散日拾遺

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ヤコブの梯子 ~ 何と散文的な

2015-07-20 09:36:37 | 日記

2015年7月20日(日)

 いつになく切り立った虹の脚を見て、ヤコブの梯子を思い浮かべたこと、それにヘブル語ネタからの連想。

 このイメージのひとつの面白さは、天使という超常的な存在が、梯子/階段という散文的なものを使って上り下りするところにある。すごいミスマッチだ。原語はほんとうに「梯子」なのかな。

 「ヤコブはベエル・シェバを立ってハランへ向かった。とある場所に来たとき、日が沈んだので、そこで一夜を過ごすことにした。ヤコブはその場所にあった石を一つ取って枕にして、その場所に横たわった。すると、彼は夢を見た。先端が天まで達する階段が地に向かって伸びており、しかも、神の御使いたちがそれを上ったり下ったりしていた。」(創世記28章10-12節)

 そうか、新共同訳では「梯子」ではなく「階段」だった。英語でも Jacob`s ladder というぐらいで、原語が「梯子」のような「階段」のような未分化なものなんだろう。

 何しろヘブル語は一筋縄ではいかない言葉らしい。イメージが豊かで多義的であり、翻訳者泣かせらしいのである。たとえば、かつて「らい」と訳されたツァーラート צרעת という言葉は、長く誤解されたようなハンセン病に相当する疾患概念ではなく、その皮疹や類似の模様に対する形態イメージを表すものだった。カビなんぞが壁に作るもやもやした輪状斑も「ツァーラート」である。気に入りの皮のショルダーバッグを蒸し暑い部屋に一夏ほったらかし、秋になって引っ張り出したらその内面に豹紋状にカビがついて、こすったぐらいではびくともしない。それを見たとき、これが「ツァーラート」なのだと悟った。今は「(ハンセン病に限らぬ)重い皮膚病」と訳語が変更されているが、実はそれでも修正不足なのである。この件、翻訳の罪はきわめて重いが、日本語訳だけの罪ではない。

 ・・・などと能書きを垂れておいて、「梯子/階段」の原語を引いてみた。ヘブル語原文を眺めていても、"This is a pen." のどれが this でどこが pen だか分からないという、原書の、いやさ原初の混沌。推理と勘を思い切り働かせ、10分ほどで目ざす単語を identify したのは自分でも偉い。さて、どんな豊かなイメージが開けることだろう?

  סלם

発音は、「スーロム」とか、そんな感じかな。意味、意味は?

ただ一言

 ladder

ほんとに~~?


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