(み)生活

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ep第42話【架空の話】49巻以降の話、想像してみた【勝手な話】

2016-11-04 16:35:01 | ガラスの・・・Fiction
ep第41話←                  →ep第43話
********************
「ふ~ん、まあ、悪くないんじゃないか」
黒沼のその言葉はかなりの褒め言葉だと
共演の桜小路優からは聞いていたが
それでも亜弓は納得したとは言い難いものを
感じていた。

紅天女ーーー一度はあきらめた幻の役を
再び演じることになった亜弓の胸中は
複雑だった。
これ以上はないという努力で立ち向かったその役は
北島マヤが勝ち取り、自身は完全なる敗北者となった。
その時に、全てふっきったはずだった、しかし。

「亜弓さんの紅天女が観たい」

他のだれでもない、紅天女の正式な継承者である
北島マヤがそれを熱望してきた。
マヤという人間の性格・考え方は熟知しているつもり、
その言葉に他意はないことなど分かっている、分かってはいるのだが
それでも敗れたものへの温情という慰めを抱かずにはいられなかった。

"だけど引き受けたのは私自身"

紅天女を受けると決めた時に、わだかまりは全て捨てた。
そしてただひたすら、紅天女を演じるということだけを考えてきた。
私は私の紅天女を・・・・
そう思い続けてきた、しかし・・・

「姫川亜弓の演じる紅天女なら、美しいに違いないわ」
「でも、北島マヤのあの胸を打つ演技と比べるとどうかしら?」
「見た目だけなら圧倒的に姫川亜弓でしょ」
「そんなこと、北島マヤの舞台を観た後にも言える?」

紅天女は、きれいなだけじゃつとまらない・・・・

見えない周囲の言葉の棘が、じわりじわりと亜弓を刺し貫くような気がする。
振り払うように稽古に集中すれど、その感覚はますます鋭敏になっていくようで
亜弓は焦りを感じていた。

「もうそれくらいにした方がいいんじゃない?亜弓さん」
一人居残り稽古をしていた亜弓に、桜小路が水を差しだした。
「もうみんな帰っちゃったし、黒沼先生も・・・」
プレッシャーを感じるのは分かるけど・・・という桜小路の言葉に
いらだつ気持ちが抑えきれない。
「そうね、あなたの中の永遠の魂の片割れは
 私ではないようですものね」
青ざめる桜小路に、こんなこと言いたかったわけではないのにと
後悔するがもう遅い。
「・・・・亜弓さんは亜弓さんだよ。」
「・・・・そうね、よく言われるわ」
「僕は亜弓さんの紅天女もとても素晴らしいと思うよ。」
桜小路の言葉もみじめな自分を慰めているようにしか受け取れない。
「表現力だけなら君の方がマヤちゃんより数段上かも・・・」
「もういい加減にしてっ!!」
気にするなといわれても気になる。
人は私に対して、すばらしい表現力とか圧倒的美しさなどといって褒めそやす。
けれどそれは、真実をそのまま演じるマヤには本質的に追いつきっこないと
言われているに等しい。
「・・・ごめん・・・」
「・・・・・・ごめんなさい。あなたに悪気はないことは分かっているんだけど
 今は私、何をいわれても言葉通り受け取れないようだわ」
努力では、追いつけない天才の影。
自分より先にその影がある、追いかけても追いかけても届かないその影の存在を
誰が理解してくれようか・・・・。


「こんなものじゃない・・・・」
12月中旬、『紅天女』公演場である大都劇場の舞台に
亜弓は立っていた。
大都劇場の稽古場に移ってきて半月、周囲の評価とはうらはらに
未だ亜弓は自分が納得する紅天女をつかめずにいた。
「せめてあの時の感覚が・・・・」

マヤと紅天女を争った2年前のあの試演。
稽古途中の事故により、視力を大幅に失っていたあの時、
亜弓はある種霊的な感覚ともいえる能力で、その場に梅の木の息吹を
感じていた。
見えないからこそ、感じたリアリティ。
しかし今の亜弓はその感覚が再現できずに苦しんでいた。
"見えなくなれば、あるいは・・・"
そう思い、タオルで目隠しをして演じてみるも
あの匂い立つ梅の里がそこに再現されることはなかった。

「だいぶ難航しているようだな」
タオルを外した亜弓が、一人呆然と舞台上に立ち尽くしているところへ
暗闇から近づいてくる男の声がした。
「・・・・速水社長」
「陣中見舞いを兼ねて稽古場をのぞいてみたが、亜弓くんはこっちだと
 きいたものでな」
随分と、悩んでいるようだが・・・という真澄の余裕ぶった様子が鼻につく。
「あいにくと私には魂の片割れと呼べるような人がいませんので・・・」
「はっはっは。亜弓くんともあろう者が、恋をしていないから恋の演技はできないと
 言うのかね」
亜弓の嫌味に気づいてないはずはない真澄の、予想外の
明るい返答に、亜弓は少し心が落ち着く気がした。
「速水社長は分かってらっしゃるんですね。私が紅天女をつかめていないこと」
「・・・そんなに簡単に体得できるものではないことは理解しているよ。」
これまで周囲の人間は、亜弓の演技を素晴らしいと評価するばかりで
亜弓だけがこれではないと空回りしているようだった。
「比べるな、気にするな、そういわれてその通りにできるようだったらこんな
 楽なことなどないからな」
実際は、比べられるし気にもする。
「この2年間で北島マヤが作り上げてきた紅天女とは、そういうものだ」
「後悔されてますか?私に紅天女を預けたこと」
「いや・・・」
禁煙の劇場で、手持無沙汰な様子の真澄は、亜弓から出た質問に
淡々と答えた。
「紅天女は誰でもやれる役じゃない。その資格があるのなら
 やり遂げるべきだと思っている、そして・・・
 姫川亜弓、君はその資格を持っているんだ」
その過程がいかに厳しいものであるかは、凡人の俺には到底理解しがたい
ことだがな、とまたもや意外なほどの柔和な顔を見せる。
「・・・・お願いがあります。」
「君のお願いは、聞くのが怖いな」
いつも突拍子もない・・とおどける真澄に、亜弓は真剣な顔で返す。
「来週のゲネを見て、判断して頂けませんか?
 私の紅天女が、上演するに値するかどうか」
「・・・・・」
「もし、私の紅天女が速水社長の承認を得られない場合は、
 私、降ります」
「なっ・・・・!俺は舞台の専門家でもなんでもないんだぞ」
「ですけど・・・誰よりもファンでしょう。
 北島マヤが演じる紅天女の。」
「・・・・!?」
「私は、マヤの紅天女を愛する人々を納得させる紅天女にならなければならない。
 そう、速水社長、私の舞台を観た後で、
 あなたが北島マヤの演技が見たいと思うのなら
 それは私が演じるべきではなかったということです。だから・・・・」
「しかし・・・」
しばらく無言のにらみ合いは続いた。
「誤解なさらないで。私弱気になって言っているわけではないのですよ」
この一週間で、私は必ず掴み取る。
「・・・・分かった」
言っておくが、引き受けた以上俺は生半可な評価はしないからな
真澄の低い声がことさら低く響き渡る。
「マヤには心づもりをしておくように伝えておこう」
君が降りたら、公演は北島マヤで行うーーーー
「準備期間などほとんどなくても構わないだろう」
紅天女をつかめない役者が舞台に立つよりはな・・・・

真澄の冷徹な言葉が、もしかしたら今の亜弓にとって
一番必要な言葉だったのかもしれない。

**
「あと、3日・・・か」
稽古終わりの車の中で、車窓をぼんやりながめながら
亜弓はぼそりと呟いた。
真澄に宣言した期限まであと3日
焦る気持ちと開き直る気持ちが交互に浮かび消えながら
未だつかんだとは言い難い状況にいた。
「たましいの・・・片割れ・・・・・」
曇りガラスに滲む都会のライトをぼんやりとながめながら
亜弓は誰にともなく言葉を発す。
「出会えばすぐに求めあい、相手を欲してやまぬ・・・」
そんな人、いるのだろうか・・・・
白いガラスをこすると、ふと何かに気づいた亜弓は
「ここで降りるわ」
と運転手に告げ、車を出た。
「まだやっている劇場があったのね・・・」
何となく気になって足を止めたその映画館では
亜弓が主演したフランス映画が上映されていた。

紅天女のオファーを受け、揺れる心を抱えながら
撮影に臨んだ映画
この作品で国際賞を獲ることを、自分の中の最低限の
条件にしていた。
マヤには告げず、自分の胸の内だけの決意。
映画のポスターに、撮影時の事が思い出される。
「・・・何してるかな、あの子」
ふと亜弓は、フランスで知り合った不思議な青年の事を
思い出した。
「気付けばいつも撮影現場にいたっけ」
名前は確か・・・ルーク。
監督の甥っ子だとかいう青年は、なんだかんだと
現場に出入りし、雑用のようなことをしていた。
聞けば特に正規のスタッフではないようだったが、監督に
頼み込んで現場見習いをしていたという、映画好きの
青年だった。
「あの子のせいで・・・・・」
少し苦く、そして今となっては懐かしい思い出だった。

「ねえ、他の事考えるくらいなら、この役降りてよ」
撮影序盤、突然亜弓の前でそう言い放った時の事を
今でも鮮明に覚えている。
少なくとも日本では姫川亜弓に対してこんな口をきく人間など
存在しない。
「映画に集中できないなんて、この役に失礼じゃない?」
0からやり直す、といいながらこれまでの自分を捨てきれずに
いた自分自身の甘さを突かれたような、そんな言葉だった。
しかもそれが単なる撮影のつかいっぱしりから言われたのだから
衝撃も大きい。
しかしその言葉に、ある意味で亜弓は紅天女の呪縛から
一時解放されたのも事実だった。

「・・・・・え?」
映画館の前で立ちすくんでいた亜弓の携帯が光った。
その名前が今まさに思い出していた人物からのものであることに驚く。

「・・・Allo」
「アローアユミ!今なにしてるの?」
"この役降りてよ"
あの時と全く同じ口調で、相手は話し始めた。
「何の用?わざわざフランスから電話なんて」
「別に用はないよ。ただなんとなくアユミの声がききたくなっただけ」
なにか問題でも?と言わんばかりにあっけらかんと声の主、
ルークは話す。
「別にいいけど・・・・」
フランスを発ってから数か月、それまで一度も電話をかけてきたことなど
ないのに、どうして今、このタイミングでこの人はかけてきたのだろう。
"まるで、私が役に集中できていないのを分かってるみたいに・・・・"
「・・・・ねえアユミ」
「なに?」
「・・・・ボクこれから、日本に行ってもいい?」


「本当に来るなんて・・」
突然の電話の翌日、本当にルークが亜弓の目の前に現れた。
呆れた・・・・という表情の亜弓のそっけない態度も気にならない様子で
興味深げに舞台を見回す。
「クレナイテンニョの舞台?」
「・・・・そうよ。そもそもあなた、紅天女知ってるの?」
知るわけないと高をくくっていた亜弓にルークは淡々と
「知ってるよ。僕らの映画そっちのけでアユミが考えていた舞台でしょ?」
と答えた。
「え?」
「正確には、後から聞いた・・・んだけどね。」
こっちのペースになど乗らないといった余裕ある表情でルークは亜弓の
視線をかわす。
なぜ突然、日本に来るなどといいだしたのだろう。
亜弓より2,3歳年下のこの青年は、フランスにいた時からいつも
何を考えているのか分からない所があった。
カメラマンのハミルは、ずけずけと人のテリトリーに入ってきながら
情熱的にアプローチしてくるのに対し、
ルークは年下ゆえかどこか甘えたような表情をみせながら
人の顔色などお構いなしに言いたい事をぶつけてくる。
恐い物知らずのフランス人青年が、興味があるのかないのか
劇場をキョロキョロと見回している姿を見ているうちに、
急に亜弓の頭の中に一つの思い付きが浮かんだ。
"なんだろう、なんだかよく分からないけれど・・・・"
思いついてしまったら、行動に移さずにいられない。
「ねえルーク、私と一緒に紅の里を見に行かない?」


「ここが、クレナイテンニョの生まれた街?」
「ええそうよ」
「ウメは咲いてないの?」
「今の時期はさすがに・・・。でも季節がきたら辺り一面
 紅い波のように広がっているのよ」
突然現れたルークの姿は、亜弓を紅天女のふる里に向かわせた。
何もないと分かっていても、何かを求め、
すがるようにしてたどり着いた12月の紅天女の里は
生命が全ての活動を停止したような
静まり返った枯野が広がっている。

「この場所で、私は紅天女とは何かを教えられたの」
「ふ~ん、いったいどんなことをしたの?」
寒そうにコートのジャケットに両手をつっこみながら
ルークが尋ねる。
「風火水土・・・」
「ふーかすい・・・、ねえそれってなに?」
知らない日本語に戸惑うルークに、その意味を説明すると
「・・・・それが一体どういう意味があるの?」
と素直に聞かれてしまった。
「・・・・分からないわ。」
そうだ、私は分からない。
あの時私は風を感じた
あの時私は火になろうとした
あの時私は水の中で生きた
あの時私は土を慈しんだ
そして私は、私の紅天女は・・・・

「ねえ、クレナイテンニョってどういう話?」
ルークの質問に、そうか彼は舞台を観たことがなかったんだと
気付いた。
よく分からないままにこんな山奥にまで連れてきて
随分と無茶な事をしてしまったと亜弓は思う。

「紅天女は、梅の木の精なの」
「精?精霊?」
「そうね。紅天女は梅の木なの。梅の木でありながら
 人間を愛してしまうの。それも、自分を切り倒そうとしている人を」
ルークには細かいことを説明しても分からない。
日常会話に不自由はないとはいえ、亜弓のフランス語も
紅天女を伝えきるには限界がある。
「梅の木?木の幹がしゃべるの?」
ルークの素直な疑問に大きな口が浮かぶ大木のイメージが
浮かんだ亜弓は、思わず吹き出してしまった。
「・・・いいえ、ルーク。紅天女は梅の里を守る巫女でもあるの。
 ちゃんと女性の姿をしているわ」
「へえ、要するに梅の木の女の子が男の子と恋に落ちて
 その男の子のために自分の命を落とす話なんだね?」
「そんな簡単な話じゃ・・・・」
ルークのあっけらかんとした紅天女評にあきれた亜弓だったが
結局のところそういうことなのかもしれないと思い直した。
「そうね・・・・そうなのかもね」
もしかしたら、私は深い意味を求めすぎていたのかもしれない。
真理はもっと単純で、だからこそ奥深く広がるのかもしれない。
「私は・・・一真が愛おしい。 愛おしい一真のためなら・・・・
 一真と一緒にいられるのなら・・・・」

橋の落ちた崖、その先に広がる漆黒の闇に向かって
おもむろに立ち上がった亜弓は、一言一言をかみしめるように
白い息を言葉に変えて宙に放ちはじめた。


"あの日・・・・・初めて谷でおまえをみたとき・・・阿古夜にはすぐにわかったのじゃ"
"おまえさまはもうひとりのわたし わたしはもうひとりのおまえさま"
"離れることなどできませぬ 永遠の生命あるかぎり・・・"


「梅の木ってきれいだね」
いつの間にか後ろにしゃがんで亜弓の様子を見ていたルークが声をかけた。
「え?」
「梅の木って、ボク見たことなかったけど、とってもきれいなんだね」
「・・・・今はどこにも咲いてないわよ」
「うん。でも見えたよ。」
だってアユミ今、梅の木だったでしょ?
ルークは、まるで晴れた空をみて青いねというようにさも当たり前の顔で言った。

"日本人でも難しいセリフを、しかも衣裳もなにも付けないまま
 最低限の身振りでしか演じていないのに・・・"
亜弓は宙に伸ばしていた手をそっと引き寄せ、
胸元でギュッと握りしめた。
これが、表現力ーーーー
ない物をあるかのごとく見せられる技術
マヤに追いつきたくて、必死になって身に付けた
私の武器

「私は褒められていたのね・・・」
小さく呟いた亜弓の言葉は、ルークには理解できないようだった。
「ありがとうルーク。行きましょう。」
「次はどこへ?」
「帰るのよ」
「え~~~~!!今ここにきたばかりじゃないか!」
「ふふふ。ごめんなさい。でもその代わり・・・」
あなたに満開の梅の里を見せてあげるわ、東京で。
その時初めて、亜弓は笑った。

**
「いかがでしたか?」
ゲネプロ終了後、亜弓は静かに真澄の元に近づいた。
舞台上では演出家の黒沼がアシスタントや技術スタッフに事細かな指示を
出している。

"私の紅天女が、上演するに値するかどうか、判断して下さい"

亜弓が真澄に言ってからちょうど一週間、さきほどまで紅天女だった亜弓は
静かにその審判の時を待った。
一週間前まであんなにいらだっていた気持ちが嘘のように
今日の心は穏やかだった。
情熱的な高揚感があるわけでもなく
悲観的な絶望感が支配しているわけでもなく
ただただ、亜弓の心は無だった。
「ふむ・・・・」
顎に手をあて、何やら思案しているような真澄は次の瞬間
まっすぐに亜弓の目を見ると答えた。
「・・・・・マヤに会いたいと思うよ。」
「・・・・・そうですか。」
その答えは、亜弓の紅天女がマヤに及ばなかったことを意味している。
「興行主である速水社長には、ご迷惑をお掛けすることになりそうですね」
上演直前での主役交代、既に掲示されているポスター差替や
場合によってはチケットの払い戻しなど、年末のこの時期に余計な仕事が増えてしまう。
なにより舞台の仲間たちには負担が大きくかかる事だろう。
「君は何か誤解しているようだが・・・・」
真澄が言葉をかけた。
「俺は、マヤに会いたいと言ったんだ。マヤの紅天女が見たいと言ったわけじゃない。」
「え?」
「君の舞台は自分の心の中の魂の片割れを思い出させてくれるらしい」
なにも役者自身が、その運命の相手を演じる必要はない。
見ている観客が、それぞれの心の中の一真や阿古夜を想像できること
それもりっぱな感覚の再現
「と、いうことは・・・・」
「マヤの紅天女が、唯一無二の絶対価値を知らしめるものならば、
 君の紅天女は、多くの大衆の心の中に紅天女を生み出す魅力があるのかもしれないな」
初日を楽しみにしているよ
亜弓の肩を軽くたたいて、真澄はその場を去っていった。
「おっと・・・・いけない。」
振り返った真澄は少し照れたように小さく
「さっきの感想は、ここだけの秘密にしておいてくれるかな」
と囁いた。

「じゃあ、ボクそろそろフランスに帰るね」
自分なりの紅天女を体得した余韻に浸っている亜弓に
突然ルークがそう話しかけた。
「・・・・・・え?今から?」
「うん。もう僕の用事は終わったみたいだし。」
「用事って、あなた一体何しに来たの?」
「だから言ったじゃない?僕はアユミに会いたくて来たんだって」
そんなこと一言も言っていない、そう反論しかけた亜弓は
その言葉を飲んで一言だけ、答えた。
「ありがとう。ルーク」
確かにルークは、したいと思ったことしかしないし
したいと思ったら必ずする人だ。
「次は、フランスで」
差し出された手を、亜弓はしっかりと握り返した。

一人残された劇場で、亜弓は自分の魂が真円になっていくような気がした。


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~~~~解説・言い訳~~~~~~~~
亜弓さんが紅天女を身につけるまでの苦悩は当然
あるはずで、その辺りを書いたのが今話です。

またもや架空キャラを創造してしまいましてすみません。
ハミルさんどないなっとんねん、と突っ込みたい気持ちは山々ながらつい。
亜弓さん話を書くのは結構楽しくて好きなのですが
それはもしかしたらまだ亜弓さんサイドにLOVEの余白が
残されているかもしれません。
マヤの話は、どうやったって真澄しか登場しようがないし・・・・。
ハッピーエンドもいいけれど、盛り上がりにはかけるし・・・・
なんて不謹慎なことを。
(でもしれっと真澄にのろ気させる)
ちなみにこの頃裏ではマヤと追走劇を繰り広げて
へろへろの真澄なはず・・・・タフね。

いつか、亜弓とルー君のミニエピソードも支線で書きたいな~。
~~~~~