自己満足的電脳空間

完全自己満足主義。テーマはない。自分の趣味・関心事を偏った嗜好と思考でダラダラと書き綴る自分のための忘備録。

NPB「リクエスト」制度とMLB「チャレンジ」制度及び去年までのリプレー検証の相違点

2018-04-04 00:05:00 | スポーツ観戦記
審判も人間である以上、誤審が発生してしまうのは仕方ない。納得いかないようなジャッジも多々あったが、それも野球の一部であった。

1990年4月7日 開幕戦巨人対ヤクルト東京ドーム 
ヤクルト2点リードの8回裏巨人の攻撃ツーアウトランナー1塁で打席には篠塚利夫。投手は内藤尚行。内藤投手の投じた球に篠塚選手が反応し打球はライトポール際に。明らかなファールだったが、ホームランの判定になってしまった…

【WBC2006】ボブ・デービッドソン衝撃の誤審(R2-日本×アメリカ)

2006年3月12日、第1回WBC2次ラウンド1組の初戦、日本代表対米国代表(エンゼルスタジアム)。日本は3-3で迎えた8回1死満塁から岩村明憲が左翼へフライを打ち上げ、3塁走者の西岡剛(現阪神)がタッチアップからホームを駆け抜けた。米国守備陣は西岡の離塁が早いとアピールしたが、2塁塁審が両手を広げて「セーフ」をコール。勝ち越し点が加点されはずだったが、米国代表バック・マルティネス監督の抗議を受けた球審のボブ・デービッドソンの信じられない判定変更でアウトに…。


もともとデービッドソン氏は誤審の多い問題審判として有名だった。1992年のワールドシリーズでは同シリーズ2例目のトリプルプレーが成立するはずだったが、塁審を務めていたデービッドソン氏がプレーを見逃し、ダブルプレーにしてしまった。1998年のレギュラーシーズンではサミー・ソーサと本塁打王を争っていたマーク・マグワイアが放った外野フェンスを越える打球を二塁打と判定し、「史上最低の審判」と酷評された。その他、「やたらとボークを取りたがる」「感情的な判定がある」「ストライクゾーンが安定しない」といった批判の絶えない審判だった。2006年WBCでは続くメキシコ対アメリカでも「ホームランを二塁打扱い」するなど、疑惑の判定を見せたが…故人のこれまでの功績に敬意を表し、これ以上の言及は避けたい。


従来は「審判のジャッジは絶対」というのが野球というスポーツの大前提だったが、設備の進化などにより容易にリプレーを見ることが可能になり、MLBはルールを柔軟に変化させ審判の判定をリプレー検証で確認をしてもらうことができる制度「チャレンジ」が2014年から採用された。

チャレンジ用のスタジオをニューヨークに建設し、30球場それぞれに7~12台設置されたカメラの映像を一括管理。1日8人の分析担当審判員が各球場の審判員と連絡を取り合い判定を行う。その費用は約30億円!監督には試合開始から7回までに1度、8回から試合終了までに2度、判定に異議を申し立てビデオ判定を要求できる権利が与えられる(異議申し立てが認められた場合は最高2回までを上限として、再びチャレンジ権利を得ることができる)。ボール、ストライクの判定は対象にならない。チャレンジの要請はタイムをかけてから30秒以内に行わなければならない。また、チャレンジを実行してから2分以内に判定が決まらなかった場合は判定は変わらずそのままとなる。

【MLB】 MIAのチャレンジが成功 ターンオーバー (マーリンズ・パーク) 

該当のプレーからタイムをかけて30秒以内で監督がチャレンジを行い、審判団にアウトかセーフかなどの確認を求めることが可能。


NPBではMLBのように30数億円をかけてリプレー検証用に特別のカメラを設置することはせず、名称もチャレンジという審判に訂正を求めるような表現は避けた。審判とチームが協力し合って正しい判定を出せるように依頼するということで「リクエスト」という呼称が採用。全ての塁上でのアウト・セーフの判定、本塁打か否かの判定が対象。コリジョンルールや申告敬遠に引き続きMLBが新規導入したルールを追随するような形で2018年シーズンから導入開始。

NPBの「リクエスト」でのリプレー検証にはテレビ局の中継映像を利用。よって我々が見る映像と同じものになる。各球場に映像機器を設置して中継映像を録画し、「リクエスト」の際は審判団がその場で録画映像をチェックして判定し、確証のある映像がない場合は、審判団の判断となる。

【リクエスト行使が出来ないプレー】 ※これはほぼMLBのチャレンジ制度と同様
・投球判定(ストライク・ボール)
・ハーフスイング
・自打球
・走塁妨害
・守備妨害
・インフィールドフライ
・審判員(塁審)より前方の打球
・ボーク

※NPBのリクエスト制度のルール
・1試合につき2回のリクエスト権利を得られる。
・延長戦の場合は新たに1回のリクエスト権利が得られる。
・判定が覆った場合、回数は減らない。
・5分以内に結論を出す。判定が決まらなかった場合は判定は変わらずそのままとなる。
・検証中は球場の大型ビジョンで同じリプレー映像を流すことができる。

※MLBのチャレンジ制度のルール
・試合開始から7回までに1度
・8回から試合終了までに2度
・チャレンジ成功の場合は最高2回を上限とし、再び権利が得られる。
・チャレンジの要請はタイムをかけてから30秒以内に行わなければならない。
・チャレンジを実行してから2分以内に判定が決まらなかった場合は判定は変わらずそのままとなる。
・検証中は球場の大型ビジョンで同じリプレー映像を流すことができる。

将来的には統一すべきであろうが…ここらへんは名称も含め若干NPBとMLBでルールの違いがある。

去年もリプレー検証はあったが、これは審判団が判断に迷った時に審判団の判断でビデオ検証を行っていたものであった。しかし、今年から始まったリクエストは監督が審判にリクエストをしてリプレー検証がされる制度であることが異なる。

去年までは監督が審判に異論を唱えても取り合ってもらえない場合があったが、このリクエストの導入で2回まではリプレー検証を要求できるのが大きな相違点と言えよう。



抗議時間短縮を目指す側面もあり、MLBで取り入れたリプレー検証。MLBでは、映像を見たコーチやスタッフの進言を受けてから監督が「チャレンジ」を申し入れるケースもあるが、「リクエスト」制度では「速やかに球審に(リクエストの)サインを伝達する」としており、映像を確認してから行使したことが発覚した場合、監督は退場処分となるなど、時間短縮への配慮もある。

審判の方からすると、自らの判断が誤っていたかどうかが問われることになるのでプレッシャーがかかると思うが、今までは明らかな誤審でも一度判定されたらほぼ撤回がなかったことを考えれば、この検証制度は肯定的に受け止められる。しかし、試合が中断されることで野球では大切な「間」が途絶えたり、「流れ」が変わってしまうことも否めない。今後はそれに対する慣れも必要になってくると思う。


その「リクエスト」制度により、流れがガラッと変わった試合が早くも開幕3戦目からあった。

4月1日(日)巨人○3-2●阪神 3回戦
2回表阪神はツーアウトから8番・梅野にソロホームランで先制、4回表にはこの回先頭の4番・ロサリオのソロホームラン。序盤は2点リードの阪神ペース。続く5番・福留を歩かせて、さらにノーアウト一塁で阪神の押せ押せムード。ここで一気に阪神ペースで試合が運びそうな雰囲気の中、野上が踏ん張って6番・大山をショートゴロ。6-4-3のダブルプレー成立か?と思ったら、一塁はセーフ!まだ阪神の勢いは止まらない!と思いきや、ここで巨人・高橋監督はリクエストを要求。結果、判定は覆りダブルプレー成立。阪神の流れは途絶え、その後、流れをガラッと変えたターニングポイントとなるプレーだった。(よくよく考えると今まで、これがアウトになっていたんだよなぁ…)

その後、巨人は2点ビハインドの4回裏、岡本の2試合連続となる3ランで逆転に成功する。投げては、先発・野上が6回途中2失点。その後は澤村、上原、カミネロとつないで、野上は移籍後初勝利をマークした。敗れた阪神は打線が振るわず、好投した先発・秋山を援護できなかった。

この「リクエスト」制度、ベンチがどこで申請するのか?失敗すれば1試合2回まで認められるリクエストを無駄にしてしまうし、無用に相手へ良い流れを引き渡すかも知れない。この辺もベンチの技量が問われる形になるであろう。

但し、この「リクエスト」制度導入により審判の判定への敬意が欠如するようなことになってはいけない。「ジャッジは絶対」という考え方はもう一世代前の概念になりつつあるかもしれないが、審判の方々がいて競技が成り立っているということは今も昔も変わらない。今まで以上に審判の判定を軽んじることないようにし、リスペクトする姿勢を見せていく必要もある。