市民意見広告運動事務局だより

9条の精神に立ちかえり、核のない社会を実現しよう!
5月3日の新聞に意見広告を載せよう! 

今日の朝日新聞より  赤坂真理さんの寄稿

2013年08月13日 18時32分27秒 | 事務局より
明治を、
取り戻すのか


今の憲法改革論はいかにも唐突だが、改憲派の主な論拠「アメリカによる押し付け憲法だから」は、以前からある。その同じ陣営が政策面では対米追従だったことはさておくとしても、そもそも、「憲法」という概念からして外からのものではないだろうか?

日本の歴史の悲しさの一つは、何かを内側から本当に欲する前に、外から受け入れざるを得ない状況になることだ。幕末に開国を強いられ明治に突貫工事で近代国家の体裁を整えたとき、政府は戦前の大日本帝国憲法をつくった。列強にあるから「Constitution」を輸入し、そこにさらに「憲法」と漢字を当てた。私も含めわかった気になっているが、本当はどれほどの日本人が「憲」の意味をきちんと言えるだろう?

私は十代の一時期をアメリカで過ごした。「君の名前をチャイニーズ・キャラクター(漢字)でどう書くの?」と同年代の少年に聞かれ、死ぬほどびっくりしたことがある。「漢字」は英語では「中国の文字」とずばり言う。言われてみればそうなのに、その時までわからなかった。わかるような教育も受けなかった。

日本の多くのことが、こういうふうである。せめて自国の歴史や言語の来歴は教えてほしい。それを教育というのではないだろうか?自分が現在だけにぽつんと置かれたようなよるべなさは、自尊心を蝕(むしば)む。

日本国憲法を読むなら大日本帝国憲法も読むのがいい。自民党の改正案も。

また外国の憲法にも目を通さなければ「憲法」の概念自体わからない。フランス革命の過程で王権に対抗するものだったから、今も国家権力抑止のためにある、とか。日本と同じ敗戦国で、対照的な戦後を歩んだドイツの憲法も興味深い。インターネットのある今日、大した労力ではない。

すべての議論は、こういう複数の憲法に触れることが学校教育でも行われてからだと思う。そして憲法に関する国民投票があるとき、小学校高学年くらいから子供にも投票権があるべきだ。変化の影響下を最も身をもって生きることになるのは、大人になる頃の彼らだから。

日本国憲法は、対極と思われる大日本帝国憲法と実は構成が似ている。自民党改正案にいたっては文言のトーンさえ大日本帝国憲法に似ている。国民が国家権力に対して抑止力を持つ憲法本来のあり方よりも、国家への「義務を負う」の文言が目立つところが。

「日本を、取り戻す。」という自民党のコピーがある。どんな日本を、かと思っていた。明治を、だとある時気づいた。二つの戦争に勝った「強い明治」。しかし明治とは、それまでの国も生活様式も、壊してつくったものではないのか。私たちは今でもそのひずみの只中にあると思うのだが。


(朝日新聞2013.8.13)

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