Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

環境安全工学 10 鉄道の安全

2006-12-17 | Mech Eng
 某大学の機械系の学科での「環境安全工学」の10回目の講義。
 概要は、以下のとおり。

0. 本日の参考書等
 この記事の最後に示した。

1. 鉄道事故の記憶
 1951年 4月24日 京浜線桜木町駅電車火災事故 死者106名 重傷者92名
 1962年 5月3日 常磐線三河島駅列車多重衝突事故 死者160名 重軽傷者325名
 1963年 11月9日 東海道線鶴見列車多重衝突事故 死者161名 重軽傷者120名
 1972年 11月6日 北陸線北陸トンネル列車火災事故 死者30名 負傷者714名
 1991年 5月14日 信楽高原鐵道列車正面衝突事故 死者42名 重軽傷者614名
 2000年 3月8日 営団地下鉄日比谷線列車脱線衝突事故 死者5名 負傷者64名
 2005年 4月25日 福知山線脱線転覆事故 死者107名 負傷者555

2. 身近な大規模システム:鉄道
 日本の旅客鉄道は世界でも有数の規模である。
 先進国の中ではダントツのトップの輸送量。
 鉄道は、都市生活には欠かせない交通システムである。
 # 朝のピーク時山手線は2.5分、中央線は2分間隔の運行
 また、都市間の移動手段としても重要なインフラである。
 特に、新幹線は、世界的にみても非常に高度で複雑な陸上交通システムである。
 一度に非常に多く人を輸送する。
 山手線:
   11両編成ラッシュ時の乗車率200%以上
   一両の定員は141-162名
   ラッシュ時は、3000名以上の乗客が乗る
 新幹線:
  2階建のMAXE4系
   8両編成で817名、16両編成で1634名の定員
   これが、240km/h で走る
  最速の500系
   16両編成で1,324名の定員
   これが、最高速300km/h、平均242.5km/hで走る。
   ひとたび事故が起きれば大惨事となる。


3. 鉄道事故と教訓
 1951年 4月24日 京浜線桜木町駅電車火災事故 死者106名 重傷者92名
 その当時、京浜線電車に使用していた「戦時設計」の63系の粗悪な構造が死傷者を多くしたとして、国電の安全対策強化の契機となった。

 1962年 5月3日 常磐線三河島駅列車多重衝突事故 死者160名 重軽傷者325名
 列車や設備、事後直後の保安対策が十分に行われなかった事が原因とされ、自動列車停止装置(ATS)の設置を推進する事になった。

 1963年 11月9日 東海道線鶴見列車多重衝突事故 死者161名 重軽傷者120名
 脱線原因を徹底的に調査・実験した結果、車両の問題・積載状況・線路状況・運転速度・加減速状況などが複雑に絡み合った競合脱線であるとされた。
 護輪軌条の追加設置、塗油器の設置、2軸貨車のリンク改良、車輪踏面の改良などにつながった。

 1969年 12月6日 寝台特急日本海北陸トンネル列車火災事故
 機関士はとっさにトンネル内での停止は危険だと判断し運転規則に逆ってトンネルを脱出して停車してから消防車の協力を得て消火作業を行い火元車両焼損だけで無事鎮火させた。
 ところが国鉄は、この犠牲者・負傷者ゼロをもたらした殊勲のトンネル脱出の判断を運転規則に反映させるのではなく「運転規則違反」だとして乗務員を処分し、前述の「北陸線北陸トンネル列車火災事故」の引き金となったといわれている。

 1972年 11月6日 北陸線北陸トンネル列車火災事故 死者30名 負傷者714名
 列車が「当時の規則」に基づいてトンネル内で停車した。
 この事故を教訓に、地下鉄や長大トンネルを走る車両の難燃化・不燃化の基準が改訂され、車両の防火対策が進められた。

 1991年 5月14日 信楽高原鐵道列車正面衝突事故 死者42名 重軽傷者614名
 事故の発端となった信楽駅の信号不具合の遠因は、信楽高原鐵道とJR西日本がそれぞれ別個に「無認可で行った信号制御の改造」と両社の意思疎通の欠如にあった。
 この事故の後、鉄道会社間相互で行われる直通運転に対して鉄道車両と運転方法の安全性など鉄道運転業務面の問題点が指摘されるようになった。

 2000年 3月8日 営団地下鉄日比谷線列車脱線衝突事故 死者5名 負傷者64名
 過去の参考となる脱線事故に関して、運輸省が全事業者に注意を促すことは無かったので営団でもチェックされなかった。
 この事故が法改正を促し、航空・鉄道事故調査委員会発足の契機にもなった。


4. 新幹線の事故
 2004年(平成16年)10月23日 上越新幹線脱線事故
  17時56分頃に新潟県中越地震が発生。
  震度は、6強から7の大地震。最大加速度は1500ガル。
  震源地に近い上越新幹線浦佐駅~長岡駅間を走行中だった
  東京発新潟行きとき325号(200系10両編成)のうち7・6号車を除く計8両が脱線した。
  地震発生当時、同列車は長岡駅への停車のため約200km/hに減速して走行中であったが、早期地震検知警報システム「ユレダス」による非常ブレーキが作動し、長岡駅の東京寄り約5kmの地点で停車した。
当該列車は、8両が脱線したものの軌道を大きく逸脱せず、逸脱した車両も上下線の間にある多雪地方特有の排雪溝にはまり込んだまま滑走したおかげで、横転や転覆を免れた。
  現場付近の高架橋の支柱の多くは損傷したが、豪雪による雪の重みに耐えられるように、支柱が頑強に作られていたため、結果的に地震による崩壊を免れることに繋がった。

  日本では、大規模システムの構築には、必ず地震対策が必要である。
  日本は世界有数の地震多発地域にある。
  「災害に時なし、場所なし、予告なし」

5. 新幹線の安全上の課題
 地震対策の課題

 高架橋、橋脚、トンネルの耐震設計の水準
  高架橋の強度
  高架橋の基礎方式
  活断層の位置
  トンネルの強度

 脱線防止策
  地震検知、警報装置の改良
  警報発信時間の短縮

 逸脱防止策
  脱線しても、車両が軌道から逸脱しないための対策
  車両ガイド
  脱線防止ガード

 トンネル強化
  活断層との交差地域の補強


 その他の問題点
 システム全体の老朽化対策は?

 軽量化された「のぞみ」の車両強度は、十分か?
  脱線した上越新幹線は、旧式の200系だった。

 270-300km/h で走行しているのにシートベルトも
  エアバッグもない?!

 トンネル火災の対策はどうなっているか?

 航空機のように乗客の氏名を特定しない発券のため、
  大きな事故があった場合に被害者を確認するのが難しい。


6. 宿題の提出


7. 参考書等

書籍

新幹線安全神話はこうしてつくられた

日刊工業新聞社

このアイテムの詳細を見る


巨大地震と高速鉄道―新潟県中越地震をふりかえって

山海堂

このアイテムの詳細を見る


図解・鉄道の科学

講談社

このアイテムの詳細を見る


崩壊する巨大システム

時事通信

このアイテムの詳細を見る



参考URL

http://ja.wikipedia.org/wiki/鉄道事故http://blog.goo.ne.jp/ganbaro433/m/200510
http://gonta13.at.infoseek.co.jp/newpage47.htm
http://www2.kanazawa-it.ac.jp/knl/nagase/comment19.html
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/special/shigaraki/shigaraki_index.html
http://www.chunichi.co.jp/wtok7/050427T1705.html
http://katoler.cocolog-nifty.com/marketing/cat694201/index.html
http://shippai.jst.go.jp/
http://ja.wikipedia.org/wiki/新幹線
http://ja.wikipedia.org/wiki/山手線
http://ja.wikipedia.org/wiki/JR東二本E231系電車
http://ja.wikipedia.org/wiki/新幹線E4系電車
http://ja.wikipedia.org/wiki/新幹線500系電車
http://www.toshiba.co.jp/tech/review/2003/09/58_09pdf/a02.pdf
http://www.hitachi.co.jp/Div/omika/product/koutsu/index.html
http://www.hitachi.co.jp/inspire/hakken/yellow/01_kotsu_system.html
http://techon.nikkeibp.co.jp
http://www.osaka-jma.go.jp/tokushima/handbook1/6-6.ht


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「環境安全工学」 9 海外の... | トップ | 環境安全工学 11 自動車交通... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Mech Eng」カテゴリの最新記事