やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

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幽霊だけど恋してる―16話

2013-07-05 07:47:19 | 小説
「だったら、かぜ・・・・そう『風』と言う名字はどうでしょう」

「風か~。いいね」

「名前は、透」

「風 透。イイ名前だ。僕にぴったり」

「うん。その名前素敵です。そうしましょう」

「今から僕は、風透。よろしく・・・その~君の名前は?」

「そうだ!言ってなかったですね。私は露子です。渡部露子」

「露子さん。どうぞよろしく」

「こちらこそ」

それからしばらく二人で話した。

普段なら男性と二人でいることに、周りの視線が気になった。

でも幽霊になれば別だ。

友達にも親にも、私の姿は見えない。

だから思う存分に話ができた。

こんなに男性と話したのは、小学校低学年以来。

自分でも驚くほどだ。

彼氏とだって、同じ車内にいても会話が長く続かない。

そう。。。

気が付けば5時間以上も話し続けている。

お互いに記憶が曖昧な部分や、世代に違いによって会話は成立しない。

それでも幽霊としては同じ年頃なので、その会話の食い違いが楽しめた。

「久しぶりに人と話ができた。すごく楽しい。ありがとう」

「透君の話が楽しくて。私も楽しかった」

お互いに本音で楽しめた。

「そろそろ消えなきゃ」

「消えるって?お迎えが来るの?」

急に曇った顔で私が尋ねる。

「いや、そうではなくて・・・毎年この時期になると、誰かが墓を訪ねてくれる。だからさ。お礼を言わなきゃ」

「家族?」

「わからない。もうそんな記憶さえも無いんだ」

「そうだ!墓石に苗字書いてるじゃない。風さんって苗字ではなくて、本当の」

「いや。風って苗字が気に入ってるから、本当の苗字なんていいよ」

「そうなの・・」

少し寂しく感じる。

本当にそれでいいのだろうか。

今の私にはわからなかった。





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