やんちゃでいこう

5歳の冷めた男の子の独り言

幽霊だけど恋してる―27話

2013-07-16 07:31:56 | 小説
屋上の上ではまるで薄い雲のように、抜けるような青空を半透明な身体で受けながら、透が立っていた。

私の存在を確認したかのように、後姿のまま手を振る。

わかってくれている。

それがすごく嬉しい。

このまま彼に抱きつきたい心境だったが、お互いに形のない存在。

たぶん触れることができない。

いや・・・待てよ?!

露子は理科準備室の中で、勇作が狐の頭を撫でているのを思い出した。

もしかして幽霊同士なら触れられる?

試に抱きついてみようか。

自分の大胆な発想に多少の興奮を覚えながら、露子は突進した。

透の背中が間近に感じるところで、両手を広げた。

その両手を閉じる。

その手は公差し、自分を抱きしめている。

勢いで露子は、旧校舎の上から10歩ほど先に出ていた。

つまり空中にいる。

下に落ちれば数十メートル。

だが悲しいことに幽霊だ。

そのまま空中に漂いながら、恥ずかしい姿勢を真後ろから透に見られている。

真っ赤に赤面している自分を感じる。

そのままの姿勢で硬直。

後ろを振り返るタイミングがない。

その緊張を透が解いてくれた。

「露ちゃん。校舎から飛び出しているから、こちらにおいで。一緒に街を眺めよう」

まったく気づいていないふり。

露子はうつむき加減に、透の位置まで戻る。

「あの街のあの鉄塔だけど、あの下の辺りに僕は住んでいたんだ。その記憶だけはしっかりと残っていてね。あの鉄塔を見るために、いつも僕はここにいる気がする」

「素敵な思い出だったんだ」

「それはもう記憶に残っていない。でもそうだと思う。きっと」

全く先程のことに触れず、透は気持ちよい春風を浴びながら、漂っている。


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