自己満足的電脳空間

完全自己満足主義。テーマはない。自分の趣味・関心事を偏った嗜好と思考でダラダラと書き綴る自分のための忘備録。

MLB全30球団の本拠地に防護ネット設置

2018-04-03 00:05:00 | ユニフォーム・球場考察
バックネットのみの設置だったネットを両ベンチの端まで増設

ヤンキー・スタジアム。NPBの球場と違いバックネット以外の防護ネットは内野に設けられていない

NPBの球場とMLBの球場の違いとして、球場の形状(NPBはシンメトリー、MLBはアシンメトリーが多い)の他に「防護ネットがカバーしている範囲」も目立つ相違点であろう。

フィラデルフィア・フィリーズの本拠地「シチズンズ・バンク・パーク」 内野席に前面に防護ネットがないのがよく分かる

MLBの影響を受け、以前と比べれば防護ネットの範囲が狭くなってきたNPBの球場は増えてきた(例:2006年、札幌ドームは内野席の防護ネットを撤去)が、まだまだネットで視界を遮られる座席も多くMLBの臨場感にはまだ及ばない。(但し明治神宮野球場以外での球場では臨場観向上のためフィールドシートが設置されている)

しかし、臨場感を優先するあまり、防護ネットの範囲を狭くすることによってファウルボールなどによる観客のケガが発生する危険性もある。近年では訴訟に発展することもあり、観客の安全面を考え、防護ネットを狭くすることに反対といった声があった。(NPBでも2010年、札幌ドームの内野席で観戦していた女性にファウルボールが直撃、失明してしまい、球団に賠償命令が命じられた)

こういった声はMLBでもあがってきていた。2015年のウインターミーティングにて、マンフレッドコミッショナーは30球団に対し「2016年シーズンから防護ネットの増設を推奨する」とコメント。具体的には、これまで本塁後方のバックネットのみの設置が一般的だった防護ネットを、一塁と三塁両ベンチの端まで拡張するといった内容だ。あわせて、チケット購入時やスタジアム入場時にファウルボールなどについての注意を十分に行うことも推奨した。義務付けではなく「推奨」という表現だったため、ARZのチェイス・フィールドとTBのトロピカーナ・フィールド等はそれに応じなかった。


とはいえ、近年観客のケガが増えたことは大きく問題視されるようになった。では、何故、近年急に観客のケガが増えてしまったのだろうか?要因は大きく分けてふたつあると考えられる。

①まずは、折れやすいアッシュ素材のバットを使う選手が増え、ファウルボールだけではなく折れたバットがスタンドに飛び込む回数が増えたこと。

②そしてもうひとつは、“スマホ”である。MLBで防護ネットの範囲が狭い理由として、「日本は弁当を食べることもあるから両手がふさがり、ファウルボールを避けれきれないかもしれない。でも、アメリカ人は球場でホットドッグくらいしか食べないから、片手は空いている場面が多い」というものがある。ところが、最近ではスマートフォンで試合の様子を撮影することに夢中になり、ファウルボールなどへの対応が遅れることが増えたという。“スマホ”の普及によって、観客が危険にさらされる機会も、対応が遅れるケースも増えたというわけだ。


実は以前から防護ネットの拡張は課題としてあげられてきたが、MLB機構は拡張に慎重な態度をとってきた。というのも、ほとんどのオーナーが拡張に反対していたからである。球団にとって大口顧客であるシーズンシート購入者の多くが防護ネットの増設に反対していたことに加え、観戦時のケガに関しては機構や球団の免責が明記されているため、これまでは責任問題に発展することはほとんどなかったのだ。

しかし、2015年の7月にオークランド・アスレチックスのシーズンシート購入者が防護ネットの増設を求めて訴訟を起こし、観客のケガも急増していることでMLB機構も重い腰をあげた。そして、2017年のMLBでは観客に打球が直撃する事故が相次ぎ、ヤンキー・スタジアムだけでも3人が打球で負傷していた。特に、9月20日のMIN@NYYにて2歳の少女にトッド・フレイジャー内野手が放った約170キロのファウルボールが直撃し、命に別状はなかったものの顔面骨折の大怪我を負った事故は客席・選手のどちらにも大きな衝撃を与え、以降は選手側からも安全対策を求める声が多くなっていた。



球団側は前述したとおり今まで客席からの視界が悪くなることから設置に難色を示していたが、昨季は事故が相次いだことから安全性を高める方向にシフトした。なお、3件の事故が起こったヤンキー・スタジアムでは機構で推奨された内野席だけではなく、外野席にもネットを延長して安全対策を行う。

ネットの拡大で見づらくなるのではないかとの懸念もあったが、新たに拡張する部分には視認性が高い新素材のネットが使用され、懸念は解消されているという。一塁と三塁付近までネットを拡大することを決定したMIAのマーリンズ・パークは「最新式の結び目がないファイバーを採用した。優れた安全性を持ちながらも、フィールドに溶け込むようなデザインになっている。バックネットよりも30%細く、視認性が高い」と公表している。

※但し、現段階において全球場で導入されているかは不明。少なくとも3/29からオープニングゲームNYY@TORが開催されたスカイドーム(ロジャーズセンター)では内野席にネットが設置されてるようには見えなかった。

2018/3/31 NYY@TOR スカイドーム(ロジャーズセンター)

コメリカ・パークでは内野の防護ネット設置は確認できたが、テキトーに一部設置したような感じで中途半端

2018/4/1 PIT@DET コメリカ・パーク

ユニフォームの着こなし、ビデオ判定、コリジョンルール、チャレンジ制度(NPBではリクエスト制度)等々、いいか悪いかは別として多くのことをMLBから取り入れていたNPBだったが、今回は逆にMLBの球場が安全を配慮したNPBの球場のような仕様になるのは興味深い。しかし、推奨されたから取ってつけたように設置しているだけで、NPBのようにしっかりと設置されていないないかもしれない。

内野席に防護ネットがびっしり設置されている明治神宮球場。

視界が悪いのであまり好きな球場ではなかったが…安全性という観点から見るとやむを得ないか。

2016年に新設された「HAWKSベースボールパーク筑後」には当然のように内野に防護ネットが設置されている。

10年ぐらい前だったら視界が悪くなるとかクレームが出そうだったが、臨場感よりも安全性を重視する考え方が重視された現在では標準的な仕様と言えよう。

逆に、広島市民球場(マツダスタジアム)は(防護ネット増設前の)MLBの球場のような臨場感が体感できることがウリだったために内野に防護ネットが設置されていない。今後もこのままなのだろうか?それとも…?


熊谷さくら運動公園野球場もバックネットのみで臨場感ある球場だったが、今後はどうなるのだろう?


安全をとるか、臨場感をとるか…。難しい選択ではあるが、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッド氏曰く「しっかりと防球ネットで安全に配慮した席を増やし、球場に来る野球ファンに座席の選択肢を広げることはとても大切だ。そして、メジャーリーグの球団がネットの範囲を広げ、安全が保障された座席が増やす方向であることは実に喜ばしい」というコンセプトは今後日米共通になっていくのであろう。

※他にもユニフォームのこと、球場のこと、ゴチャゴチャ言ってます