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    きれいなきれい〈田添公基・田添明美のブログ〉

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沈丁花   尾崎幹夫「主席客演投稿者」

2009年04月11日 10時20分37秒 | 「いたずら」田添明美

沈丁花



春になるといつも気分がしずむ

テレビでむかしの歌をうたっている
「あなた、死んでもいいですか」*
どきりとし そこだけあたまのおくにしみこみ
強制的なくりかえしが
とめられなくなる
「あなた、死んでもいいですか」
ぼくは 死んだほうがいい という感じになってくる
いっそうからだが重く
「早く死ね」
歌といっしょにつぶやく声もはじまる

妻が お薬 呑んだ? という
医者は 薬 かえてみようか という
けっきょく量をふやす

へとへとになって帰ると
庭に何年かまえに植えた沈丁花が
はじめてつぼみをつくっていて
かすかな
かおりを感じる
気分がゆるんでいる
歌が「あなた、かわりはないですか」にかわる

翌日いっきにひらいたきつい花のかおりが
閉じた家のなかにもかすかにはいってくる
かおりといっしょに薬だけは呑む

もうちょっと生きられるような気がする
今は かわりないよ

 

     

            *阿久 悠作詞「北の宿から」
             都はるみ歌
              2003(H15)08・27