--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

最終便

2007-02-08 | 南極だより
紅梅がきれいです。
寒い日はあるものの、今日は富士山がうっすらとしか見えませんでした。
空中の水分量が増えてくると、富士山がかすみ、春になります。
もうすぐ春です。
私は花粉症なので嫌だなぁと思うのですが、スギ花粉の飛ぶ季節が「春」というウキウキするような季節でなかったら、とても耐えられない・・と思うのです。
それでは渡井さんからの南極だよりです。
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2007年2月7日(水)曇り 最終便

昭和基地を離れるフライトの時刻は再三変わった。
この日の午前中は強風のためフライトがすべてキャンセルされたためだ。
またS17での撤収作業が長引いいたため、引き上げ便が一日順延されたというのもある。
最終的なヘリの時間は1615しらせ発となった。

昨晩の夕食の後、基地内を歩いて回った。
夏宿から19広場、観測棟、ゾル小屋、そして見晴らし。
早足で回れば30分ほどの行程であるが、気づけば2時間になろうとしていた。
47次隊で移設した防災倉庫(旧NHK棟)も一周してみる。
パネルの隙間を埋めるコーキングを指でなぞる。
見かけは若干悪いものの、厳しい冬にも耐えその役目をしっかりとこなしてきたようだ。

午前中は観測棟の片付けをした。
まだまだやっておけば良かったと思うところもあるがきりがない。
あとは48次隊員に任せることになる。

今日、Aヘリからはほとんどの観測系隊員が昭和基地を離れる。
1日の見送りの時と違って派手な見送りはない。
47次隊では澤柿さん@衛星受信が見送りにきてくれた。
が、同じ部門の48次隊員が多く見送りにきてくれる。
間際には近くで仕事をしていた橋本さん、大熊さん@土木も駆けつけてくれた。

ヘリに乗る。
眼下に東オングルを見下ろして見晴らし沖のしらせへとわずか2-3分のフライトだ。
先日に続き自然と涙が溢れ出る。
だが今日の涙は静かながら絶え間なく落ちる涙であった。



#紅白のバラの花が付いているのは、昭和基地からの郵便物。
昭和基地の郵便局は、電離層担当の隊員さんが局長を務めているのです。
観測50年目の郵便物が無事に日本に届きますように。


#一便前のフライト
見送っている渡井さんも、次の便では「しらせ」にもどる


-----2月7日本日の作業など-----
・観測棟片付け
・冷房品搬出

<日の出日の入>
日の出   03:15
日の入    21:52
<気象情報>
平均気温-0.4℃
最高気温2.4℃(1515) 最低気温-3.8℃(0142)
平均風速8.3m/s
最大平均風速17.3m/s風向E(0640) 最大瞬間風速23.2m/s風向E(0640)
日照時間 1.8時間

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昨日の南極だよりに、「・昭和基地一周」と書いてあり、どんな気持ちで回ったんだろうなぁと思っていました。
思い出深いひとつひとつに思いを巡らせながら歩いたことでしょう。

いつもなら1年を振り返っても印象深いいくつかの事しか思い出せないのに、この1年はいくらでも思い出すものがたくさんあるのです。
ごちゃごちゃとロビーに集まって過ごした2夏、2度の越冬交代式をした19広場、昨夏楽しそうに移設作業をしていた防災倉庫(旧NHK棟)も、47次夏隊を見送った見晴らし、管理棟も、居住棟も、そして渡井さんの仕事場だった観測棟も、本当なら自分の足で訪れてみたいけれど、それは一生掛けても叶わないこと。
でも、私の越冬は全部このブログに詰め込んだから、いいのです。
いつでも昭和基地に舞い戻れるくらい、たくさん書いたから、たくさんの人たちに支えられながらだけれど、私は私でやり切ったな、と思えるのです。
さ、私も最終便に乗って、昭和基地を後にしよう。

そう思って、私も昨夜ウェブカメラを見ながら最終便に乗りました(つもりになっただけです)。

今日の南極だよりを読むと、どうやら昭和基地から「しらせ」へ47次の隊員を運んだヘリは2便あるようです。
あれ?
そんなことないと思うんだけどな。
そうだとしたら、「しらせ」と昭和基地の往復便が2度ではなくて、昭和基地を経由した便だと思うのです。
ということで、渡井さんに尋ねたら、S17から昭和基地を経由して「しらせ」に戻った便があるとのこと。
ああ、そうだったのか。
それなら納得です。


#15:35 しらせを飛び立つヘリ
S17に向かったのだそう。



#15:59 S17から昭和基地へ向かうヘリ
右上の小さいのがたぶんヘリ



#16:11 この日に「しらせ」に移動する半分以上はこの便だったそう。

最終便より一便早いフライトで帰った隊員様、
昭和基地でのお仕事、お疲れさまでした。










わたくしごとですが、こっそり?記しておきたいと思います。

昨日は最終便をウェブカメラで見て、記事を二つあげて、いくつかのメールを書いて、布団に入ったのが1時半頃でした。
程なく携帯電話に転送されてきた渡井さんからのメールが届きました。
無事に昭和基地でのすべての任務が終わった報告と、思いがけず私へ「ありがとう」と書かれたものでした。
この一年、毎日「南極だより」を書くだけでも大変だったと思うのに、私は目の前のことにいっぱいいっぱいになって勝手に不安定になったり、イライラをぶつけたり、迷惑を掛け通しだったのです。
文句のひとつも言われても言い訳できないくらいの私に、昭和基地での任務をすべて終えて最初にくれた言葉が「ありがとう」だったのです。
越冬が終わってこんなに毎日涙もろくなるとは思わなかったけれど、さすがに号泣することになるとは思いませんでした。
隊員さんの越冬とは比較のしようもないけれど、47次隊を毎日綴った「私の越冬」を終えたのだという実感のこもった涙でした。

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4 コメント

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ありがとうございました (47海保機関科)
2007-02-09 00:55:23
明日からネットが通じなくなるようです。楽しませていただいて、本当にありがとうございました。今日2月8日はうちの嫁ハンの誕生日でした。あらかじめ電報を送っておきました。電報の最後に「南極から愛をこめて」と入れておきましたが、渡井さんからはそういう言葉はなかったですか?何はともあれ、1年以上の長期にわたり、お疲れ様でした。
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おなじく、ありがとうございました (ふくい)
2007-02-09 01:45:30
これまで、昭和基地と日本を結ぶ、架け橋になっていただき、ありがとうございました。

これから、しらせは長い長い航海が始まりますが、『しらせ便り』を楽しみにしています。
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47海保機関科さま (み・くり)
2007-02-09 22:48:15
こんばんは。まだネットは通じているのでしょうか?
私のほうこそ、1年間楽しませていただいて、ありがとうございました。
そしてお疲れさまでした。
昨日は奥さまのお誕生日だったのですね。
私からも、おめでとうございます!!
「南極から愛を込めて」素敵です!
渡井さんからですか?
私の誕生日は昭和基地にいる間に2度あったのですが、どちらも夏作業の最中で忘れられていました。後日「ごめーん、忘れてた」でした。
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ふくいさま (み・くり)
2007-02-09 22:51:59
こんにちは。
このブログ、日本との架け橋になれたでしょうか?
そうであればとっても嬉しいです。
多くの方々に励まされ、迷惑をかけながらだったので、私こそみなさまにお礼を言わなくてはならないのです。
ずいぶん悩んだのですが、今日からではなく「しらせ」が離岸してから「しらせ便り」にしたいと思います。
これからもよろしくお願いします。
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