散日拾遺

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「雑役のおばさん」に一票

2021-06-02 08:22:32 | 読書メモ
2021年6月2日(水)

 追伸:
 書くだけ書いてから助言を求めようと思っていたら、それより早くE君からコメントが入りました。

***

 Женшияа は Женщина の転記ミスではないでしょうか?
 работницей、これはたぶん女性単数造格ですね。「労働者になる/労働者として」と訳されるようなケースで Работница(労働者 女性単数主格)が変化するのです。前文の Чем というのが「何に、何として」という意味の что の造格ですから、それに符合しています。
 простой は形容詞で男性主格や女性造格を修飾しますが、意味は「単純な/平凡な/なんということはない」ということですから、この時代なら「雑役のおばさん」のほうが女工さんよりぴったりのような気がします。まだロシアにさほど工場はなかったでしょうから。

***

 こういう指摘は嬉しく、ありがたいものです。
 まず「転記ミス」の件、これは以前E君が送ってくれたロシア語原文をコピペしたものなので、資料を見てもらったところ、
 「うーん、ミスプリだと思いますがよくわかりません」とのこと。
 辞書を確認しても женшияа という言葉はなく、御指摘通り женщина(女、女性) の誤記なのでしょう。

 「雑役のおばさん」問題について、「アレクサンドル3世の肝いりで、この時期に工場が作られたってことは?」と食い下がったら、あらためて下記のコメントをいただきました。

 「確かに『雑役のおばさん』ならそれなりのロシア語が別にありますし、工場もあるにはあったでしょうから『女工さん』かもしれません。でも、当時「ごく普通の」という形容詞がつくほど女工さんが女性の一般的な仕事だったのかなとも思い、少し不自然な気がします。」

 ということで「雑役のおばさん」にE君から一票いただいたうえ、真相については継続検討ということになりました。
 ところでロシア語には「造格」というものがあるんですね。ラテン語の「奪格」を知って以来の感動です。ネット情報によれば「造格」は「具格」とも呼ばれ、行為の道具・手段を表す格として複雑多彩な用法をもち、主格に次いでよく用いられるとあります。ポーランド語など他のスラヴ語にも存在するとか。
 バベルの塔から散らされた先はまことに多様、厄介ながら楽しいことです。



Ω

 

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