--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

南極教室

2006-06-28 | 南極だより
日が最も長い季節なのに、明るいうちに帰れない毎日です。
忙しい忙しいと言っているうちは花。
それを超えると無口になります。
最近は少々大変なことがあっても根を上げなくなりました。
昭和基地ではもっと大変なことがたくさんあると思うと、どうにか踏ん張りが利くのです。
こんなところにも、南極の効用があるのですね。
おかげさまで頑張れています。
それでは、渡井さんからの南極だよりです。
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2006年6月27日(火)曇り後吹雪 和光鶴川小学校 南極教室

和光鶴川小学校5年生との南極教室を行った。
昨年10月に南極に来る前に授業を行ってきた学校&学年(当時は4年生)である。

昨日のトラブルを生かして今日も試行錯誤したが、IPでの接続は上手くいかなかったようで、結局ISDNに変更しての南極教室となった。
インターネットは会場に予定されていた教室までつながっているものの、ISDN回線は教室まできていないため、会場を会議室へと変更した上で行ったのである。
最悪の事態を想定してはいたが、尽力してくださった極地研の担当者の方々や鶴小の先生方、そして蓮池さん@LAN・インテッルサットには感謝の言葉もない。
出演一人では心細いので助っ人を山本さん@宙空にお願いした。

会話には1秒弱のラグがあるものの、特に気にせず会話することができるのがありがたい。
これもインテルサットのおかげである。

さて授業時間は40分ほど。
構成は3部からなる。
第一部は鶴小からの質問コーナー。
あらかじめ質問が決められ、こちら側に伝えられてきていた質問である。
第1の質問は「南極の今の気温はどのくらいですか。」
これは外に置いたカメラで写した温度計を石井さん@大型多目的アンテナに示していただいた。
このときの気温は-19℃ほど。
このところこれくらいの気温である。
この後、お湯に付けたタオルを持っていってもらったけれど、短い時間ではしっかりと固まらなかった。

第2の質問は「オーロラは1ヶ月に何回くらい見られるのですか。」
専門家の山本さんに答えていただいた。
基本的に毎日みることができるのだけれど、曇っていたりすると見えないのだ。

第3の質問は「そんなに長く南極にいて家に帰りたくないのですか。」
これには「日刊昭和」100号で特集されたアンケート結果を紹介した。
多くの人が充実した毎日を送っているようで、たいてい現状程度かもっといたいという認識だ。

第4の質問は「昭和基地での生活で一番怖いことは何ですか。」
これは僕が答える。
一つだけではないけれど怪我、海氷等のクレバスへの落下などだろうか。

第二部は昭和基地からのクイズコーナー。
全部で4問あるのだけれど、自分がこちらに来てあぁなるほど、と驚いたことをクイズにしてみた。

Q1 道路の脇に立っている青い旗はなんのしるし?
1.距離を示すしるし
2.電線が通っているしるし
3.道路がへこんでいるところのしるし

Q2 夏、海氷の上に出るとき靴の泥を落とすのはなぜ?
1.氷を溶けにくくするため
2.靴についた小さな生き物を海氷の上に持ち込まないようにするため
3.すべるから

Q3 基地の建物の窓でカーテンのないところはダンボールで覆っています。なぜ?
1.西日が入ってまぶしくないようにするため
2.少しでも建物の中を暖かくするため
3.オーロラ観測のじゃまにならないようにするため

1,2,3の中から選び手を挙げてもらったのだけれど、結構綺麗に分かれたようだ。
#正解は一番下に。

Q4として間違い探しコーナー。
ミッドウィンターに南極の他の基地に送るミッドウィンターカードと、元の写真との違いを見つけるクイズにした。

クイズの途中、山口さん@庶務と石井さんが気を利かせてくれて、濡れタオルを外カメラのところに持っていってくれていた。
タオルは見事海苔のようにまっ平らになって子供達も大喜び。
子供達が映像越しに凍ったタオルを折って折ってとせがむハプニングも。

第三部は昭和基地側としては最も恐れる自由質問時間。
どんな質問がでてくるかわからないので、きちんと答えられるかどうか不安なのだ。
中学校くらいだと質問がでなくて逆に困るとのことだが、鶴小5年生からの質問は活発。
5,6人が質問したところで時間切れとなった。
山本さんと交互に質問に答えることにしたが、まぁちゃんと答えられたのではないだろうか。

一番の心配は子供達が喜んで興味深く聞いてくれたかどうかということ。
子供達の声がよく聞こえたから大丈夫だとは思ってたけど、鶴小の先生から良かった旨の連絡を受けた時はほっとした。

でも鶴小側の映像が、間違い探しコーナーのあたりから写らなくなってしまって、子供達の姿が見えなかったのは残念ではある。
ISDN回線使用の時は時折あるとのこと。
画像品質劣化が大半で、映像断までいくことは珍しいようだが。

また今回はきちんとしたシナリオが間に合わなかった。
実際に話す方は臨場感があったりするので良いのだが、カメラや映像切り替えの面からいえばきちんとしたシナリオが欲しいとのことで誠に申し訳なかった。

今回南極教室を開催してみて良かったの一言に尽きる。
なにより子供達のあふれるような元気を感じることができたのが嬉しかったのだ。
昭和の隊員も元気ではあるけれど、小学校5年生のパワーには勝てないので。

#昭和基地側のようす

#画面に映った子どもたち

#ペンギンさんは子どもたちに大ウケけでした
今回の写真は通信の森さんが撮ってくださったものだとのこと。
掲載させていただき、ありがとうございます。


#昭和基地クイズの答え:2,1,3


-----本日の作業など-----
・和光鶴川小学校南極教室
・各種資料提出
・「日刊昭和」整理
・HVS Air濃度算出
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
・観測データバックアップ
・HVS充填容器真空引き
・野外安全講習会座学

<日の出日の入>
日の出  なし
日の入  なし
<気象情報6月27日>
平均気温-11.6℃
最高気温-6.9℃(1812) 最低気温-16.7℃(0458)
平均風速9.3m/s
最大平均風速22.8m/s風向NE(1730) 最大瞬間風速29.2m/s風向NE(1640)
日照時間 0.0時間

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子どもたちは、昨秋の南極の特別授業で渡井さんに会ってから、南極や観測隊に関わるニュースや新聞記事があると学校に持ってきていました。
今回の南極教室も、本当に南極にいる渡井さんと話ができるのか?とワクワクして、ものすごハイテンションでした。
子どもたちにとって、自分たちの知っている渡井さんを手がかりに知ることの方が、漠然と「南極」や「観測隊」を見せるよりずっと興味を持てるのだと感じています。
だからこそ「そんなに長く南極にいて家に帰りたくないのですか。」とか「昭和基地での生活で一番怖いことは何ですか。」という具体的で、気持ちにより添った質問が出るのだと思うのです。
これは、観測隊への質問というよりも渡井さんはどう思っているのだろう?という疑問だったのだと思われます。
その後の子どものつぶやきで「渡井さんはずっと南極にいたいのかな?」といっている子がいましたから。

昭和基地からのクイズでは、さすがに見当がつかないことが多かったようですが、答えの説明に大きく頷いていました。
子どもだけでなく、後ろで見ていた親たちはもっと大きく頷いていましたが。
一番盛り上がったのは、やはり凍り付いたぬれタオル。
「すげー!」「そんなに寒いのー??」「板みたい」「スルメイカみたい」「手袋しないで大丈夫なの?」(石井隊員が素手だったので)と声が上がっていました。
そのうちに、そのタオルは折れるのか?という声が上がり「折ってみてー!!」の大合唱に。
一回、二回、三回・・通り曲げ、石井隊員が「もう固くて折り曲げられません」と言ったときの子どもたちの表情は見てもらいたかったです。

「自由質問時間」は、最も面白かったです。
次々出る質問に、どう答えるのか私はとても興味がありました。
食べ物のことはずいぶん疑問に思ったらしく、同じような質問が続いたのですが、それにも工夫して答えてもらい、最後の「1年で1人1tの食料」には大人も子どもも驚いていました。
「恐怖の自由質問」ではあるかもしれないけれど、話を聞いているうちに出てくる疑問、その答えを聞いてまた思い浮かぶ新しい疑問、これこそが子どもたちの不思議を追いかけるスタイルなのです。
そのような、子どもたちの謎に答えていただけたのは本当にありがたかったです。
たくさん質問が出たとのことですが、あれでもいつもの5倍くらいは緊張していたようなので、緊張が解けていたら大変なことになっていたかもしれません。

子どもたちにとって未知の大陸「南極」
寒くて厳しいけれど、オーロラが舞う美しい世界で活躍する人がいる、1年以上も帰れないところなのに、もっと長くいたいという人がいる。
何よりも隊員さんたちが本当に楽しそうに話をして、パフォーマンスまでしてくれる。
今回のような経験は、子どもたちが未知の世界を知ることを楽しみ、新しい世界へ踏み出す原動力になることと思います。
南極観測だけでなく、いろいろな分野に夢を持って切り開いていく子どもたちが生まれると信じています。

オマケですが、子どもたちは、最後に出てきたペンギンさんたちに大喜びでした。
そして、「隊長さんが面白かったー!!」と言っている子が多かったです。
後ろから突然現れたからかもしれません。
神山隊長さま、飛び入り出演?ありがとうございました。

個人的なことを少し書くと、「渡井さんが動いているぅ~!!!」と、みょうに感動してしまいました。
11月28日に見送ってから今まで、動いている渡井さんを見たことはなかったので、なにやら、珍しいものでも見るような気持ちでした。

※この文章は学校を代表して書いているのではなく(私はこの企画の担当者ではなく、ただの後方支援者なのです)、あくまでも個人のブログ記事であるとご理解くださいませ。
関わってくださった方々へのお礼は、web上では控えさせていただきましたことも、合わせてご理解ください。

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4 コメント

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うらやましい^^; (南斗遊星)
2006-06-29 21:11:55
わぁ~、動いてる隊員さんを見られるなんていいなあ。でも、み・くりさんは後方支援だったということは直接話していないのかな?

だとすると、ちょっともったいないですね^^;
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うちは今日でした (47海保機関科)
2006-06-29 21:26:40
渡井さんの南極教室、横で見てましたが、大変参考になりました。うちは今日行いましたが、回線は昨日の接続試験共に超良好!おまけに会場も大盛り上がりでした。司会から、質問から、6年生が全てやったので、融通のきかないところもありましたが、結構しっかりした子供たちでした。残念だったのは、うちの3匹のガキども。せっかく話せるチャンスだったのに、照れてばかりで・・・。でも元気そうでよかったっす。
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南斗遊星さま (み・くり)
2006-06-29 23:28:55
そうなんです!

昭和基地の様子なんて、写真でしか見ていないので、動いているということがとても不思議な感じでした。

うわっ、しゃべってる!!ってびっくりしてしまうくらい。

でも、私は後方支援だけなので、話はしていないです。

帰ってくるまでそういう機会はないような気がします。

7月から行われる南極展のライブ中継も、さすがに子ども対象ですよねぇ?

南斗遊星さんのところも、近いうちにやりますよね?

お話しできるといいですね。
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47海保機関科さま (み・くり)
2006-06-29 23:45:04
ようこそお越しくださいました。

ありがとうございます。

今日の「南極教室」は大成功だったのですね!

3人のお子さんの姿を見ることができたということは、全校企画だったのでしょうか?

それは盛大に盛り上がったでしょうね!!

お子さんにとって、お父さんが南極で頑張っている姿は、きっと誇らしかったに違いありません。

かっこいい姿に、照れてしまった気持ち、私、なんだか分かる気がします。

考えてみると、観測隊の方々も、ご家族の映像を見る機会はあまりないのですよね?

47海保機関科さんにとっても、いいチャンスだったことが、よく分かりました!

越冬後半も、頑張ってください。

いつも応援しています。
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