きれいなきれい〈田添公基・田添明美のブログ〉

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山崎るり子「風神」    田添明美

2022年10月29日 12時08分28秒 | 「いたずら」田添明美

30歳位から20年位、車両の多い細道を
なんとか自転車で通過し遠い図書館に通っていた。

彼女が詩集「だいどころ」で受賞した事を知り
図書館で借りて、全コピーした。
そして、2~3年前、彼女の第一詩集「おばあさん」を
読みたくなり検索すると、私がぼーっとしている間に
彼女は文庫詩人になっていた。
高階杞一も文庫詩人になっており、同時期に投稿し
現代詩手帖賞を取った小笠原鳥類迄が、文庫詩人に
なっていて驚いた。

山崎るり子は作品論を読むと、「婦人公論」に投稿後
出版したらしい。彼女は「文学については、ほとんど
その世界に足を踏み入れられたことがないようだった」
因って、彼女の作品は、いわゆる現代詩に染まらず。
彼女独自の世界を自由に構築している。

私がすごいと思った作品は、末尾の書きおろし
「お絵かき」6篇である。子供が絵を描いている様子
が書かれている。何故すごいのかと考えたら彼女は
美大を出ているのだ。紹介したいが、長いので割愛する。
作品論で取り上げられなかった1篇を紹介したい。

「風神」

土手の上
大きなビニール袋の口を
両手で広げて風の中に立つ
ぼおんと袋が跳ねあがり
持っていかれそうだ
両足を踏んばり持ちこたえ
袋の口をしっかり握って走り出す
風死ぬな 風死ぬな 風死ぬな 風死ぬな
(中略)
三階の南の部屋
そのベッドのふちに立つと
袋の口をゆるめてそっと押す
わずかな風が
生まれたての赤ん坊の髪を
ふうわりと持ち上げる
ほら これが風だ
大きくなったらいっしょに
風の中を走るぞ
早く早く早く大きくなれ
はあはあと荒い息をしながら
お兄ちゃんは弟にびしっと言う