歴史的な一般論として、アメリカを支配した白人はマイノリティをコントロールし、社会の底辺に置き、その外観とキャラクターをステレオタイプ化し、笑い者にした。時には「勇猛果敢」など称賛もあったが、ほとんどの場合、インディアン(ネイティブ・アメリカン)をインディアンであるというだけの理由で見下し、黒人(アフリカン・アメリカン)を黒人であるというだけの理由で見下した。
そこで問題になってきているのが、クリーブランド・インディアンスのニックネーム『インディアンス』とキャラクター『ワフー酋長』の変更問題。毎年、開幕戦になるとインディアン(ネイティブ・アメリカン)のグループが、本拠地プログレッシブ・フィールドの正面ゲート前に集まってチーム名の変更やマスコットの『ワフー酋長』を商標から外すデモを行うのが常となっている。
アメリカ先住民に対し「インディアン」という呼称が差別的かは意見が分かれるところがあるが、現在の風潮としては「ネイティブ・アメリカン」に置き換えられ「インディアン」は差別的なニュアンスを含むと考えられる傾向である。また『ワフー酋長』のイラストは「真っ赤な肌」「鉤鼻」「剥き出した大きな歯」とインディアン(ネイティブ・アメリカン)のステレオタイプをとことん誇張したものと認識されているからである。
ワフー酋長(Chief Wahoo)
黒人を「真っ黒な肌」「真っ白な白目」「真っ赤で分厚い唇」に描くのと同じだという意見もある。
アメリカでの『チビクロサンボ』絶版も同じくステレオタイプに由来する。『チビクロサンボ』が物語として優れているのは言うまでもないが、黒人のチビクロサンボは「トラに何度も何度も騙されて身ぐるみ剥がされるほど間抜け」なキャラクターとして描かれている。
チビクロサンボが白人であれば問題は起こらなっただろう。白人は白人であるというだけの理由で貶められた経験を持たないゆえに、仮に間抜けなキャラクターや醜いキャラクターとして描かれても笑って見過ごせる。しかし間抜けで醜いとしか描写されてこなかった、そして今もそう描写されるマイノリティはそうしたステレオタイプを払拭していかねばならない。
クリーブランド・インディアンズの『ワフー酋長』については過去に何度も抗議運動や訴訟があり、現在、チームは『ワフー酋長』を全面には押し出さないようにしているが、今もユニフォームやグッズに使われている。チームは「“インディアンス”の名称と“ワフー酋長”はチームとその歴史を代表するものなので、変更はしない。ただし、今後もブロック体の“C(クリーブランド)"を促進していく」と声明を発表している。
実際、『ワフー酋長』の存続を求める意見も多数ある。
「スポーツ界で最も素晴らしいロゴ」と書かれたボード
それでも、チームの公式声明の通り『ワフー酋長』が描かれたキャップの使用頻度は少なくなってきている。
#31 ダニー・サラザー
●グレーのビジター用ユニフォームには「C」キャップの組み合わせが定着してきた。
#43 ジョシュ・トムリン
●一方、ホームでは従前通り『ワフー酋長』キャップは使用されている。
#31 ダニー・サラザー
●但し、ホームでもオルタネイトユニフォーム着用時は赤の「C」キャップが使用されている時もある。
#22 ジェイソン・キプニス
●ホーム用:ヘルメットは『ワフー酋長』を使用せず、「C」ロゴを採用
#12 フランシスコ・リンドーア
#43 ジョシュ・トムリン
●ビジターでオルタネイトユニフォーム着用時はビジター用『ワフー酋長』キャップが使用されている(ブリム、クラウン共にネイビー)
右:#41 カルロス・サンタナ/左:#10 エドウィン・エンカーナシオン
●ビジター用のヘルメットはキャップ同様「C」ロゴを採用(ヘルメットはホーム・ビジター共に同デザイン)
批判を覚悟で言うならば、単純にデザインとして評価すれば『ワフー酋長』は素晴らしい出来栄えのロゴであると私は思っている。故にMLBに興味を持ち始めた頃から慣れ親しんだ『ワフー酋長』キャップの露出が徐々に少なくなってきていることには寂しさを感じる。
でも、極端な話だけど、異民族が創設したのに「イエロージャップス」なんてふざけたニックネームのチームができ、まっ黄色い肌につり上がった細目で眼鏡をかけて出っ歯なキャラクターを採用したら、オレは不快に感じるだろうな。そんな感覚なんだろうな。
アメリカインディアン国民会議によるクリーブランド・インディアンズのキャラクター抗議広告。架空の「ニューヨーク・ユダヤ人」「サンフランシスコ中国人」はダメだと誰でも思うが、「クリーブランド・インディアンズ」が良しとされるのはなぜかを問うている。
歴史と伝統・愛着を理由に守ろうとする人々、侮蔑的な意図を感じ撤廃を求める人々、相反する2つの主張はどこに着地点を見いだせるのだろうか?
※他にも私見ですがユニフォームに関する意見を述べています。
そこで問題になってきているのが、クリーブランド・インディアンスのニックネーム『インディアンス』とキャラクター『ワフー酋長』の変更問題。毎年、開幕戦になるとインディアン(ネイティブ・アメリカン)のグループが、本拠地プログレッシブ・フィールドの正面ゲート前に集まってチーム名の変更やマスコットの『ワフー酋長』を商標から外すデモを行うのが常となっている。
アメリカ先住民に対し「インディアン」という呼称が差別的かは意見が分かれるところがあるが、現在の風潮としては「ネイティブ・アメリカン」に置き換えられ「インディアン」は差別的なニュアンスを含むと考えられる傾向である。また『ワフー酋長』のイラストは「真っ赤な肌」「鉤鼻」「剥き出した大きな歯」とインディアン(ネイティブ・アメリカン)のステレオタイプをとことん誇張したものと認識されているからである。
ワフー酋長(Chief Wahoo)
黒人を「真っ黒な肌」「真っ白な白目」「真っ赤で分厚い唇」に描くのと同じだという意見もある。
アメリカでの『チビクロサンボ』絶版も同じくステレオタイプに由来する。『チビクロサンボ』が物語として優れているのは言うまでもないが、黒人のチビクロサンボは「トラに何度も何度も騙されて身ぐるみ剥がされるほど間抜け」なキャラクターとして描かれている。
チビクロサンボが白人であれば問題は起こらなっただろう。白人は白人であるというだけの理由で貶められた経験を持たないゆえに、仮に間抜けなキャラクターや醜いキャラクターとして描かれても笑って見過ごせる。しかし間抜けで醜いとしか描写されてこなかった、そして今もそう描写されるマイノリティはそうしたステレオタイプを払拭していかねばならない。
クリーブランド・インディアンズの『ワフー酋長』については過去に何度も抗議運動や訴訟があり、現在、チームは『ワフー酋長』を全面には押し出さないようにしているが、今もユニフォームやグッズに使われている。チームは「“インディアンス”の名称と“ワフー酋長”はチームとその歴史を代表するものなので、変更はしない。ただし、今後もブロック体の“C(クリーブランド)"を促進していく」と声明を発表している。
実際、『ワフー酋長』の存続を求める意見も多数ある。
「スポーツ界で最も素晴らしいロゴ」と書かれたボード
それでも、チームの公式声明の通り『ワフー酋長』が描かれたキャップの使用頻度は少なくなってきている。
#31 ダニー・サラザー
●グレーのビジター用ユニフォームには「C」キャップの組み合わせが定着してきた。
#43 ジョシュ・トムリン
●一方、ホームでは従前通り『ワフー酋長』キャップは使用されている。
#31 ダニー・サラザー
●但し、ホームでもオルタネイトユニフォーム着用時は赤の「C」キャップが使用されている時もある。
#22 ジェイソン・キプニス
●ホーム用:ヘルメットは『ワフー酋長』を使用せず、「C」ロゴを採用
#12 フランシスコ・リンドーア
#43 ジョシュ・トムリン
●ビジターでオルタネイトユニフォーム着用時はビジター用『ワフー酋長』キャップが使用されている(ブリム、クラウン共にネイビー)
右:#41 カルロス・サンタナ/左:#10 エドウィン・エンカーナシオン
●ビジター用のヘルメットはキャップ同様「C」ロゴを採用(ヘルメットはホーム・ビジター共に同デザイン)
批判を覚悟で言うならば、単純にデザインとして評価すれば『ワフー酋長』は素晴らしい出来栄えのロゴであると私は思っている。故にMLBに興味を持ち始めた頃から慣れ親しんだ『ワフー酋長』キャップの露出が徐々に少なくなってきていることには寂しさを感じる。
でも、極端な話だけど、異民族が創設したのに「イエロージャップス」なんてふざけたニックネームのチームができ、まっ黄色い肌につり上がった細目で眼鏡をかけて出っ歯なキャラクターを採用したら、オレは不快に感じるだろうな。そんな感覚なんだろうな。
アメリカインディアン国民会議によるクリーブランド・インディアンズのキャラクター抗議広告。架空の「ニューヨーク・ユダヤ人」「サンフランシスコ中国人」はダメだと誰でも思うが、「クリーブランド・インディアンズ」が良しとされるのはなぜかを問うている。
歴史と伝統・愛着を理由に守ろうとする人々、侮蔑的な意図を感じ撤廃を求める人々、相反する2つの主張はどこに着地点を見いだせるのだろうか?
※他にも私見ですがユニフォームに関する意見を述べています。