わたしは六百山

サイゴンでの365日を書き直す 

プレースメントテスト ベトナム便り 39

2006年03月26日 | 日本語教師
こちらk-603.(写真は お母さんとシクロにのって・・・。女の子が手にしているのはポケモン)
入学希望者は、面接したあと、プレースメントテストを受けます。
面接での受け答えのようすで、どのレベルかがわかります。
日本に研修生で行っていた人は、話すことはできても、文法的におかしいことが多く、だいたい本人がそれを自覚して、日本語学校の門を叩きます。
Hさんは、すべて普通体(くせがつよい)で会話をする女性でした。
「先生も富士山へいったことが あるか。私も、行ったよ」
「そう、頂上までいきましたか。」
「頂上。何。・・・ああ、行かなかった」
まあ、こういった調子です。
「Hさん、とてもじょうずに日本語を話しますね。日本で、だれと話しましたか」
「ともだち だよ」
「Hさん、これから日本語の文法を勉強すると、もっと、いろいろな人と話ができますよ」

Hさんは、すぐに私のクラスに入りました。いまでは、ちょっと元気がなくなっているように見えます。なにしろ、学校では、99%は丁寧体を使いますから、Hさんの戸惑いが解ります。
それでも、殊勝についてきています。自分の話していた日本語が、ちょっと毛色の違ったものであることがわかって、いまは、塩菜の状態ですがそのうち元気になるでしょう。

ところが、先日、日本に行った事もないのに、ある程度のレベルになっていて、しかもかなり高度な表現ができる若者が来ました。
プレースメントテストの次の問題の解答には、驚きました。

よしださんは、くるま(    )うんてん(    )できます。

 
初級のレベルでしたら、「の」 と 「が」 を入れて、 「くるまのうんてんができます」 としますが、
この若者(タンさん)は、ちょっと考えてから、

よしださんは、くるま「を」うんてんできます。

としたのです(とても自然に)。

これは、運転します という動詞を知らないと出てこない答えです。(さらには、「します」の可能形が「できます」になることも)
どうしてこの動詞を知っているのでしょう。
聞いてみると、日本の自動車関係の会社に勤めていて、周りには30人ほどの日本人が一緒に働いている、ということでした。しかも、みんなよく、話しかけてくれる、というのです。
タンさんの話す日本語は、基本にのっとったものでした。
そして、わたしの話はほとんど理解でき、返事も丁寧でした。
でも、形容詞の過去表現が全然わからないのと、テ形が使えたり使えなかったりするので、「しっかり基礎からやってみますか」と聞いたら、「はい」との答えです。「ちょっと、タンさんには、おもしろくないです。でもいいですか」「いいです」
こうして、タンさんは、ちょうどテ形を終わろうとしているクラスに入りました。
形容詞は自分で勉強する、という約束で・・・。

日系の会社にいても、周囲の日本人が話しかけてくれなければ、目に見える上達というのはのぞめないようです。
ワンさんはそういうひとりです。
日本へ行くことが決まっているのですが、なかなか上達しないと、あせっています。
「どうしたら、日本語がじょうずになりますか」ワンさんは、そうメールで訴えてきます。
その会社はいまとてもいそがしくて、他人のことなどかまっていられない、というのが現状のようです。やる気はあっても、うまくならない。
ワンさんは「先生、日曜日に私と話してください」、といってきます。私はどんな学生でも、求めてきたら応じるつもりでいますから、いいですよ、と応えました。自治会の仕事も、防災の役員も、畑仕事も、植木の手入れも、どぶ掃除も犬の散歩も、何もない私はほとんど何でもOKです。
いま、ワンさんとは、書き方の特訓をメールを使ってやっています。これなら時間の制約があまりないので、継続可能なのです。ところが、私のほうは時間をとれるのですが、ワンさんの方は忙しいと見えて、返信が滞っています。  
やれやれ・・・。


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