--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

昭和基地最後の夜

2007-02-07 | 南極だより
先月、中国によって行われた人工衛星の破壊実験で、飛び散った破片(デブリというらしい)がALOS(地球観測衛星「だいち」)の軌道に南極上空で約1.4キロまで接近していることが分かったと報じられていました。
ニュースを読んで、南極でもないのに、いや、軌道だから南極でも見えるわけがないのに、思わず上を見上げてしまいました。
破片がぶつかったら「だいち」が壊れてしまう可能性が高いとのこと。
散らかった破片は制御も利かないし、片付けるわけにもいかないのですよね?
ぶつからないように祈るしかないのでしょうか?
それでは、渡井さんからの南極だよりです。
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2007年2月6日(火)晴れ 昭和基地最後の夜

明日には昭和基地を離れることになる。

当初は2月5日に離れる予定であったが、ヘリコプターの運用時間を削減するため、基地との間の便が限定され、その結果として昭和を離れる日が7日に順延されたのである。
これは幸いであった。

2月1日以降、1月分の観測データ整理や、持ち帰り用の大気試料サンプリングを行ってきた。
データ整理は徹夜で行えば1日強で終わるが、それはさすがにしんどい。
2月上旬にはしらせで持ち帰る大気サンプリングもしなくてはならないので、日程に余裕があればそれだけ大気採取のチャンスが増える。

当初の予定だと慌しく昭和を離れなければいけなかったのだが、少々余裕を持って帰途の準備をすることができた。
未完成だったマニュアルを再整備する時間も取れたし、散らかっていた観測棟の片付けも行うことができた。

47次隊の食事はしらせ支援の方が食事を作ってくれるので1800から、一方48次隊は夏作業がまだ残っているので1900からだ。
食事に1夏に行くときはコンクリートプラント前を通るのが近い。
ただし食事に向かう時間はまだ48次隊がプラントで作業している。
その前を、食事をとるためとはいえ、通るのはなんとも気が引ける。
わざわざ遠回りの道路沿いを通りたくなる。

夜には気象・気水圏合同の追い出し会が、48次運営のまほろバーで開かれた。
倉庫棟からバー、それから新発のトイレの間を歩くくらいだが、基地の雰囲気が異なっているのを感じる。
トイレに置いてあったグラビアアイドルの写真は、全部きれいさっぱりと撤去されていた。
その他にも数日前まで生活していた時とは明らかに異なる空気を感じる。

もう帰らなくてはいけない。


-----2月6日本日の作業など-----
・観測棟片付け
・データバックアップ
・オーロラレーダー設置支援
・昭和基地一周
・気象・気水合同追い出し会

<日の出日の入>
日の出   03:10
日の入    21:58
<気象情報>
平均気温-0.6℃
最高気温2.8℃(1652) 最低気温-4.2℃(0051)
平均風速5.5m/s
最大平均風速10.9m/s風向ENE(0930) 最大瞬間風速14.6m/s風向NE(0931)
日照時間 16.8時間

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越冬が終わっても、仕事ややっておきたいことがたくさんあって忙しそうでした。
真夜中まで観測棟にいることも当たり前だったようです。
残りの日々を忙しく過ごせるのは、ある意味幸せなのかもしれません。
暇な時間が多かったら、毎日うるうるしながらすごしてしまいそうだもの。
というのは私のことですけれど(仕事に熱中していないと、ときどき昭和基地に気持ちが飛んでしまうのです・・)。
47次残留組の昭和基地最後の日は、隊員さんごとに何回かに分けてあるのですが、渡井さんの発つ日はその様子を具体的に知ることができるので、感情移入も大きいのかもしれません。

観測隊は、その隊ごとに総入れ替えなので、観測や基地の維持については引き継ぎがあっても、生活はその隊の色が濃く出るのですね。
次第に・・ではなく、一気に基地内の雰囲気が変わるというのは、それぞれの隊が作っていくという雰囲気があって、いいなぁと思うのです。
もうすっかり48次隊が主になった管理棟で、最後のお別れをして、からだの奥に「帰らなくてはいけない」という思いがわき上がってきたのですね。

後ろ髪を引かれながらだけれど、私もそろそろ昭和基地をあとにする決心をしなければいけないのかもしれません。(私の場合は気持ちだけですが)

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