ブログ人気投票にクリックいただけると幸いです!
中学受験をする小学6年生の補習指導をしていた最近の出来事です。都内有名女子校の算数過去問の質問がありました。まず、その問題を載せます。
『ある仕事をするのに、A君は1日5時間ずつ働くと12日で仕上がり、B君は1日6時間ずつ働くと15日かかります。この仕事を2人で1日5時間ずつ働くと、□日と□時間□分で仕上がります。』
仕事に関する文章題には、仕事算・のべ算・ニュートン算などがあります。この問題は、基本的な仕事算です。
では、私がこの質問をした生徒に指導した内容を簡単に述べましょう。(分数の表記は、実際の指導とは異なります。)
「この問題のポイントは?」
「これは、仕事算です。」
「どのように考えるの。」
「まず、全体の仕事量を1と置く。それから、AとBの二人のそれそれの単位時間当たりの仕事量を求めます。」
「そうだね。A君は、1日5時間ずつ12日働いたので、5×12=60時間で1の仕事をしたことになり、1時間あたりの仕事量は、1÷60=1/60。
同様B君は、その仕事をやり終えるのに、6×15=90時間かかったのだから、単位時間当たりの仕事量は、1÷90=1/90となるよね。
すると2人でする1時間あたりの仕事量は、1/60+1/90=1/36となるから、1日で1/36×5=5/36の仕事量をすることができるね。
よって求める時間は、1÷5/36=7と1/5日となるので、半端な1/5日をまず時間の単位に変換する必要があるよね。
1日は24時間ではなく、5時間として計算するから、5×1/5=1時間。
すると、この問題の答えは7日と1時間となり、最後の分の単位は0分となるね。最後の単位の数値が0という問題は、ちょっと変な設問だね。
または、1÷1/36=36時間として、36÷5=7あまり1として、7日1時間と解いてもいいね。」
(途中の式や考えは、生徒に聞きながら指導)
このように、仕事算の基本的な解き方は、まず全体の仕事量を1と置きます。そしてそれぞれの単位時間当たりの仕事量を求め、それを使って問題を解いていきます。
あるいは、それぞれの仕事量の最小公倍数を、全体の仕事量とする方法もあります。この方法は、計算が楽ですが、出てくる数値の全体に対する関係性が希薄なので、私は全体の仕事量を1と置く解法が好きです。
さて、この問題は、例えば「7日と0時間15分」といった答えの設定はよくあることです。しかし、「7日と1時間0分」という答えの設定は極めて稀だなと私は思いました。
この説明をした後、しばらくしてこの生徒が再び私の所にやって来て、「先生、答えは分の単位まであります。」と言うではありませんか?
「その問題の解答を見せて!」
その過去問は、学校説明会の時に参加された方に渡す、学校が作成したH26年度の過去問題集でした。答えは、実際の解答用紙に模範解答として記載されたものでした。
その解き方は、私の解き方と「7と1/5日」という数値までは同じでした。しかし、その後の解法は、私が驚いてしまうものでした。
「1/5(日)=24/5=4と4/5(時間) 4/5時間=4×60/5=48(分) 答:7日と4時間48分 」
この入試問題を作り、模範解答を書いた教師は、1日=24時間として計算していますが、この問題は「1日あたり5時間の仕事」ということを全く忘却して解答を作ってしまった恥ずかしいミスでした。
この事例の問題点は、複数の教師による作成問題のチェック機能がなされていなかったこと。それから、その年の入試問題を出題してから、半年以上後の秋の受験生に対する説明会まで、この出題ミスに気づかず訂正することがなかったことの二点です。
最近は、殆どの学校で複数回の試験日を設定し、それぞれに異なる入試問題を作成するので、担当教師の負担は大きいと思われます。都立中高一貫校や自校作成の都立高校では、近年の出題ミスなどを勘案して、問題の共通化を図っているようです。
また都立入試において、採点ミス・集計ミスなどが頻発して大きな問題となりましたが、その結果マークシートによる機械化の一部導入なども、現実の解決法となりました。
秋の説明会のお土産として、過去問題集を作成する(多くの学校で同様な問題集を作成)時まで、出題ミスに気づいていないことを考えると、この学校では「今回の事後取り扱い」は全く行っていないものと思われます。
このミスが無ければ、合格していた受験生もいた可能性があります。入試の答案用紙を採点中にミスに気づけば、その問題を除外するなどして、問題を最小限に食い止めることもできたはず。それができなかったことを、この過去問のお土産は証明しています。
子どもたちの努力が正当に評価される入試問題作成に、学校も担当教師も気を緩めることなく取り組んでほしいものです。
さて、受験生の皆さん、都内中学入試は目前(2月1日より)です。入試問題を作成する教師でさえ、こうした勘違いをするのです。入試問題を前にして、集中力を高めケアレスミスをすることなく、今までの学習成果を発揮してください。
皆さんの努力が報われますように!
仕事算の指導法について興味ある方は、以下のブログもご覧下さい。
マッキーの算数指導法『特殊算』…『仕事算…その1・中学入試問題《青山学院中等部》』
マッキーの算数指導法『特殊算』…『仕事算…その2・中学入試問題《ラ・サール中学校》』
マッキーの算数指導法『特殊算』…『仕事算…その3・中学入試問題《鴎友学園女子中学校》』
マッキーの算数指導法『特殊算』…『仕事算…その4・中学入試問題《聖光学院中学校》』
延べ算の指導法に興味ある方は、以下のブログも参考にご覧ください。
マッキーの算数指導法『特殊算』…『のべ算…その1・中学入試問題《江戸川学園取手中学校》』
マッキーの算数指導法『特殊算』…『のべ算…その2・中学入試問題《星野学園中学校》』
マッキーの算数指導法『特殊算』…『のべ算…その3・中学入試問題《海城中学校》』
ニュートン算の指導法に興味ある方は、以下のブログも参考にご覧ください。
マッキーの算数指導法『特殊算』…『ニュートン算…その1・中学入試問題《桐朋中学校》』
マッキーの算数指導法『特殊算』…『ニュートン算…その2・中学入試問題《城北埼玉中学校》』
マッキーの算数指導法『特殊算』…『ニュートン算…その3・中学入試問題《渋谷教育学園渋谷中学校》』
マッキーの算数指導法『特殊算』…『ニュートン出題の《ニュートン算》を小学生が解く!』