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12月9日、恒例の美学社忘年会と12月例会が、京橋にあるK’sギャラリー(美楽舎事務局)で行われました。
美楽舎は、私がしばらく構想を練って発案し、有志を集め1年間の準備を経て1990年に発足した、我が国でも有数の美術愛好家・コレクターの会です。
とは言うものの、私自身は代表を降りて以来、年に2~3回例会に出席する程度で、残念ながらコレクターとしての活動も現在は休止状態です。
忘年会に先立ち行われた12月例会は、コレクターの小倉敬一氏をお招きして、「私のコレクション」と題して講演していただきました。
コレクターの集まりである美楽舎の会員の中には、小倉氏を知っている方もいて、全員が興味津々といった様子で聞き入っていました。
コレクションを始めるきっかけになった美術品との出会い、そしてコレクションのイロハを教わった画廊主や先輩コレクターとの語らい、そしてコレクションの方向性を決定づける作品との出会い、こうしたことは、多くのコレクターに共通した経験であろうと思います。
小倉氏は、「家に飾る絵は、心安らぐ世界がなければならない。」という考えを持って、作品を集めてきたそうです。
そうしたポリシーで収集した結果、長谷川潾二郎と清宮質文の作品群は、日本で有数の個人コレクションとして知られるようになりました。
また、小倉氏はかつてあった現代画廊主の洲之内 徹氏が著した『絵のなかの散歩』新潮社、『気まぐれ美術館』新潮社、『帰りたい風景 気まぐれ美術館』新潮社、『セザンヌの塗り残し 気まぐれ美術館』新潮社などを愛読し、コレクションの参考にしていると語っていました。
現代画廊主の洲之内 徹氏の評価は、賛否両論があり、その人物像も死して後も様々に語られています。
この洲之内 徹氏は、画廊主であるにもかかわらず、気に入った作品は売らずに私蔵し、氏の死後それらの作品は「洲之内コレクション」として、宮城県美術館に一括収蔵され一般に公開されています。
そのコレクションに含まれる作品は、「買えなければ盗んでも自分のものにしたくなるような絵」と表現するほど氏が惚れ込んだ美術品であることが、随筆「気まぐれ美術館」に書かれています。
ちょっと過激な表現ですが、そこまで対象の絵に惚れ込まない限り、納得のいくコレクションを形成することはできず、したがってこの心情は多くのコレクターに共通したものだと思います。
(無論、本当に美術品を盗もうと考えるコレクターは、稀でしょうが・・・)
(小倉氏のコレクション展の図録)
小倉氏は、銀座の画廊「ミウラ・アーツ」でコレクション展を数回開催し、多くの人に収集した作品を展示し公開していますが、そうした行為はコレクションの質が高いという前提は無論のこと、コレクターとしては大切な行為だと思います。
なぜなら、真のコレクターは権威や流行に左右されずに、自分の目(審美眼)を頼りにコレクションする人が多く、したがって形作られたコレクションを世に問うてみることが、自分の主張をより明確にする機会となるからです。
美楽舎でも、毎年1回会員の「マイコレクション展」を行い、また昨年からは「ACT ART COM」アートフェアに参加て、会員が収集した作品を展示し、各人の美に対するこだわりや主張を、美術を愛好する人たちに観て頂いています。
(図録の挨拶の言葉)
長谷川 潾二郎(はせがわ りんじろう)の猫の絵は、NHKの日曜美術館でも紹介され、多くの方にその名が知られるようになりました。
長谷川 潾二郎の代表作であるこの猫の絵も、「洲之内コレクション」として宮城県美術館に収蔵されています。
小倉氏のコレクションの中核をなす作品が、この長谷川 潾二郎の絵画であり、情熱を込めて集めた極めて寡作な作家の貴重な作品群は、後世に残すべきコレクションとなっています。
(長谷川 潾二郎 「アネモネ」)
(長谷川 潾二郎 「木の実」)
小倉氏の作品のもう一つの核をなすものが、版画家清宮質文(せいみや・なおぶみ 1917~1991)の作品です。
沈黙の版画家といわれた清宮質文の作品は、静寂と詩的な叙情性と、そして祈りが感じられます。
生前よりも、死後評価が高まった作家であり、そうした意味で長谷川 潾二郎と一脈通じる点があるようです。
(清宮質文「むかしのはなし」)
(清宮質文「夕」)
小倉氏は、かつて収集してきた作品の多くを売って、より質の高い作品収集の原資とするとともに、コレクションの量よりも質を重視する姿勢を貫いているようでした。
ここに取り上げた画像は、氏のコレクション展図録から載せたものですが、この他に野口謙蔵・南城一夫・菅野圭介・今西中通・吉岡憲などの作品が載っています。
大変興味深かった小倉氏の講演の後、恒例の忘年会をギャラリーを会場に行いました。
同じ趣味を持つ仲間ですから、その会話は尽きず、二次会を近くの中華料理屋に移し、アルコールに酔ったのか、美術を愛するが故の熱気なのか、熱い熱い会話で例年にない初冬の寒さを吹き飛ばす宴でした。
その後、多くの会員は、三次会へと足を運びましたが、私とS氏はここでみんなと別れ帰宅の途につきました。
あるときは握手するほど共鳴し、またある時は色をなして反論する、
それぞれの主張に対する共感と激論が、
ともすると独り善がりになりがちなコレクターたちにとって、
良い刺激になっていることは確かです。
<小倉敬一氏 略歴>
埼玉県羽生市 生まれ
埼玉県職員として勤務の傍らコレクション
ミウラ・アーツ(銀座)でO氏コレクション展を4回開催
NPO法人あーとわの会会員、梅野記念絵画館友の会会員
<主なコレクション>
物故作家:長谷川潾二郎、清宮質文、長谷川利行、野口謙蔵、南城一夫 等
若手作家:石居麻耶、柏田彩子、小高里枝子、関根直子 等
K’sギャラリー(美楽舎事務局)
東京都中央区京橋3-9-2プラザ京橋ビル3F
地下鉄の京橋駅、宝町駅から徒歩1、2分
参加の方 K’s Gallery 内 増田まで
Tel :03-5159-0809 Fax :03-5579-9004
メール:kgallery@eagle.ocn.ne.jp