和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

【SS】ペットボトルロケット

2012-04-18 22:47:20 | 小説。
斜めに構えたペットボトルロケット、壁の向こうまで飛んでいけ。
精一杯の毒を乗せて、国境線を越えていけ。

筒のカーブにハサミを入れる。
てっぺんはできるだけ尖らせて。
格好ばかりのハネをつけて。
ロケット壱号、なんてありふれた名前を記入して。
それだけで、さあ、完成だ。
僕は、ふう、と満足の溜息を吐く。

何でこんなことをしているんだろう。
駄々をこねる子供のように。
或いは感情のない機械のように。
黙々と、淡々と、僕は工作を続ける。

思想はある。
あった、気がする。
何だかそれも曖昧で、やっぱり一周してどうでもよくなって。
僕はこのロケットに、何を積み込むつもりなのだろう?
胸の内側に燻る熱の行き場を探しているだけなのかもしれない。

悲しいとか。

悔しいとか。

情けないとか。

どっちかというとマイナスな感情が、渦を巻いて。
今にも爆発しそうなんだ。

だから、僕はロケットを作ろうと、そう思ったんだ。

どうせやるなら、とにかく派手にやろうぜ。
脳の隅の黒々したアレやコレやを全部詰め込んでやろうぜ。
そんな悪意の塊を、嗤いながら発射してやろうぜ。

――スリー。

――ツー。

――ワン。

――ゼロ。

さあ。
斜めに構えたペットボトルロケット、壁の向こうまで飛んでいけ。
打ち上げるだけの主張もないまま。
存在意義さえ危うげな、

儚い僕と、世界を壊せ。
コメント (6)
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