散日拾遺

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チュソクにハンブルク風グリルで笑う決意をすること

2017-10-04 23:32:58 | 日記

2017年10月4日(水)

 午前8時の新木場駅、親子連れのお父さんが礼儀正しい身振りで乗り込み、奥さんと息子さんを座らせて自分は立っている。どこから来たかと聞けば「Korea」との答え。え〜っと確か・・・

 「ハングゲソ、ワッスムニカ?」

 たちまち相好を崩した彼が早口に続ける言葉は、もちろんひとつも分からない。察して英語に戻り、「今、韓国では伝統的なお休みの季節なので」と家族を振り向く。「すると今は、お国の人たちが世界中に散らばってるわけね。時に何の休み?」「我々の言葉でチュソクと言って・・・」

 そうだった、聞いたことがある。추석 (秋夕)は中秋節とも呼ばれ、韓国人には最も大事な祭日。陰暦8月15日であるうえ、先祖の祭りや墓参にいそしむ人々で帰省ラッシュが起きることなどから、当方のお盆と同一視されがちだが実は別物だそうだ。お盆は陰暦7月15日で仏教の盂蘭盆会が起源、秋夕は8月15日で朝鮮固有の祖霊崇拝に由来する。強いて言えば中華文化圏の仲秋節、日本の行事で系統的に近いのは中秋の名月と、後で調べた Wiki のコピペ。

 韓国人は先祖の祭りを大事にするのに「日本なんかに来てていいの?」と聞くより早く、電車は既に舞浜着。

 「アンニョンイカセヨ」「ありがとございます」

 男の子がぴょこりと頭を下げて降りていった。

 会議続きの一日の後、午後6時の品川駅前。グリルの前で相手を待っていると、年配の白人夫婦が店内を覗きながら話しかけてきた。「この店は美味しい?食べたことある?」「ないけど、評判が良いのでこれからここで食べる。どこから来たの?」「オーストラリア、我々二人の一方は日本食が希望で、もう一方は違うのね、この店は両方食べられるかな?」「う〜ん、基本ジャーマンみたいだから、日本食は難しいかも」・・・

 楽しそうにさえずりながら歩き去るのと入れ替わりに、名古屋の旧友が現れる。場所は彼女の指定である。ハンブルク風というんだろうか、ごっつく美味しいけれど、トーニ・ブッデンブロークには思い出が悪そうなどと考えていると・・・

 「元気?元気よね?私ちょっと疲れて元気ないの、元気なくなるときある?そういう時どうするの?いい方法ある?」

 「笑う」

 そう、僕でも元気がしぼむことはあり、それで今日の今日から「笑う」ことにしてみたのだ。そのほかには四股を踏むこと、文章を書くこと、でも「笑う」が一番と信じてみることに、この瞬間決めた。「笑う laugh」か「笑む smile」か、ウィットかユーモアか、後でゆるゆる考えよう。何でもいいから笑って書いて四股を踏む。

 「わかった、そうだよね、笑うのがいいね。明日そう勧めてあげる」

 「?」

 「しょげてる子がいてさ、何か言ってあげたいのよね」

 きっかり2時間生き生きと話し、颯爽と身を翻して京急線改札へ消えていった。元気娘は家族の反対を押し切り、中型バイクの免許取得に挑戦中だそうな。

 23時の東京目黒、中天高く月が昇った。月齢13.9、満月のわずかに手前である。

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