてどーでもいいじゃないか」

「そうはいかないわよ!皆私の大切な友人だもの」

「友人って・・・それよりも自分を大切にしろよ」

「ごめん。もう決めたことだから」

「そんな・・・・なんとかならないのか?」

「ごめん・・・・」

「ごめんって・・・俺が閻魔大王に直訴する」

「できないわ」

「死ねば出来るんだろ?その位俺はおまえのためになら出来る」

「ダメよ。もしあなたが死んでも、閻魔大王と会えるのは数ヶ月先。私の期限は・・明日なの」

「そんな」

優一は膝から崩れた。

それほど衝撃を受けたようだ。

「ごめんね。私のことそれほど想ってくれているのは嬉しいけど。あなたはいのちが助かったんだから。この世界で新しい恋をして。幸せになってね」

「そんな・・・そんな・・・無理だよ」

「無理じゃない。きっと私のことなんて忘れる」

「出来ない」

「出来るわ」

「出来ない!!」

「しっかり前を見てね。私の最後のお願い」

「・・・・」

優一は何も言えなくなった。

無力な自分に腹をたてながら。

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幽霊だけど恋してる―310話

2014-04-28 23:41:41 | 小説
「死ぬのって、思った以上にリスクを背負うの。今まで出来ていたことが出来なくなる。これほど辛いことはないわ。あなたにはわからないでしょうけど」

「ゴメン。そんなに怒らなくても」

「怒るわよ。当然でしょ」

「悪かった。でも君の側にいたいのは本当だ」

優一はこんな積極的な男の子ではなかった。

どこからこんな風に変わったのだろうか。

一度想いを言葉にしてしまうと、もう言葉を止めることが出来ない。

その位、我慢していたのかもしれない。

「ねぇ聞いて。今日はちゃんとお別れを言いに来たの」

「お別れ?どーいう意味?!」

怒ったように優一は前かがみで言う。

「もう時間なのよ」

「時間?」

「そうこの世にいられるリミット」

「そんなの・・・他の霊みたいにいればいいじゃないか」

「他の霊?」

「俺も事故を切っ掛けに色々と見えるようになってさ・かなり古い霊も居るじゃないか」

「あれは自縛霊よ」

「そうなればいいじゃないか」

「ダメなの。私の場合・・・閻魔大王と約束してるからね」

「そんな約束は破ればいい」

「相手が相手。破れるわけ無いわ」

「そんな・・・だったらやっぱり俺が死ぬしか」

「ダメ!何度言ったらわかるの。わからずや!!」

「それは君もだろう!」

「ダメなの。あなたが死んでも私とはもう二度と会えないの!!」

「どうして?」

「私は消滅するのよ」

「消滅?」

「あなたは死ぬと霊界に行くわ。私の場合は、魂も消えるの」

「それって、どーいうこと?」

「もう意識も感情も、霊の姿さえ無くすのよ」


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幽霊だけど恋してる―309話

2014-04-27 22:31:28 | 小説
優一は死の瀬戸際から生還した。

そのため幽霊である露子が見えるようになっている。

そして、、、幽霊でも露子を愛している。

それが露子を苦しめて、露子は優一の側から離れた。

でももう自分が消えるとなると、優一に最後に挨拶だけしたかった。

優一は今でも私の死んだ場所に、花束を供えてくれているのだろうか。

それとも私のお墓?

それとも私の家に来ているのだろうか。

すこしだけ期待している自分がいる。

それが怖くもある。

もう私は死んだのだから。

露子は恐る恐る優一の家に行ってみた。

壁を突き抜けて、優一の部屋に入る。

生憎、優一はいなかった。

そうか学校の時間だ。

露子は久しぶりに校舎の新館に向かった。

窓越しに見ると、皆昼休みで騒いでいた。

その中に優一はいなかった。

そのまま引き寄せられるように、屋上に向かった。

優一は、屋上から旧校舎を見ていた。

露子の存在に気付いた優一は、笑顔を見せる。

「来ると思ってた。遅かったな」

「なんで来ると思ったの?」

「なんでって・・・そんな気がしただけさ」

「それで?」

「いや・・・・会いたかった」

優一は少し照れながら言う。

「私も。。。。生きていたらよかったんだけど」

「いや死んでも露子は露子だよ」

「そうはいかないわ。死んだらあなたとはもう一緒に居られない」

「なんで?幽霊だったら余計に自由じゃん。側にいろよ」

「ダメなんだって」

「どうして?」

「どうしてって。。あの世に行かなきゃならない」

「俺も行こうか」

「なんで?」

「俺が本気だって知ってほしいから」

「バカ言わないで。死ぬってそう簡単な物じゃないわよ」

「そうかな。露子見てると、俺だって」

「やめて!」

露子は真剣に怒った。

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幽霊だけど恋してる―308話

2014-04-26 23:39:57 | 小説
「それで・・・どーしたいのだ?」

「もちろん。我々の命などどうでもいい。彼女の恋を優先してください」

「優先したところで、おまえ達もあの子も幽霊だ。成就などしない」

「成就などしなくてもいいのです。ただ本当の恋を知ってほしい。それさえできれば我々もあの子と同様に、消滅します」

「おまえ達にそれほどの勇気があるのか?」

「あるわけないでしょう。自分では無理です。でも閻魔大王にそうされるのなら従います」

「従うのなら、今ここで」

「わかりました。でも彼女の恋愛を認めてください」

「よかろう」

露子の知らないところで、こんな出来事があった。

露子は全く知らない。

ただ、閻魔大王にも情けがあるのだと勘違いしていた。

三途の川を渡って露子が目指したのは、透の元だった。

透の肉体は生きている。

そして透の魂は、いまでもその肉体の側でずっと肉体と同化することを待っていた。

露子はその姿を見て、動きが止まった。

透の魂は、肉体の側の木の椅子に座って。じっと下を向いて座っていた。

両掌を組んで、その指の関節をおでこに当てている。

何かを祈っているように、じっと眼を閉じていた。

今、透に声をかけて何が起こるだろうか。

透と抱き合って恋に落ちるなんてあり得ない。

手さえ会わせることもない、肉体の無い状態なのだ。

それに、今の透が1分でもあの場所を離れることはないだろう。

この間来てくれたのは、たぶん・・・・気のせいだったのかもしれない。

自分をそう慰めた。

でも。。。

最後に透を見ることが出来た。

これでひとつ想い残すことが無くなった。

次は。

次は、優一の元に行かなきゃ。
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