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岡部えつさん『枯骨の恋』

2009-06-21 20:14:03 | 読書
本書は、第三回『幽』怪談文学賞で

短編部門対象を受賞した短編集。

筆者にとっては初の単行本となります。


旧友の通夜に出るため、東京から戻った女性と

田舎で暮らし続けた女性が交わす会話が、思いもよらぬ結末につながる「棘の路」


職場でパワハラを受け、自ら命を絶った女性の実家を

同じ職場に勤める派遣社員が訪れる「アブレバチ」


―など、古典的な怪談のスタイルを踏襲しつつも、

現代に生きる女性の情念や孤独を巧みに融合した作品が並びます。


それぞれの読後感は、なかなか重いのですが

最後に収められた「メモリィ」は、

家族を見つめなおす姿を描いたファンタジー調の作品で読後感もさわやかです。

そのため、全体を通読し終えたときにも無用な重さは残りません。


個人的に印象深かったのは、表題作である『枯骨の恋』

クライマックスは怪談等ではおなじみの情景ですが

それがいまなお持ち続ける淫靡さと恐ろしさ

そして、それらを現代に蘇らせるストーリーが相まって、

忘れられない読書経験になりました。


近年、何がなんだかわからなくなった感のある「ホラー」において

正当な「怪談」の怖さや醍醐味を思い出させてくれるとともに

まぎれもなく現代を描いている本書。


怪談、ホラー好きだけでなく

一人でも多くの方に読んでいただきたい作品です。

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