K巨匠のいかんともなるブログ

K巨匠:英国から帰国後、さらに扱いづらくなった者の総称。
また常に紳士的ぶりつつも、現実には必ずしもその限りではない。

リーマンショックはなぜ起こったのか その③

2009-10-27 02:38:52 | 世界情勢
こんばんは。リーマンショックについての記事の続きです。
ちなみにKは同事件について一通り調べ終わってしまい、若干この内容に飽き気味です笑
ですが、一応まとめということでリーマンショックについて最後の記事を書きます。


さて、前々回の記事でサブプライム問題が表面化するまでの段階を大雑把に追ってみた。
住宅価格の下落を発端に、サブプライム関連の証券を保持していたあらゆる金融機関の業績が急速に悪化したところまでは前回述べた通り。

そしてサブプライム関連の証券の暴落は、多くの投資家の不安心理をあおり、
健全といわれたプライムローン関連の証券価格の下落にも発展する。

なぜ不安心理がここまで広がったのか。

もちろん一つは経済学上の問題で、個々人が完全合理的に行動できない以上、
心理的な不安から証券売却が実態以上に進んでしまうというのはありうる。
しかし、今回に特徴的だったのが、証券化が複雑に進んでいて、
その中身について非常に不透明だったことがあるのではないかと思う。
そのため、不安の射程が「サブプライム」から「プライム」、ひいては「証券」全体に及び、
証券価格全体の暴落に発展した。
そして、その流れの中でリーマンブラザースは巨大損失を計上し、破たんする。
(*ここ相当端折ってます。もっと詳しくいうならBNPバリパ、ファニーメイ・フレディマック、AIGの問題にも触れなければならないかもしれませんが、まぁ経緯を追うだけの記事にはしたくないし、構造的にはサブプライム問題からの発生という点で違いはないので、ここでは触れないことにします。)

そして、今回最も言いたいことはその後の影響である。
(この点に関しても、題名の「なぜ~」という議題からは若干ずれますがご容赦を。)
このリーマンショックはマネー経済だけでなく、実体経済にも影響を与えることになる。
信用収縮による貸し渋りが起こったからだ。

周知の通り銀行にはBIS規制というものがあるために、
自己資本比率を一定以上に保っておかなければならない。
具体的にいえば、基本的に銀行は自己資本の12.5倍までしか貸出しができない。
ところが、リーマンショックによって不良債権が増加し、それを自己資本で補てんすれば、
不良債権の12.5倍分の貸し渋りが起こる。
このために、実体経済に影響が一気に及ぶこととなる。
これが、リーマンショック後に特に進んだ信用収縮の流れである。

その後、各国は一斉に公的資金注入などの財政出動などによって問題収拾を図ってきた。
その成果あってか、景気は若干持ち直してきたとの見方が強い。

日本経済に関しても、今日付けの日経の景気指標を見る限り、
悪化の速度は若干緩まっているように見える。
(二番底が来るかどうかは専門家ではないので分かりませんが。)
例えば、製品在庫も少しづつ減ってきているようだし、稼働率指数も回復気味。
機械受注や設備投資もわずかではあるが持ち直している模様。
消費も若干上向いているようだ。
もちろん予断を許さない状況であるのは間違いない。

また民主党政権になって公共投資を削減したことが、長期的には良好にしても、短期的にはどう出るか。
さらに内需拡大政策がうまくいくか。
例えば家計への刺激が貯蓄ではなく消費に向かうか。
依然として意見は分かれていて、何ともいえない。

日本では赤字国債に対し否定的な意見が多いが、K個人の素人意見を言わせてもらえば、
ある程度の赤字国債は許容すべきである。
景気が持ち直さなければ、長期的には累積国債額は上がってしまうからだ。
一方で長期金利がじわりと上がっていることは不安要素なので、
それとの兼ね合いはもちろん必要である。

最後にリーマンショックはなぜ起こったのかという本題について考えたい。
こう言われてなんと答えるだろうか。
サブプライム問題が起こったから?
住宅価格が加熱したから?
もしくは証券化が過度に進んだから?
おそらく構造的な観点から述べれば、どれも正しくない。
それは切っ掛けではあるが、構造的な要因ではないからだ。

それは第一回に述べたとおり、世界経済の構造にある。
つまり、米国が過度の経常赤字を世界から還流させ、
マネーで稼ぐ仕組みを作ったこと自体にある。
だから今後の注目点は、このマクロの仕組みが変わるか否かという点だろう。

特に注目すべきは米中関係だ。
中国は米国に対する貿易黒字を維持するために、元売りドル買い介入をしているが、
そのために今や米国債保有高で世界一となっている。
儲けたドルを米国債で運用しているからだ。
したがって、米国の求める元の切り上げはもろ刃の剣でもある。
なぜなら、元切り上げによって対米黒字(対中赤字)が目減りすれば、
ドルが米国に還流しなくなるからだ。

だから米国が中国に接近しているのも、
一番大きな要因はこの二大国が世界経済をけん引しているからである。
世界構造をこのままでいくのか、それとも変える方向に進むのか、
注視しなければならない。
また、その間に挟まれた日本も上手く外交戦略を練らないと、世界からおいていかれることになる。

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