習近平が狙う「米一極から多極化へ」(ビジネス社 遠藤誉著)②荀子
習主席は荀子を愛読しているという。荀子とは、性悪説の思想家で「出藍の誉」が一番有名な警句だろう。中国古典名言辞典にはかなりたくさんの句が採用されている。
私は性悪というのは、自分の周囲にいる多くの嫌がらせをしたりマウントをとったりする人間のことだとずーと今まで思ってきた。そんな人は周囲に今も昔も私の周りに一杯いる。荀子は、そういう人間に対してこう対応すればいいと教えてくれる人だと思っていた。しかし、どうも性悪はそういう身近に居るはなはだ迷惑な根性悪の人をいうのではないようである。
欲望を持っていることがいけないことで努力して乗り越えていかねばいけないとする説らしい。うまいものを食いたいとか温かくまたは涼しい家に住みたいとかをいけないこととされると些か淋しいが、根性悪のヒトが努力して根性悪を出さないようにしてくれるのならそれはそれでいいことかもしれない。いま改めて荀子を読むともちろん老荘とは大違いであるが、孔孟とあんまり変わらないように見える。お釈迦さんの様な何が何でも欲望を棄てよとはどこにも書いていないようで安心して座右の銘として使えそうな文言が並んでいる。
さてこの本によると、荀子の「兵不血刃」というコトバが重要とのことである。兵は刃に血を塗らずに攻めとるの意味で孫子の「戦わずして勝つ」と同じと言っている。わたしは少し違うと思う。荀子の「兵不血刃」は戦はおこすが血は流さないの意味で、水攻め兵糧攻めの様なのを想定しているのではないかと想像される。一方孫子の「戦わずして勝つ」はもっと広い意味でそもそも戦そのものを起こさないで宴会を開いて談笑のうちに敵を打ち負かしたり、漁夫の利を得るように策をめぐらす意味だと思う。
この本の帯にはこのままでは(台湾有事の際に)日本が危ないと書かれているが、本の中身は「兵不血刃」だから戦はないのではないかと主張しているように見える。その根拠に台湾にある半導体工場を戦火にさらすようなことはしないだろうと筆者は言っている。帯に書いてあることと本の中身が少々異なることはしばしばあることで、お見合いの釣書と本人が少々異なることと同じことである。
わたしは半導体工場に付け加えて中国は絶対に台湾に戦火を加えたりしない根拠に故宮博物館があることを付けくわえる。あれだけの宝物を戦火にさらすと後で世界中から何言われるか知れたもんでない。第一自分の宝物に戦火をさらすはずがない。あのアメリカでさえ、先の大戦で奈良京都の空爆はやらなかった。ドイツ軍はパリを破壊しなかった。きっと宴会を開いて談笑のうちに勝負をつけようとしていると希望的観測をしている。
ついでに思うことであるが、どうも東京は戦火を防ぐための美術品に弱いところがありそうである。これは日本の歴代統治者が感心にもあんまり贅沢をしなかったせいだと思う。自衛隊の予算の一万分の一でいいから大きな例えば歌麿や北斎美術館をたてて展示の仕方を工夫すると防衛にもなると思うがどうか。
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