白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

本日の問題

2016年04月25日 23時59分59秒 | 問題集
皆様こんばんは。
本日は指導碁に出来た場面を問題にします。
指導碁と言っても、囲碁部の選手相手なので本気で勝ちに行っています
一般アマの皆さんの石を喜んで取りに行くようなことはありませんので、ご安心ください(笑)



5子局です。
黒の勝ちが確実と思われましたが、黒△が無用の頑張りでした。
仕掛けるチャンスですが、どうしますか?
最後まで読み切れたらプロ級です。
挑戦してみるも良し、鑑賞に専念するも良し、お好きな形でお楽しみください。
こちらで実際に石を並べることができます。




まずは白1の下がりが第一歩です。
上下の黒△2子を狙います。
黒は2とダメを詰めて受けるのが最強の応手ですが、白はどうしますか?




ここでも出ました!三本下がりです。
先日出題した問題にも出現しましたね。
手数を伸ばす手筋です。




それに対して黒1と取りに来るのは無理です。
白4の放り込みがあり、追い落としで黒が取られます。
三本下がりとセットになっている手筋です。




ということで黒1と逃げる1手ですが、白の手数が4手に延びたことがご確認頂けると思います。
これを生かして、次の一手は?




白1と黒2子を分断に行きます。
黒は2、4が最強の応手です。
以降は攻め合いの問題となります。




白1と緩んでしまうと、黒2で3手対4手になって攻め合い負けです。
白はダメを詰め続けなければいけません。




ということで白1ですが、黒は当然2と逃げます。
ここで白はどちらから追いかけますか?




こちらから追いかけるのは失敗です。
手数は長いですが、黒20となっては手数が延びてしまいました。




正解は白1の方でした。
一本道で黒となって、黒6となって、ここでまた分岐点です。
どちらから追いかけますか?




右から行くのは失敗です。
黒6となってはこれ以上追及できません。




という事でこちら側から追い込みます。
黒4まではやはり一本道、ここでどうしますか?




緩まず押さえが正解です。
白4までとなって、ゴールが近付いてきました。
次は黒AとB2つ考えられますが、それぞれ見てみましょう。




実戦は黒1のハネでしたが、こちらのコースは白としては比較的迷いが少ないですね。
白4は黒の粘りを消す好手です。
白10となった形は攻め合い白勝ちです。



黒1とハネられると選択に迷う所です。
ここでも白2が正解で、黒のダメ詰めに専念します。
白8や白14が好手で、攻め合い勝ちとなります。




という事で白1から始まって直線で41手の読みでした。
皆様、どこまで読めましたか?


よくプロは何手ぐらい読めますか、というご質問を受けますがこの問題が一つの答えになるでしょうか。
相手の手が予測できる限り何十手でも読めます。
実際には相手の応手がわからず、一手も読めないことはしばしばです(笑)

指導碁

2016年04月24日 23時56分28秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
本日は指導碁が題材です。
今回出てくる手筋はかなり難しく、そのまま真似するのは高段者でも難しいでしょう。
観賞して楽しんで頂ければ十分です。



2子局の黒番です。
右辺の黒3子をどう動きますか?




黒1と打つのは、空き三角なので打ちたくありません。
足が遅く、眼もできにくい形です。
五段以下の方ならこれで妥協するのも良いですが、プロに2子とか3子で打つ方はこういう手を打ってはいけません。
実際の進行がどうなるかと言えば、周囲の白が固まる一方で黒はまだまだ安定には程遠い姿のままになります。




黒1のツケ、強くなってくるとこういう手が自然に浮かぶようになります。
白2なら黒3となり、前図とは比べ物にならない良い姿です。
黒の進出のスピード、上方の白の形を比べてみてください。




しかし、白2の強手がありました。
黒5と取りに行くのは無理です。




前図の続きです。
ぐるぐる回しになり、黒が取られてしまいました。




結果黒は右辺で生きることになりましたが中央が真っ白、黒1の石も取り残されてしまいました。




ということで最初に戻りまして、残った黒1が正解となります。
当然白2と切ってきますが、ここで3子をどう動きますか。




黒1、3のツケ引きでは窮屈です。
右辺を後手で生きなければならず、白8に回られて中央が真っ白です。




黒1、3のツケ下がりに変えてみましたが、全図とあまり変わりません。
結局この後は後手で右辺を生きなければいけません。




黒3と当ててからの黒5の二段バネはどうでしょうか。
腕に自身がある方はこう打たれるかもしれませんが、白8までとなってみると困ります。
黒Aと切っても白Bで後が続きません。




正解は、黒1、3のツケバネでした。
前図のように黒Aの当てを打ってしまいたくなりますが、ここはBから当てる手もある所です。
2つの利きがある時はどちらも決めずに残しておくのが手筋です。




白1と当ててきたら、そこで黒2の当てを使います。
ポン抜き合うのは、中央の石を抜いている黒が有利です。




白1から1目取りに来るのはどうでしょうか。
今度は黒6の方から当てて取れます。




取りに行くのが無理なので白1と引いてくれば、黒も2、4と守っておきます。
黒はかなりスペースを広げることに成功しました。
既に黒が生きているのが、8図目、9図目との違いです。
白5にも黒6と逃げて堂々と戦うことができます。
上方の白が弱いので、戦い甲斐のある格好です。


手筋はパターンですから、知っておくと実戦で似た状況ができた時も応用できます。
今回の手筋も私の対局に現れていました。



右辺の3子が危険な状況です。
どうサバきますか?




黒1、3です。
少し周囲の形は違いますが、同じ手筋を使う所です。
黒5となりA方面の脱出とBの先手を見て、救出に成功しました。


よくプロが解説で「この手は筋が悪い」「筋はこう打つ所」などと言いますが、手筋をパターンとして把握している証ですね。
手筋を沢山知っていると、プロの打つ手を見て「あ、知ってる手筋だ!」などと感心することも増えてくるでしょう。
上達の動機付けになれば幸いです。

結婚式

2016年04月23日 23時22分39秒 | 日常


皆様こんばんは。
本日は大学囲碁部の先輩の結婚式に参列しました。




定番のケーキ入刀。
息がぴったり合っています。




スコップ?
いいえ、スプーンです。




結婚式に余興は欠かせませんね。
今回はピアノ演奏ということです。
キャストは・・・新郎!?


笑いあり涙ありの素晴らしい結婚式でした。
学生生活から離れて12年目になりますが、事あるごとに仲間と集まっています。
囲碁をやっていて良かったと思えるひとときでした。

最も危険な瞬間とは

2016年04月22日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
本日は指導碁を題材にします。
最近はやや高級な題材が多かったですが、今回はシンプルです。
しかし基本的な考え方は、どれだけ棋力が上がっても大事にしなければいけません。



6子局です。
白△と2間に打ってきましたが、黒はどうしますか?




実戦は勇猛果敢に黒1からばっさり切りにいきました。
一見すると白がばらばらのようにも見えます。




しかし、少し進んだんだ結果は・・・あれれ?
逆に黒が取られてしまいました。
白を取りに行く過程で、自分の石に蓋をしてしまったのです。




正解は慌てて取りに行かず、黒1としっかり自分の弱点を守っておきます。
白2とつながられてしまっても、黒3と大きく左右を分断しておきます。




弱い石を無理に取りに行かなくても、大きく睨んでいるだけで色々と良い事があります。
左側の白石を逃げ出せば、黒は相手をしているだけで自動的に左辺に地が増えていきます。




右側の白石を逃げ出せば、自動的に右辺や上辺に地が増えていきます。


石を取りに行っていたはずに逆に取られたという事は、皆さん経験されているかと思います。
これを不思議がる方が多いのですが、相手を殴りに行った時にガードが甘くなるのは当然のことなのです。
囲碁は相手のいるゲームですから、自分が攻めることばかり考えていては必ず相手に手痛い反撃を食らうことになります。
攻めるときはまず自分の隙を確認するようにすると、確実に勝率アップにつながりますよ!

本日の対局

2016年04月21日 19時55分26秒 | 対局
皆様こんばんは。
本日は対局でした。
私の黒番、白は大森泰志八段です。



白△と打たれた場面です。
黒、どういう作戦を立てますか?




1は堂々のトビです。
しかし白6までとなると、黒は窮屈な姿です。
右側で上下の白がつながってしまっているのもマイナス材料です。




黒1のコスミはどうでしょうか。
これに対しては白2がぴったりです。
白6までとなると、やはり前図と大差ありません。
黒は一方的に攻められてしまうでしょう。




盤面全体を見渡してみると、黒は3隅を確保して地が多い状況です。
その分白は辺や中央に石数が多く、あまり堂々と戦うのは考え物です。
少しでも早く逃げることを考えました。
実戦は黒1とケイマに打ちました。
2子との連絡は手薄になりますが、必ずしも助けることには拘りません。
いざとなったらいつでも捨てようという、所謂「軽い」打ち方です。
拘りを捨てているため、動き方に制約がありません。




白1なら黒2と逃げ、次にAとBを見合いにします。
黒Cの反撃も狙えそうです。
一歩早く逃げている効果です。




実戦は白1と薄みを狙ってきましたが、構わず黒4、6と軽快に動きました。
上下の白がつながっていないため、後に黒Aの分断なども狙えそうです。
悪くない展開かと思っていましたが、実はミスを犯していました。
それについては後述します。




ここで白1などと取りに来るのは大歓迎です。
処分して黒4に回り、左辺がぺちゃんこです。




実戦はこのように進みました。
早く切り上げて他に回りたいのですが、中央が心配です。




黒1あたりを急ぎたいのですが、白2が気になります。
仮に白10までとなると、中央の黒が攻められそうです。
実は黒△とノゾいて白△とつながせたのが大悪手でした。




もしノゾキを打っていなかったら、黒7の割り込みがあります。
黒13の切りが入り、黒15と動いて捕まらない形です。
黒Aのハネ出しもあり、厳しい狙いです。
こんな手があっては中央の黒を攻めるどころではなくなってくるでしょう。

前図黒△のようなノゾキは、一種のいたずら
です。
アマの皆様にはいつもいたずらをしてはいけないと指導していますが、私もまだまだです(笑)
いたずらが災いして苦戦しましたが、最後はなんとか半目勝ちでした。

来週は林海峰名誉天元との対局です。
日本棋院ネット対局「幽玄の間」にて中継予定です。
よろしければご覧ください。