白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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指導碁

2016年04月24日 23時56分28秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
本日は指導碁が題材です。
今回出てくる手筋はかなり難しく、そのまま真似するのは高段者でも難しいでしょう。
観賞して楽しんで頂ければ十分です。



2子局の黒番です。
右辺の黒3子をどう動きますか?




黒1と打つのは、空き三角なので打ちたくありません。
足が遅く、眼もできにくい形です。
五段以下の方ならこれで妥協するのも良いですが、プロに2子とか3子で打つ方はこういう手を打ってはいけません。
実際の進行がどうなるかと言えば、周囲の白が固まる一方で黒はまだまだ安定には程遠い姿のままになります。




黒1のツケ、強くなってくるとこういう手が自然に浮かぶようになります。
白2なら黒3となり、前図とは比べ物にならない良い姿です。
黒の進出のスピード、上方の白の形を比べてみてください。




しかし、白2の強手がありました。
黒5と取りに行くのは無理です。




前図の続きです。
ぐるぐる回しになり、黒が取られてしまいました。




結果黒は右辺で生きることになりましたが中央が真っ白、黒1の石も取り残されてしまいました。




ということで最初に戻りまして、残った黒1が正解となります。
当然白2と切ってきますが、ここで3子をどう動きますか。




黒1、3のツケ引きでは窮屈です。
右辺を後手で生きなければならず、白8に回られて中央が真っ白です。




黒1、3のツケ下がりに変えてみましたが、全図とあまり変わりません。
結局この後は後手で右辺を生きなければいけません。




黒3と当ててからの黒5の二段バネはどうでしょうか。
腕に自身がある方はこう打たれるかもしれませんが、白8までとなってみると困ります。
黒Aと切っても白Bで後が続きません。




正解は、黒1、3のツケバネでした。
前図のように黒Aの当てを打ってしまいたくなりますが、ここはBから当てる手もある所です。
2つの利きがある時はどちらも決めずに残しておくのが手筋です。




白1と当ててきたら、そこで黒2の当てを使います。
ポン抜き合うのは、中央の石を抜いている黒が有利です。




白1から1目取りに来るのはどうでしょうか。
今度は黒6の方から当てて取れます。




取りに行くのが無理なので白1と引いてくれば、黒も2、4と守っておきます。
黒はかなりスペースを広げることに成功しました。
既に黒が生きているのが、8図目、9図目との違いです。
白5にも黒6と逃げて堂々と戦うことができます。
上方の白が弱いので、戦い甲斐のある格好です。


手筋はパターンですから、知っておくと実戦で似た状況ができた時も応用できます。
今回の手筋も私の対局に現れていました。



右辺の3子が危険な状況です。
どうサバきますか?




黒1、3です。
少し周囲の形は違いますが、同じ手筋を使う所です。
黒5となりA方面の脱出とBの先手を見て、救出に成功しました。


よくプロが解説で「この手は筋が悪い」「筋はこう打つ所」などと言いますが、手筋をパターンとして把握している証ですね。
手筋を沢山知っていると、プロの打つ手を見て「あ、知ってる手筋だ!」などと感心することも増えてくるでしょう。
上達の動機付けになれば幸いです。