きれいなきれい〈田添公基・田添明美のブログ〉

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空      田添明美

2021年04月30日 09時54分00秒 | 「いたずら」田添明美

さまざまな 顔をし
空は立っている

ねむそうな星がおちてくる
あれは流れ星だよ
空は教える

どこへ 行くのか
おれは知らない
行きたいほうへ 行くのだろうね

空にも 泣きどころはある
おりしも
ありたけの
風雨に追われ、

からりとはれた
翌朝
地面が めりこんで
あやうく
立ち姿が よろめく時だ

空はふんばる
かゝる顔に
からから と
うっすり 紅いろに
かんかん と

空は刻まれない、
空の顔は うつっていくのだ


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水彩画家/小山周次との思い出       田添明美

2021年04月30日 09時27分04秒 | 「いたずら」田添明美

20代の頃、父が新婚の私の夫の仕事を心配し、父の親戚である当家の近くに
住んでおられ、美大卒業後凸版印刷に勤めていた方に、何か仕事がないかと相談した。
当時、夫は、医学書の仕事がかなりあり、乗り気ではなかったが、
父と私達夫婦で、そのお宅へ伺った。

後日、
彼が、連れて行って下さった所は、いかにも貧しい絵本の挿絵画家の家で、
トイレに掛けてあったタオルが相当汚れていて、この道は厳しいと感じた。

彼の父は、水彩画家/小山周次(1885-1967)で、その時既に亡くなられていた。
調べると、日本水彩会の創立者であった。
彼には、息子が二人いたが、二人とも、画家の道には進まなかった。
出会ったのは、周次の長男で。
彼は彼の人生を掛けて、父の作品を同じ場所に置くよう手配し、
小諸の美術館へ、全ての作品を売ることなく、寄贈した。

ある日、松濤美術館で水彩画展があったので、二人で出掛けたら!
岸田劉生麗子像の隣に、小山周次の作品が飾られており、かなり驚いた。
驚くままに、次の展示室に行くと、周次の雪景色の作品があった。
私は、風景画に全く興味がないのだが、清冽な絵の前に立ち尽くした。

それから、近所に住む長男は、毎年(申告に来たついで)といい自転車で
やって来ては、当家に顔を出し、私と二人でお茶を飲む交際が、始まった。

彼が会社を引退し、80半ばを過ぎた頃、
奥さんから(惚け出したので、遊びに来て欲しい)という連絡が入った。
彼は記憶力にたけ、(あれは、何年何月の事です)という方だったので、悲しかった。

この奥さんという方が、魅力的な方で、飾り気の全く無い童女のような方だった。
そうして、訪問をしている間に、彼は亡くなり、また
奥さんから(遊びに来て欲しい)という連絡が入った。

私達は、彼が亡くなってからも、3~4年訪問したと思う。
ある日、童女の奥さんは、小山周次の小作品(りんご)をぽんと下さった。
大切に、飾った。
(こんな書簡もまだ、あるのよ、知らない?有名な方ばかりよ)というので。
それもまるごと、寄贈した方がいいですよ と応えた。

その家は、古く、小山周次のアトリエが、そのまま残っており
茶の間には、その茶の間から見たかわいらしい周次の風景画が、いつも飾られていた。
これは、手放したくなかったんだな、といつも見ていた。
周次は酷く、怖い人だったそうだ。

長男は、何度も私達に(おやじは、家庭なんか考えないで、絵だけ描けば良かったのに)
とくりかえした。
しかし、それをしなかった周次は、茶の間から見たかわいらしい風景画が描け
二人の子供をうまく、育てたんだ、と私は思う。

周次も、長男も、その奥さんも、既にいない。
周次の(りんご/周次の還暦少し前の作品)だけに、
それら全ての思い出が
残っている。


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追記/FBへのコメント
あたたかい名画ですよね。伝わってうれしい!
この風景画には、周次の(気持ち)が、現れている。
自分はこの家がすきで、この家から眺める風景がすきだという気持ちが伝わってくる。
少なくとも私には、彼独特の渋面を崩し、彼がそう言っているのが、聞こえてくる。
そして
周次の息子は、この周次のアトリエのある家を壊さず守り、
その孫ですら、アトリエのあるこの古い古い家を、守っているのです。

 

 


ツツジの花のマクロ撮影

2021年04月29日 06時44分24秒 | 写真画像

3時に目が醒めてしまった。雨でポタリングにも行けないし,

朝食を作るには皆まだ寝ているし……。

まだ仕事モードにもならないし……。

で,明るくなってから,庭のツツジ摘んで,

部屋でマクロ撮影してみました。

この花びらの粒々は(たぶんスマホの画面だと

分からないかも),ひとつひとつが細胞?

 

今回の画像は,ニコンD5600の本体と,

AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G と,

Kenko AC CLOSE-UP No.5 の組み合わせでの

手持ち撮影でした。

 

 

 


消える      田添明美

2021年04月28日 07時31分48秒 | 「いたずら」田添明美

誰もいない日にかぎって
誰かがいるような気がする

ネジ回しの
掛け時計がとまっている
流し台の上には
水がたまっていて
音のない
影が歩きまわっている


ドードー鳥って絶滅鳥類だったの?

いきなり
ドードー鳥が現れても

そんなこと
私は知らないから
そこら辺をうろついていてくれるかな
今調べてみるから
「マスカリン諸島で発見される
 地上をよたよた歩き
 警戒心が薄く
 巣を地上に作る
 事により
 乱獲捕獲され
 絶滅した」だって。

ドードー鳥はよたよた歩きつゞけ
それは永遠につゞくように思われたが
やがて
(飛べなかったからなんだ!
    消えたのは)と叫び、
頭をぺこり下げると
消えた

知りたかったんだろうな
自分が現在において
消えたのか消えていないのか
確かめたかったんだろうな
聞きたかったんだろうな
誰かに、

どうも消えてしまったらしい自分のことを

部屋中に
鳥のにおいが充満している

 

          R3.4.19
                          *「」内ウィキペディア参照

             
                        


あかまんま/イヌタデ        田添明美

2021年04月27日 11時11分19秒 | 「いたずら」田添明美

こぼれ種がおちて
玄関脇に 二メートルほどの
あかまんまが立った

ある日
「野趣あふれる、お庭ですね」
とすました声を かけられた

その場所から
あかまんまは自然に 消え
庭の奥に
また こぼれ種がおちた

それから 三十年
毎年 種をおとし
おなじ場所に
花は 咲いた

今年
プランターふくめ
発芽した あかまんまを
五か所に 並ばせた、

庭中に
あかまんまが 立ち
庭中の
あかまんまが 咲く日がくる

「野趣あふれる、お家ですねえ」

あの人なら、
きっと いう


          R3.4.18

 

 

                  

                 山形市野草園のHPから。


小さな公園の白の藤棚

2021年04月27日 08時47分44秒 | 写真画像

昨日のポタリングで,西大泉5丁目の,まだ入ったことのない

住宅地の中の小さな公園。滑り台がひとつと砂場だけ。

掃除もきれにされていて,地域の住民が大切にしているのが

よく分かります。そこの白い花の藤棚が満開でした。

藤の花が輝いて見え,しばらく,この小さな完璧な空間に

浸っていました。

 

 


旅      田添明美

2021年04月26日 10時53分56秒 | 「いたずら」田添明美

義母を亡くして 三年間
私は作品を 一作も作れなかった

義母は
読み方を忘れ
書き方を忘れ
話せなくなった

私は その頃
話せなくなった自分に 義母を重ねていた

とある日
ある方が
「オレゴンの旅」という絵本の記事を載せた
ゴッホの麦畑を童画にしたような表紙に魅かれ
手に入れて読んだ

サーカスのピエロが サーカスの熊を森に放ちに
行くという話だった

私は それから詩が書けるようになった

出来ることなら
いつか
私も
だれかに そっと近寄り
さゝやいてみたい

旅にでませんか、


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捨てる       田添明美

2021年04月25日 10時59分18秒 | 「いたずら」田添明美

結婚祝いにいただいた小箪笥のなかに
裁縫嫌いだったのに
わたしの水色の裁縫箱と
むすめの白い裁縫箱がしまってあり
どちらかを捨てようと迷い
自分の裁縫箱を捨てた

五年三組大塚明美としるされた
三十センチの竹尺も迷わず捨てた

どんどん
整理していると
まるはだかに なりそうだ

とおい面差しを捨てる

残された空間
残された品々
    人々
これだけあれば
はたゝく日を迎えられる と見ている


            R3.4.17