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散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
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小さな煙突掃除屋さん ~ その1 作曲家

2014-07-20 06:07:22 | 日記
2014年7月20日(日)
 12の小品からなるオムニバスである。
 煙突掃除屋さん ~ この仕事自体、僕らの文化圏にはないものだが、ルック=パオケ言うところの「辺縁(Rand)」に生きる人々の、好個の象徴と思われる。
 常に屋根の上で働き、そこを訪れる人々や動物と出会いを結ぶ。
 出会いの相手は、順に、

 der Liedermacher
 die Störche
 die Großmutter
 die Kirchturmhennen
 der schöne Vogel
 (Der kleine Schornsteinfeger bekommt einen Orden.)
 (Der kleine Schornsteinfeger bringt Glück.)
 die Vögel
 das Äffchen
 der Regenbogen
 das Kätzchen
 der Fremde

 結びは、いみじくも Fremde だ。
 第一話はこんな具合.

***

 冬が過ぎたので、小さな煙突掃除屋さんはそこらの屋根をきれいに掃除して回りました。ほこりや汚れは好きではないのです。そしてあたりがすっかりきれいになると、屋根の上を室内履きのスリッパで歩くのでした。
 ですから、ある日、屋根の上が汚い足跡だらけになっているのを見つけた時には、それはびっくりしたのです。誰かが上がってきたに違いない、と煙突掃除屋さんは考え、その誰かを探しに出かけました。長いこと探し回った末、ようやく屋根の上に男の人がいるのを見つけました。その人は髭をたくわえ、静かに座っていました。
 「こんにちは」と煙突掃除屋さんは挨拶しました。
 「君、そこらじゅうをすっかり汚しちゃいましたね。」
 「しっ、静かに!」と男の人は言いました。
 「僕は音楽家なんです。」
 そこで煙突掃除屋さんは3分ほど静かにしていましたが、やがて我慢できなくなりました。
 「ここで何をしているんですか?」
 そう訊ねて、男の人の隣に腰をおろしました。
 「音楽を、聞き取ってるんです。」と男の人は説明しました。
 「つまり僕は、作曲家なんですよ。」
 そして彼は笛を唇にあて、曲を吹いて聞かせました。鳥がたくさん集まって来て、耳を澄ましています。
 「君、御存知ですか?」と作曲家が言いました。
 「音楽はどこにでもあるんです。ただ聞きさえすればいいんです。でも、地上は騒がしいから聞こえないんだ。だから僕は、屋根の上まで上がってきたってわけです。」
 「お越しいただいて、とても嬉しいです。」と煙突掃除屋さんは言いました。
 「汚い靴を履いて上がってきちゃったとしてもですね。」
 「聞いて!」と作曲家が囁きました。
 そして彼は煙突掃除屋さんにバイオリンを弾いて聞かせてくれました。
 二人は一日中一緒にいて、作曲家はいろんな楽器を演奏しました。ギターで爪弾く歌はとっても楽しく、二人は笑わずにいられませんでした。ハーモニカの調べには夢見心地になり、トランペットの響きは悲しくて不意に涙が流れました。二人はお互いの涙をふき合って、すっかりうちとけたのでした。
 まもなく小さな煙突掃除屋さんは、作曲家が何も演奏していなくても音楽が聞こえるようになりました。
 夜になって屋根の上には真ん丸なお月さまが浮かび、二人はお別れの挨拶を交わしました。
 「君に小さなメロディーをプレゼントしよう」と作曲家が言いました。
 「聞こえるかい?」
 小さな煙突掃除屋さんは目を閉じて、聞こえてくる音楽に耳を澄ましました。かすかな夜風が起き、フクロウがホウホウ鳴き、星がきらきら光り、木の葉がさらさら音をたてました。
 「ありがとう」と煙突掃除屋さんは言いました。
 そしてお返しに、自分のスリッパを脱いで音楽家にプレゼントしました。
 「この次は、これを履いてきてね。」
 作曲家は、そうすると約束しました。

 

 音楽を「聞き取る」は auffangen、
 「うちとける」としたのは verstehen、
 至るところに裏切りの種は転がっている。

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