--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

昭和基地離岸

2007-02-17 | 南極だより
山手線に乗ったら、しらせ離岸のニュースが車内映像で流れていました。
それを見た人が「今年は南極のニュースが多いよね」と話していました。
「そうなの、今年は南極観測が始まって50年目で、記者も2人入っているし・・・」と話しかけそうになってしまいます。
この1年以上、南極や観測隊のことを誰彼ともなく話しかけてしまいそうになる癖?は変わりませんでした。
一日中南極のことを話していられる仲間が欲しいです。
それでは、渡井さんからの47次隊最後の南極だよりをお届けします。
明日からは「しらせ便り」になります。
南極だよりが終わってしまうなんて寂しいです。
---------------------------------------------------------------
2007年2月16日(金)曇り 昭和基地離岸

前日から延期となった隊員の昭和基地からしらせへのピックアップは、早朝0500に開始されることになった。
この時間になったのは、風が弱まるのが早朝のこの時間であることと、日程を加味してのことだと思われる。
2月も中旬となった昭和基地付近では、曇りともなると夜にはかなり暗いので、夜間のフライトは危険なのだ。

早朝というのに47次隊員はほぼ全員が飛行甲板に揃って残留者を迎える。
ピックアップ2便のうち1便目で全員が揃う。
2便目では48次隊の設営系の隊員がやってくるので、引き続き出迎えた。

しらせは0630離岸した。
リッツォフォルム湾を抜けるのには、見晴らしからルンパとオングルカルベンの間を抜けて、弁天島西方を北上する航路を取るので、今朝弁天島南方から航行しそのまま停泊した進路を反転する必要がある。
輪を描くように見晴らし沖で反転。
見晴らしで見送る48次越冬隊員をみて昭和基地を離れる。

2月7日に昭和基地を離れ一週間ほども過ごしていると、ヘリで昭和基地を離れた時のような感慨は少ない。
愛着を持って基地と越冬隊員を見送る。
一方、48次夏隊員の声をかけるが返って来る言葉は少なめだ。
これは全ての任務を終えて帰る47次越冬隊と、これまで一緒にやってきてこれから越冬隊と別れなければならない48次夏隊との気持ちの違いだろうと気づく。

#見晴らしから大きく手を振る48次越冬隊と、しらせから手を振る48次夏隊。

#「ありがとう また会おう」は、48次越冬隊から、48次夏隊へのメッセージ。
47次越冬隊も一年前、そういう思いで47次夏隊を見送った。
あれから一年、その約束をもうすぐ果たす。


しらせは1300前に定着氷縁を離脱、1900前には氷縁を離脱した。
氷縁が近づくとおりしも低気圧の接近にともなって波高4mほどのうねりの中、一面を埋めた氷も大きく上下していることがわかる。
久々に見る黒い海。
水と氷の世界は線を引いたようにはっきりと分かれていた。


-----本日の作業など-----
・しらせ(弁天島南~見晴らし~定着氷離脱~氷縁離脱)
 コウテイペンギン、鯨散見
 見かける鳥の種類が異なってくる
・47次越冬隊、48次夏隊最終ピックアップ
・大気中CO2計、O3計観測開始
・しらせ艦内生活案内
・海水中pCO2計海水循環開始
 液面変動を一晩様子見
・しらせ観測隊係紹介
・読書(富士山測候所物語)
・47次越冬隊・48次夏隊しらせミーティング

<日の出日の入>
日の出   04:01
日の入    21:07
<気象情報>
平均気温0.1℃
最高気温1.8℃ 最低気温-1.4℃
平均風速6.5m/s
最大平均風速15.2m/s風向E 最大瞬間風速21.1m/s風向ENE
日照時間 0.5時間

気象庁webより
--------------------------------------------------------------
前日、延期になったピックアップは、翌日の早朝5時になると、何人かの隊員さんのウェブで知りました。
昭和基地の早朝5時は、日本では午前11時ですから、私は仕事の真っ最中です。
しかも、私の職種は昼時にとても忙しいのが常。
どうしても見たかった離岸だけれど、この時間帯ではどうにもなりません。
バタバタと仕事をしながら、心の中で見送りました。
昨日、渡井さんに送ったメールが一番そのときの気持ちを素直に書いているので、一部を紹介します。
++++++++++
金曜日ということもあって、強烈に忙しく、結局ヘリもしらせもほとんど見られませんでした。
でも、心の中では、今かな、今かな?と思いながら見送っていましたよ。
もう、しらせに移ってしばらくたつせいなのか、47次隊に関しては、石井さんと澤柿さん(※VLBI観測の引き継ぎのために最後まで昭和基地に残られていました)がしらせに戻り、これでようやく全員がそろった!!という喜びの方が大きく、離岸に関しては、思いのほか、気持ちよく送り出せた気がします。
とてもすがすがしく、そして、1年間の昭和基地の思い出が懐かしくて、なんだかあったかい、そんな気持ちでいます。
一方で、48次隊に関しては、昨年の離岸を思い出して、ぐっと来るものがあります。
越冬隊の離岸と、夏隊の離岸では感じ方が違うんだな、とあらためて思ったしだいです。
++++++++++
数日前までは、離岸の時はどうなってしまうのだろう?と思っていたのですが、実際にはとても穏やかな気持ちでした。
渡井さんも書いているように、任務をすべて終わらせて全員そろって帰途についているからなのかもしれません。
48夏隊の思いは、昨年の福井さんや高野さんのメールを、48越冬隊の思いは、昨年の渡井さんからの南極だよりを思い出して、こみ上げてくるものがあります。
一緒に過ごした期間は7月の隊員室開きから数えても8ヶ月、寝食を共にしたのはたった2ヶ月半だけれど、その時間はとても密度が濃くて、離岸の時には単に別れというよりも、仲間と引き裂かれるような夏隊と越冬隊の思いを感じたものでした。
夏隊福井さんのブログで、私にくださった当時のメールを紹介してくれています。
あの時は、46次隊の気持ちや思いは全く分からなかったのですが、今回はどちらの気持ちも少しだけ感じることができ、とても複雑な思いです。

「しらせ」はすでに氷縁を抜け、黒い海を航海しているとのこと。
立ち寄るところはあっても、もう、後戻りをすることはありません。

日本に帰ったら今までの仕事や業務に戻る人、持ち帰ったサンプルで分析や研究を進める人、若い人たちに発信、教授する人、新しい何かにチャレンジする人、いろいろな隊員さんがいらっしゃると思います。
1年の越冬を胸に、これからのことに思いをめぐらすには、1ヶ月の船旅というのはいいのかもしれないと思いました。
47次越冬隊のみなさま、48次夏隊のみなさまには、航海の無事をお祈りしております。

そして、これから昭和基地を1年間守り、観測をされる48次越冬隊35人の隊員のみなさま、どうぞ事故やケガにお気をつけて、充実した越冬生活を送ることができるよう、心から応援しています。

最新の画像もっと見る