goo blog サービス終了のお知らせ 

(み)生活

ネットで調べてもいまいち自分にフィットしないあんなこと、こんなこと
浅く広く掘っていったらいろいろ出てきました

【あらすじ・感想】文庫版・『ガラスの仮面』第19巻【ネタバレばれ】

2015-02-14 22:22:15 | ガラスの・・・あらすじ
※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※


仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら

49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら

--------------------------------------------------
『ガラスの仮面』文庫版第19巻 ※第11章(途中から)(最後まで)

第11章 紫の影

「こい、ジェーン!!」
パーティーに供されていた骨付き肉を床に投げ、狼少女のマヤを挑発する真澄。
四つん這いになって真澄に歯向かうマヤ。
“あたしを人前で笑い者にする気なんだわ、なんて下劣なの”
マヤの中の闘志に火が付く。
乱雑に脱いだスーツの上着を振り回し、マヤをあおる真澄。
まるで本物の動物のようにその攻撃をかわすマヤ。
いつしかロビー内はこの二人のやり取りに注目し、
記者たちもフラッシュをたいてその様子をカメラに収める。
“わたしは、ジェーン”
狼少女ジェーンとして、真澄にとびかかるマヤを、真澄は乱暴に突き飛ばす。
テーブルに倒れこむマヤを助けようと、とっさに飛び出す桜小路を黒沼が邪魔するなとどやす。
さらに真澄は転がっていた肉を蹴り、それを階段の上に放り投げると、
「どうした、エサは上だぞ、それともシッポをまいてにげるか?おっとシッポはなかったな」
と嘲笑する。
マヤはそんな真澄の右手に力いっぱいかみつくと、手にしていたスーツを奪い、それを
両手で踏みつけた。
その姿はまさに狼そのもの・・・。
そしてそのままゆっくりと四つん這いで階段を上り、上の肉を咥えると、
その肉を階下まで運んだ。
「ゲームセットだな、チビちゃん」
そういう真澄に肉を投げつけると、
「これで気がすんだでしょ、あなたなんて最低だわ!大きらい!あなたなんて死んじゃえ!!」
と叫ぶと泣きながらその場を後にした。

たった一度だけのチャンス・・・・
マヤは見事、自らの演技力で注目を集めることに成功し、
『忘れられた荒野』の話題は一気に演劇界の中心に躍り出た。
だれももう、『イサドラ!』の話をする者はいない・・

誰もいない場所で一人、たばこをふかす真澄。
子どものころから本心を悟られまいと、人前ではいつも感情を抑えてきた。
人前で感情を見せる時、それはたいてい目的があっての事、
そんなことには慣れていたはずなのに、なぜか疲れる
マヤに言われた、大っ嫌いという言葉が離れない。
真澄はマヤにかまれた右手の傷からにじむ血を、ゆっくりとなめていた。

**
翌日の新聞では真澄とマヤのやりとりが大きく報じられ、
『忘れられた荒野』は一気に注目を浴びる。
問合せは殺到し、前売り券は飛ぶように売れだした。
そしてアカデミー芸術祭実行員会から、ぜひ舞台を見たいと連絡が入る。
それもこれもすべて、真澄がマヤに喧嘩を仕掛けたため・・・

屋台に真澄を呼び出した黒沼が、感謝の言葉を告げる。
こうなることを予想して、あんなことをしたのだろうと真澄に話す黒沼。
それをはぐらかす真澄。
真澄は確かにきっかけを作った。しかしあそこでマヤが完璧な狼少女を演じなければ
結局はだれも芝居に興味を持つことはなかっただろう。
すべてはあの子の実力だと語る真澄に、何をたくらんでいる?と訊く黒沼。
そんな黒沼に、あなたの事は経歴実績、過去の舞台の記録まですべて事細かに
データを集めていると告げる。
何故そんなことをしているのかという問いに、その答えは舞台を見てからと答える真澄。
「紅天女」の候補は役者だけではない・・・・
その言葉に黒沼は、自分が演出家として幻の名作に携われる可能性を感じ、
自分を高く買ってくれている真澄の期待を受け、やるだけの事をやる決意をする。

あんなにつらい思いをした『イサドラ!』舞台初日、
しかし結果として真澄とのやり取りが『忘れられた荒野』が注目を浴びるきっかけとなったことに、
マヤは微妙な気持ちを抱いていた。
約束の招待状、やはり直接渡す気に慣れないマヤは、水城にそれを託す。
そして水城に、真澄は結果を考えないで動く人間ではないと言われる。
その意味を図りかねるマヤ。しかし水城は理由は自分で考えなさいと告げ去って行った。
あの冷血漢がなぜ、私たちの為に・・・。

いよいよ舞台初日が近づき、黒沼の指導も熱を帯びる。
一本の脚本から何本もの芝居が生まれる可能性がある。
その可能性を引き出す、生きた舞台をやる為に・・・・

いよいよ明日は初日。紫のバラを届けてくれた聖に、紫のバラの人が初日に
来てくれることを聞いたマヤ。
バラを抱え、紫のバラの人に喜んでもらえるような芝居を一生懸命やることを誓う。
しかしそんな中、巨大台風が関東に迫っていた。

**
『忘れられた荒野』@雨月会館 初日
台風9号は依然風雨衰えず、今夜8時頃関東方面を通過する予報が出ている。
大雨注意報が発令され、海上付近は高波の危険もある為注意が必要ーーー
初日にはアカデミー芸術祭関係者も多数来場する予定となっていた、
しかし今夜8時というと芝居の真っ最中・・・
たとえ一人でも、観客がくれば幕は開ける、そう語る黒沼だったが、
風雨はどんどん激しくなる。

高速道路は封鎖され、首都圏のバス、電車は全面運休、
雨月会館へと続く道路も通行止めとなる。
車で劇場に向かっていた真澄は、傘もさせない嵐の中車を降り、歩いて向かう。

一人でも観客が来れば舞台はおこなう、そういった黒沼だったが、
上演時間を過ぎても、こんな天候ではさすがに誰一人訪れない。
紫のバラの人も、初日に来てくれると言っていたのに・・・。
「どうしたんです?みなさん 上演時間のはずですが」
劇場に現れた、びしょ濡れの真澄。
なぜこんな日に私たちの芝居に、と尋ねるマヤに、
君が招待してくれたのは今日だろう、おれは約束は守るといっただろう?
と言うとマヤに早く舞台にあがるよう促す。
「あたしきっとあなたに恥ずかしくない狼少女を演ってみせますから・・・!」
真澄に誓うと、マヤはジェーンになるために急ぎ舞台裏で準備を始める。

観客席には、真澄一人・・・・
真澄の為だけに演じる、狼少女ジェーン
あなたが最後までその席を動かないように、演じます、速水さん。
観ていてください。

舞台上のジェーンは、まさに狼。
身のこなしと、表情に現れる無の感情は、真澄をひきつけてやまない。
しかし途中、停電により舞台の照明が落ちる。
真っ暗闇に包まれる劇場、停電は周辺地域広範囲にわたり、
復旧の見込みは立たない。
残念ながらここで中止か・・・黒沼もあきらめかけながら
ひっぱり出してきた懐中電灯を舞台に向けた、その先には・・・
ジェーンとしてその場に立ち続けていたマヤの姿があった。
例え光があろうがなかろうが、舞台上ではマヤはジェーン。
そう、幕が下りるまでは、ジェーン。
懐中電灯の灯りだけを頼りに、舞台は再開する。

暴れるジェーンを必死に取り押さえ、鏡に映るその姿を認識させるスチュワート。
ジェーンが初めて、自分が人間のジェーンであることを認識する。
そして手にした青いスカーフに残るスチュワートの匂いに、
この人がスチュワートという人間であることを認識する。
狼から人間への変化の過程を、マヤは見事に演じていた。

スチュワートがジェーンの元を去って行った。
ジェーンに残されたのは、あの青いスカーフだけ。
そのスカーフを握りしめ、必死で教えられた言葉を口にするジェーン。
そして、もうそばにはいないスチュワートの名を叫び続ける。
そのマヤの演技に、真澄は改めて自分がどれほどこの少女に惹かれているのかを感じる。
舞台上でこんなに輝くことのできる少女。
それは、うらやましいとも思えるほどに。

終演ーーー
真澄の拍手の音が劇場に響く。
台風の中見に来てくれた真澄に、打ち上げに参加してくれと誘う黒沼。
最後まで席を立たず見てくれた真澄にお礼を伝えるマヤに、
君のジェーンはすばらしかった、最高だったと語る真澄。
顔を赤くしながらも、真澄の髪がまだ濡れていることに気付いたマヤは、
先ほど舞台上で使ってそのまま持っていた青いスカーフで
真澄の髪を拭く。
思わぬマヤの行動に、動揺する真澄。
そのスカーフを手にすると、ジェーンがこのスカーフについたスチュワートの匂いを
かぎながら人間に目覚めていくシーンは感動的だったと語った。
舞台衣装のままのマヤを見つけ、着替えるように促す桜小路。
その様子を見ていた真澄は、手にしていたスカーフをロビーの椅子に置くと、
一人嵐の中会場を後にした。
“おれの中の嵐も当分やみそうもないな・・・”
いつの間にか消えた真澄、この嵐の中を・・・・。
打ち上げの途中、黒沼のたばこの火が、真澄が残した青いスカーフに移り燃やしてしまう。
仕方がないと、翌日からは別の赤いスカーフを使うこととなった。

ロビーで、マヤは真澄の事ばかり考えていた。
どうして、あんなに憎んでいたはずのあの人の事を考えてしまうのだろう・・・・。

この日の出来事が、のちに二人の運命を大きく変えることになるとも知らずーーー

**
『忘れられた荒野』2日目は、実質初日といってもいい盛況だった。
およそアカデミー芸術祭参加作品でないとは思えない、演劇関係者の集合。
演劇協会理事長まで訪れた。
そしてその中に、真澄の見合い相手、鷹宮紫織の姿もあった。

紫織は心の中に得も言われぬ不安を抱いていた。
以前、真澄の伊豆の別荘を訪ねた紫織は、本棚の奥に隠されたアルバムを見つけた。
それは、以前マヤが紫のバラの人にとまとめた舞台写真だった。
そして昨日、あの台風の中、観劇のため劇場に向かったという真澄。
マヤの舞台を見る為に・・・・。
北島マヤ、あの少女はあなたにとって・・・・いったいなんなのですか?
注目を集める『忘れられた荒野』しかし、今日失敗すれば・・・3日目はない。

ジェーンとして舞台に上がるマヤ、遠吠えをする姿はまさに狼。
そしてマヤは気付く。
劇場の一番後ろに、千草が立っていることに。

『忘れられた荒野』は、そのジェーンの圧倒的な演技力がいかんなく発揮され、
観る者を全てその世界に引き込んだ。
芸術祭審査員や演劇協会会長も、惜しみない拍手を送る。
終わるや否や千草の姿を追いかけたマヤだったが、その姿はすでにない。

終演後、舞台の迫力に感動した藤美社長をはじめとする芸術祭審査員や
演劇協会関係者に対し、黒沼は5日後にもう一度舞台を見てほしいと告げる。
黒沼は、芝居の可能性に挑戦するという・・・。

翌日アカデミー芸術祭では、急きょ委員会が招集され、
『忘れられた荒野』はアカデミー芸術祭参加が承認された。
これもすべて、昨日の芝居の成功が、ひいてはあの『イサドラ!』の舞台初日で
真澄が仕掛けたあのケンカの結果が導いたもの。
マヤは以前水城が言った「真澄は結果を考えないで動く人間ではない」という
言葉を今更ながら思い出す。

評判を聞いて高まる観客たちは、その評判以上の舞台の熱気に魅了され、
口々に熱く感想を語り合いながら劇場を後にしていた。
そんなロビーでマヤは、以前駅のホームでであったおじさんと再会する。
まだジェーンが体から抜け切れないとぼーっとするマヤだったが、
以前缶ジュースをおごってくれたあのおじさんだと気付くと元気を取り戻す。
そしておじさんにほめてもらって少し気恥ずかしい気持ちを抱く。
マヤはまだ、その人物が速水英介であることを知らない。

マヤの舞台を見た後、紫織は真澄と訪れたレストランでその感想を語っていた。
初めて見るマヤの演技はまるで本物の狼のよう。
まさに天性の女優、真澄も女優として興味を持っているのだろうと、
何とか不安な心をおさめようとする紫織だったが、
真澄の「紅天女」に対する異常ともいえる執着心に、さらに不安が高まる。
真澄のとっての紅天女とは、そして女優・北島マヤとは一体・・・・。

舞台5日目、黒沼は演出方法を大胆に変更した。
客席を取り払い、舞台上にも観客を入れる。
劇場全体を舞台として、時に観客の真横に、時に足元を狼少女が駆けぬける。
その臨場感にまるで自分も芝居の一員になったかのような錯覚を感じ、引き込まれる。
更にその5日後、『忘れられた荒野』はコメディとして新たな芝居に生まれかわった。
その後も時に喜劇時に悲劇、あるいは人間社会を痛烈に皮肉るアンチテーゼや
ジェーンとスチュワートの純粋な恋物語など、まったく同じセリフなのに、
まったく違う舞台がそこにあった。
舞台は大盛況、収まりきらない観客が大挙して押し寄せ、芸術祭終了までのロングランが
決定した。

**
秘かに上京していた千草は、『紅天女』の上演に向けてスポンサー探しを
行っていたが、その情報を入手した真澄によってその話は潰されていた。
月影千草、あなたが相手でなければもうとっくに荒っぽい手を使ってでも
『紅天女』を入手していた。
真澄は是が非でも紅天女をこの手にするため、罠を仕掛けることにした。

演劇協会会長と会食をする千草は、なんとしても紅天女を上演したいと
その情熱を語る。
昔ながらの顔見知りである会長は、これまでも陰でいつも千草に力を貸していた。
『紅天女』を狙うのは大都芸能だけではない。
宝竹プロ、服部スター社、アクターズ企画、松浦興業社、内山芸能など
あまたの企業がその上演権を獲得しようと画策しているが、いずれも千草の思い通りの
上演が叶いそうな所ははい。
どうしても、自分の思うとおりの紅天女を上演したいと固執する千草に、理事長は、
紅天女の為にはどうするのが一番いいかを考えた方がいい、その方が尾崎一蓮もうかばれると
千草にある提案をする。

自分にはもう、紅天女を守る力はないのか、と肩を落とす千草、
その時、千草の心臓が悲鳴を上げた。
千草が倒れたと聞いて慌てて病院に駆けつけるマヤと亜弓。
緊急手術を受けるという千草の顔は青ざめて、今にも消えてしまいそうだ。
思わず駆け寄ろうとするマヤを、真澄がとどまらせる。
手術の成功の確率は30%、成功したとしても助かるかどうかは本人の体力しだい・・・。
病院には劇団つきかげや一角獣のメンバーも集まり、一様に手術の成功を祈るしかない。
亜弓も最後まで付き添っていたかったが、翌日早朝から映画の撮影のためロケに出る予定が
組まれていた。
今ここでもし、千草の身に何かあったら、「紅天女」はたたかわずして亜弓のものになってしまう。
亜弓は祈るような思いでその場を後にした。
何としても、マヤと競いたい・・・。

手術は深夜数時間にも及ぶ。
病室前の椅子に腰かけ、じっと手術が終わるのを待ち続けるマヤに、
真澄が飲み物を差し出す。
いったんは断るマヤだったが、強引に手渡されしぶしぶ口にする。
そしてそのあたたかさに、張りつめた体が癒されていくのを感じる。
自分の命の全部をかけてもいいくらい好きになれるものに気付かせてくれた千草、
そして「紅天女」・・・・
もし紅天女を演れたら、そのときこそ本物の女優になれる気がする・・・
そう語るマヤに、真澄はそれなら千草の手術の成功を祈るんだなと冷たく放つ。
あなたはなぜここにいるのか、というマヤの問いに、
紅天女の所有者の生死がかかっているからだと答えた真澄。
あなたの顔なんか見たくもないと飲み干したコーヒーの紙コップを投げつけるマヤ。
「悲しみよりは怒りの方がまだましだ」
と言い残し真澄は病院を後にした。

おれはあの少女をうらやましがっている
おれがあの少女にひかれているのはあの魂だ

手術はとりあえず終わった。あとは千草の体力しだい。
しかしその後一週間経っても、千草の意識は回復しなかった。
弱くなる呼吸、急激に悪化した容態に医者も覚悟したほうがいいと告げる。
病室に駆けつけるマヤ、亜弓。
千草の名を呼び続けるマヤ。しかし意識の奥深く、千草は一蓮の背中を追っていた。
“会いたかった、やっと会えたのね・・・・”
心電図がむなしく一線を描いた。

「このままではいやです、このまま紅天女になってしまうのは亜弓はいやです!」
千草の手を握り、亜弓は叫んだ。
子どものころからずっと紅天女を演りたいと思っていたこと
努力すれば何もできないことはないと思っていた自分が、
北島マヤと出会い、初めて敗北感を味わったこと
自分の努力を信じるため、自分自身を信じるため、
マヤと正々堂々戦ってそして紅天女を演じたい

意識の奥底でようやく一蓮と出会えた千草、しかし一蓮は千草の脇をすり抜け
また遠くへと行ってしまう。
“待って一蓮、待って・・・”
千草に一蓮の言葉が届く
“紅天女に永遠の生命を与えてくれ たのむ・・・”

自ら車を運転し駆けつけた真澄が病室に入ったその瞬間、
千草は死の淵からよみがえり、意識を回復した。

先ほど亜弓が病室で語ったことが信じられないマヤ。
あの亜弓が自分に、敗北感を抱いていたなんて。
「悪運の強い子だ」
真澄の言葉にかみつくマヤだったが、真澄は
今、芸術祭は『忘れられた荒野』の話題で持ちきりだと告げる。
「紅天女」が夢で終わらないためにも、千草の回復を祈れといいながら
真澄は病院を後にした。
「ともあれよかったなチビちゃん」

真澄の言うとおり、今や演劇界の話題は『忘れられた荒野』が独占。
特にマヤの演じる狼少女ジェーンの演技が抜きんでていた。

北島マヤーー
芝居をしているときのあのひたむきさ、そっくりだ
若い頃の月影千草と
真澄が執着するだけはある、おもしろい少女だ・・・
速水英介は紅天女へ思いを馳せる

こうして、熱狂のうちに『忘れられた荒野』そしてアカデミー芸術祭は終了した。

**
月影千草は病室で一つの決心をした。
そして置手紙を残すと、再び紅天女の故郷へ帰って行ったという。
その場所は今はまだ教えられない、
紅天女の資格を得た者だけに居所を明かすことになっている・・・
そう演劇協会理事長はマヤに告げた。

とうとう、アカデミー芸術祭受賞発表の日が近づいてきた。
マヤの演じた狼少女ジェーンは、
アカデミー芸術祭主演女優賞そして
全日本演劇協会最優秀演技賞にノミネートされた。
さらに桜小路や黒沼もそれぞれ賞にノミネートされている。
今まさに、「紅天女」への可能性が見えてきた。

そして受賞発表当日、
アカデミー芸術祭、これですべてが決まる。

二年前、月影千草が設定した紅天女への条件、
アカデミー芸術大賞もしくは全日本演劇協会最優秀演技賞を獲る事・・・
いつか「紅天女」を演りたい、その思いでこれまで演劇に向かってきた。
それも、今日ここで賞が取れなければすべてが終わる。
でも例え獲れなくても、自分の役者としての人生まで終わるわけではない。
私はお芝居が好き、結果がたとえどうなったとしても、私はこれからも
女優として生きていく。
あとは運命を待つだけ・・・・。
震えるマヤの背中を支える桜小路、そしてそのさらに後ろから
じっとマヤを見つめる真澄。
心の中に紫のバラを宿らせながら。

おれはこうやってみつめることしかできない
しかし結果がどうなろうとも、これからもずっと舞台に立ち続ける限り、
おれの中の紫のバラが枯れることはない・・・・

アカデミー芸術祭、いよいよ演劇部門の発表に移った。
舞台美術賞:『イサドラ!』大沢事務所制作
脚本賞:『イサドラ!』大沢事務所制作
特別優秀新人賞:『忘れられた荒野』スチュワート役桜小路優
演出賞:『忘れられた荒野』黒沼龍三
優秀作品賞:『忘れられた荒野』
主演男優賞:『リア王』宝竹社制作 丹波一生
主演女優賞:『イサドラ!』大沢事務所制作 円城寺まどか
アカデミー芸術大賞:『哀愁』劇団隼人 田上丈

全日本演劇協会最優秀演技賞
『忘れられた荒野』狼少女ジェーン役 北島マヤ

マヤは紅天女への1%の可能性をつかんだ

**
檀上で演劇協会理事長から紅天女に関する発表があった。
当初の発表通り、候補者である姫川亜弓、そして今日その資格を獲得した
北島マヤを競わせることになること
今後、「紅天女」は全日本演劇協会が責任を持って管理すること
全日本演劇協会が制作管理を行うということはすなわち、
劇場、興業社、演出家やその他配役などすべて協会の許可がないと
認められないということを意味する。
独占権を狙っていた他事務所が青ざめている中、大都芸能の真澄は
どこまでも落ち着いていた。
まるでこれが、自分の描いた地図通りと言わんばかりに。

「未来の紅天女に乾杯」
見事紅天女への夢をつないだマヤに真澄が近づいてきた。
千年からなる梅の木の精、絶世の美女紅天女、
君がやれるのか、亜弓と比べられるのを覚悟してせいぜい演技を磨きたまえと
嫌味を言いながらも、笑顔で去って行った真澄の背中に悪態をついているマヤの所へ、
紫のバラが届けられた。

“受賞おめでとうございます いよいよ「紅天女」ですね 頑張ってください
いつもあなたを見守っています
「忘れられた荒野」でのあなたの狼少女ジェーンはすてきでした
スチュワートの青いスカーフを握りしめながら人間にめざめていく場面は感動的でした 
あなたのファンより”

マヤの笑顔が凍りつく
青いスカーフは初日の公演しか使っていない。
あの日、劇場にいたのは、速水真澄ただ一人・・・・
紫のバラの人、青いスカーフ、そして速水真澄

“あなただったんですか、速水さん・・・・紫のバラの人・・・!!”

第20巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
ばれたーーーー、とうとうばれたーーーーー
紫織にマヤのアルバムもばれたし、マヤに紫のバラの人の正体もばれたーーーー
野良犬ジェーンの茶番を演って以降は、
もはややけくそと言わんばかりに、マヤに露骨に嫌味しか言わなくなっていた
真澄ですが、マヤもいつまでたっても本気で嫌いになれないのよね。

狼少女ジェーンメインなので紫織要素も少なめで、まだ精神安定できました。
次章はいよいよ紅天女への道!!風化水土のエチュード楽しみです!!
あああああ、でもその前に真澄が婚約しちゃうんだった。。。





コメントを投稿