【ぐるりのこと。】
久々、良い映画を見たなという思いで映画館をあとにしました。
『いやー良かった。本当に良かった』
一緒に見に行ったKちゃんとふたりでこの言葉の繰り返し。
ふたりで心底良かったと言える映画だったのでオススメ度が高いです。
物語は1993年から始まる。
靴の修理屋でバイトをしながらお客を口説いてしまうぐらい女好きなカナオ(リリー・フランキー)と、小さな出版社に勤める几帳面でちょっと気が強い翔子(木村多江)。
このカップルはもう長い付き合い。
子どもを授かったことをきっかけにふたりは夫婦に。
誕生を待ちわびるとともにその幸せを噛みしめていた。
この頃からカナオは法廷画家の仕事を始めることになった。
しかし出産後ふたりは子どもを亡くしてしまい、
その悲しみから翔子は心を病んでしまう。
そんな翔子をカナオは静かに温かく支え続ける。
そして2003年。
2人の生活が再生していく10年間を描く一方で、
法廷画家という傍観的なカナオの目を通して、
その社会的背景にも静かに追っていく構成になっている。
カナオが法廷で目にするのは90年代から今世紀初頭にかけて起きた実際の事件とその犯罪者たち。
名前は変えてあるが宮崎勤や宅間守、オウム真理教などの裁判をカナオは目にしていく。
カナオと翔子の関係に希望を見出しながら、
社会の混沌とした面にも目を向けた作品。
大切な人とちゃんと向き合うことが幸せに繋がり、
人と繋がっていくことが希望を生んでいくんだなと感じました。
カナオと翔子はどこにでもいそうな夫婦。
着ているものも住んでるところもごく普通。
会話や食事、性生活など、ここまで本当の夫婦のように
描いた橋口亮輔監督と、それを演じたふたりには圧巻。
ひとつひとつのシーンが丁寧で血が通った感がありました。
倍賞美津子、柄本明、寺田農、寺島進、安藤玉恵、八嶋智人、
加瀬亮、新井浩文、片岡礼子などが脇を固めています。
映画館で見れなかった人は地上波を待たずにレンタルを。
放送禁止用語が出てくるのでテレビでは無理かな…って感じです。
そのあたりをカットしたら夫婦のリアリティ台無しだし。
ぐるりのこと。
映画館に入って140分後、静かな幸せで心がいっぱいになる作品です。
本当に自然なんだよね。ていねいで。
舞台挨拶で
「リリーさんは、役者じゃないし。
アドリブかと思うほど自然ですが、
あれは演技ではなくて素ですか?」
という質問に、監督がちょっとしゃくに
触った感じで答えたの。
「映画は、どんなにシリアスな
演技の時も、すぐ近くにカメラがあって。
後ろに数十人のスタッフがいる。
メイクだってバッチリしてる。
そんな状態で素でいられますか?
役者さんはその役に入り込んで
演じてるんですよ。」
でも、リリーがあそこまで演じ切ったのは、
全て委ねられる監督の力こそだと思ったよ。
公式サイトの木村多江のインタビュー読んで
確信した。
舞台挨拶行ってみたかったなー。
知ってるかもしれんけど、橋口監督は琴海高校だよ。
最初らへんのあの長回しとかすごかったよね。
あと泣きじゃくって鼻かむところとか。
パンフレットは読んだ?
会社の先輩が買ったので読ませてもらったんだけど、
そこに載ってるインタビューも良かったです。
あと、あの天井画は東新宿のお寺にあり、
あれを描いた人は32~33歳の女性でした。
彼女の旦那さんも映画に出ているらしいよ。
ラストシーンみたくあそこに寝転んで天井画を眺めてみたいな。