本の感想

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映画ラストエンペラーを再びみる。

2023-09-06 23:57:15 | 日記

映画ラストエンペラーを再びみる。

 中国が改革開放を始めたばかりの頃、一世を風靡したこの映画がこんどはテレビで再放送になったのでもう一遍見た。当時はイタリア人の監督が作ると中国の皇帝はこういう感じになるのかと何とも言えない奇異な感想をもった。時代考証は完璧なんでしょうがなにかちょっと違うような感じは、今回もぬぐえなかった。清朝末期の皇帝だからというのではない、今の日本人が多分皇帝はこんな感じだろうと想像する像とあまりにずれがあるので戸惑ってしまう。その同じ戸惑いを今回も感じた。ちょうど本場のラーメンを食べたところ確かにダシは本場なんだが、麺がマカロニになっていて奇異な感じがするのである。

 初めてこの映画を見た時は、外国人にここまで故宮の内部の撮影を許すとは中国の開放政策は後戻りしない本物なんだとわたしは直感した。あれから四十何年してあの直感が正しかったことを確認するために今回もう一遍見たようなものである。初めて見た時も今回も甘粕大尉に坂本竜一さんはミスキャストだと思っている。甘粕はもっともっと闇深い人物でないといけない。巨大な組織の闇の部分に深く食い込んで自己と組織の闇の部分が混然一体になっている人格を演じないといけない。婦人に追いかけ回されるような美男子が演じてはいけない。(最近は組織と個人の在り方が劇的に薄くなって、甘粕の様な人物は見られなくなってきたように思う。演じられる人もいなくなってきたのではないか。)

 同じ映画を見て同じ感想を持つようでは、見る側(わたしのほう)に進歩がなかったことを暴露することになる。少しはわたしも進歩したかもしれないことがある。

皇帝溥儀の家庭教師にイギリス人R.F.ジョンストン(紫禁城の黄昏の著者)が雇われたことは前回も今回も驚きであった。アヘン戦争からいくらも経っていない頃である。なんというお人好しであるかと今回も思う。(尤もわが国もマッカーサーが日本を離れるとき小旗を振って別れを惜しんだのであるから、他人のことはとても言えない。)

 しかし、今回ジョンストン先生が中国を去った直後に溥儀は、日本軍と行動を共にし傀儡国家建国に力を貸す行動に出ることを発見した。明白な言葉はないけどジョンストン先生がうまく指導したのではないかと思わせるものがある。日本は傀儡国家を作ったばっかりに孤立してしまい太平洋戦争のタネをまいたのであるから、ジョンストン先生の作戦はうまくあったったとすべきであろう。

 そうしていきなり思い出した。最近中国の要人のご子息にイギリス人家庭教師がついていた。伝統的にイギリスはこの手を使う国なのか。凄いインテリジェントの国である。わが国も教養ある人材を養成し、他国の枢要な人物の子息に家庭教師を送り込めないものか。

 大歴史絵巻を見ながら、イギリスは多分今でも凄いインテリジェントの国だろうと想像した。