高田宏著 『言葉の海へ』を読んで
大槻文彦という人が大きな辞書『大言海』を作った。何と、年齢が66歳から始めた。昭和3年に永眠したのが82歳。当時では長生きした方だ。自分の好きな事に没頭できる人は何歳になっても活力がある。 文彦は幼い時に、洋書調所で英語の勉強をした。その仕方は現代人の私にも参考になった。 どのようにするか。 朝五時に授業は始まる。終るのは夕方7時。一日、14時間の大半を英文の解読と輪講、そして、素読であった。この素読がカギだ。意味もわからなく、とにかく文字を口に出して、読むこと。何回も読んでいくうちに意味が何となくわかる時がくる。 普段、声に出すだけで、偏差値も上がるというデータもある。皆さん、参考にしてみては。 文彦には独特の信念があった。「文は実でなければならず、用であってはいけない」と。中世の公家が嫌いで、なぜなら、公卿は恋歌に熱中して、歌合せで負けたからと言って、憤死する人もいる。恋歌は亡国の兆しだ、と手厳しい。 そして、最も、大事な信念として、「およそ、事業はみだりに起こしてはいけない。思い定めて起こすなら、遂げずばやまじの精神で」と。だから、こんな大辞書が完成できたのかと、納得できた。