K巨匠のいかんともなるブログ

K巨匠:英国から帰国後、さらに扱いづらくなった者の総称。
また常に紳士的ぶりつつも、現実には必ずしもその限りではない。

リーマンショックはなぜ起こったのか その②

2009-10-20 16:47:26 | 世界情勢
リーマンショックについての記事の第二回目です。
前の記事から少し時間が経ってしまいましたが、
あくまでも趣味の範囲で調べているだけなのでご容赦を。

さて、前回の記事では、リーマンショックの前提条件となる世界構造の転換が
90年代に起こったことを述べた。
つまり、米国は「強いドル」政策によってドルの価値を高め、
経常赤字以上のドルを海外から還流させることによって繁栄を謳歌した。
ドルを基軸通貨としてもつ米国ならではの経済手法といっていい。

しかし、この「信用」を武器にした繁栄もひずみを生じはじめる。
今回はリーマンショックが起こるまでのサブプライム問題に焦点を当てる。


サブプライム問題を一言でいうならば
「信用の低いサブプライムローンの焦げ付きを発端として、世界同時不況を引き起こした問題」
と言うことができる。

そこでまず考えるべきなのは、当然なぜサブプライムローンが現れたのかということである。

きっかけは90年代後半から21世紀初頭にかけてのITバブルの崩壊と9.11のショックだった。
これらの事件をきっかけに米国経済が急速に落ち込んだため、
FRBは政策金利を大きく引き下げた。

前回のべたように潤沢な資金が米国に滞留する中で、金利を引き下げたらどうなるか。
当然資金が行く先を探す。
そしてもっとも効率的な運用先として挙がったのが住宅市場であった。
中長期的にみれば米国の人口は上昇傾向にあり(移民の増加などによる)、
住宅需要の増加は必然であった。
言いかえれば、住宅市場は価格の下がるはずのない魅力的な投資先だったのだ。

そもそも住宅ローンには信用力の高いプライムローンと、信用力の低いサブプライムローンがあるが、
概して収入の少ないサブプライム層が住宅ローンを組めたのは、
住宅価値が上がる中で自己の資産価値が上がり、
結果としてプライムローンへの借り換えができたからだ。

そして住宅価値神話は「証券化」という手法によってより加熱していく。
まず、住宅ローン債権はレンダー(住宅ローン会社)から他の金融機関に転売される。
なぜ転売する必要があるのか。
レンダーからみれば早く資金を手にすることができ、新たな住宅ローンの融資先を探すことができる。
一方、転売された金融機関(投資銀行など)にしてみれば、
証券化を通じて投資家を集め、キャピタルゲインによって莫大な利益を手にできるのである。

しかし、証券化はあらゆる種類の債権を組み合わせてなされるため、
サブプライムローン自体がどれほどの危険度が高いものなのかが非常に分かりにくい状態になっていた。
それにもかかわらず、投資家たちは上がり続ける住宅価格の神話を信じ、住宅系証券を購入していたのである。

これは言いかえれば、住宅価格が上がり続けるという前提がなければ
成り立たない投資行動だということは一目瞭然である。
それが2005-2006あたりからの段階的な政策金利の利上げにより、住宅市場の過熱が収まっていった。
つまり、住宅需要が頭打ちになっていったのである。

それをきっかけとして、住宅ローン債権の価値の下落が起こり、
付随してサブプライム層が借り換えができなくなったことによる不良債権の増加が起こった。
この時期になると、サブプライムローンは住宅ローンの話だけではなかった。
つまり証券化によって、あらゆる金融機関がサブプライム関連の商品を大量に買っていて、
それらの価値が一気に暴落したのだ。
すなわち、サブプライムローンの問題はあらゆる金融機関、
ひいては実体経済に波及するほどに、金融市場の中に埋め込まれていたのである。


と、ここまでがサブプライム問題の一連の流れです。
では次回はサブプライム問題がいかに世界の信用収縮につながり、
結果としてリーマンショックを引き起こしたのかについて述べたいと思います。

(次に続く)

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