「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの教育:話題の映画「万引き家族」を観て

2018年06月28日 | 教育

 第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、日本映画としては1997年の「うなぎ」以来21年ぶりとなる、最高賞のパルムドールを受賞した話題作「万引き家族」を、小学4年生の娘と観ました。この映画は、興行的にも成功を収めているようです。



 映画の完成度や密度は、前評判よりも低かったように思います。ただ、取り扱っている家族・親子関係・子供の葛藤と成長など、現代的な問題を取り扱っていることと、経済格差・子供の貧困など単に日本だけの問題ではなく、世界的な問題を取り扱っている点は、話題を喚起する映画でしょう。経済的に成功した日本においても、貧困とそれに伴う生活水準など、外国人の目から見ても新鮮で興味をそそる内容でした。



 ただ、そうした内容を映画の中で分かり易く昇華できたかと言えば、私には満足できるほど成功しているとは思えません。この映画の中で、皆でごった煮風の鍋料理を食べている場面がありました。そんなごった煮風の映画になっていて、主題がぼけてしまっているようにも感じました。映画が終わった後の、周囲の観客の感想も、そんな風に伝わってきました。けれども、おばあさん役の樹木希林亜紀役の松岡茉優息子祥太役の城桧吏妻・信代役の安藤サクラ日雇い労働者の父・治役のリリー・フランキー
どの演技がとても良かったと思います。ただ、子どもが観るには、問題ある部分もありますので注意が必要です。この映画は、疑似的な家族の崩壊の端緒を作った息子祥太が、成長していく物語でもあると思います。



 さて、若干この映画の否定的な感想を述べましたが、家族の在り方、子どもに対する虐待などが、最近の出来事で話題となりました。そうした出来事を踏まえて、多くの方がこの映画を契機に、考えることは意味ある事だと思います。

 是枝監督は「共同体文化が崩壊して家族が崩壊している。多様性を受け入れるほど成熟しておらず、ますます地域主義に傾倒していって、残ったのは国粋主義だけだった。日本が歴史を認めない根っこがここにある。アジア近隣諸国に申し訳ない気持ちだ。日本もドイツのように謝らなければならない。だが、同じ政権がずっと執権することによって私たちは多くの希望を失っている」と語り、日本社会の保守化や、それにともなって巻き起こった歴史修正主義の動きに対して警鐘を鳴らしました。



 そうした意味で、為政者である総理大臣の安倍晋三には、目障り・耳障りな映画に映ったことでしょう。この映画で取り上げられた様々な問題は、現在の政治と不可分なものと思われます。したがって、この映画は現在の政治批判の側面も否定できません。

 かつて日本人が持っていた美徳は、どこへ行ってしまったのでしょう。是枝監督が述べた共同体文化の崩壊・家族の崩壊」が急速に顕在化してきた日本社会は、はたして人々にとって住みよい世の中と言えるでしょうか。



 広義的には社会にとって、狭義的には家庭にとって、大切なこと・幸福なこととは何だろうか。そんなことを、私はこの映画を契機に考えました。この映画は、社会全体に波紋のように静かに確実に、そうした疑問を拡散させています。

(画像は、パンクレットを撮ったものです。)

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